不思議な水着

廣瀬純七

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男のスイムパンツ

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夏の陽射しが眩しい日、私は彼の横に座っていた。目の前に広がる海はどこまでも青く、波の音が心地よいリズムで私の心を揺さぶっていた。彼が手に持っていたのは、見たこともない形の水着。黒地に白いラインが入った、明らかに男性用のスイムパンツだった。

「これ、試してみないか?」彼が私に差し出す。

「え?冗談でしょ?」私は笑った。だが、彼の目は本気だった。少し戸惑いながら、私はそのスイムパンツを受け取った。

「なんで私がこれを着るの?」私は首をかしげながら、スイムパンツを手に取って見つめた。普段なら絶対に手を伸ばさないアイテムだ。

「ちょっと面白いものなんだよ、きっと驚くと思う」と彼は意味深に微笑んだ。その表情に、いつもと違う何かを感じた私は、不思議と断る気になれなかった。

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コテージの中で、私は少し緊張しながらスイムパンツを履いてみた。

「どうせ、何も変わらないでしょ?」と呟きながら、ふと鏡を見ると――そこには、自分の姿が完全に変わっていた。

スイムパンツを履いた瞬間、私は背が高くなり、肩幅が広がり、筋肉のついたしっかりとした体つきになっていた。目の前の鏡には、まるで別人のような男性が立っていたのだ。

「嘘でしょ…」声に出して驚くと、その声も低く響いた。慌てて顔に手を触れると、ゴツゴツとした男性の輪郭。髪も短く、まるで自分が今まで女性だったことが夢だったかのような感覚に襲われた。

「これ、一体どうなってるの?」驚きと混乱が押し寄せてくる。私は何度も鏡を見直し、自分が本当に男に変わったことを信じざるを得なかった。

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外に出ると、彼が砂浜に座って待っていた。私の変わった姿を見ても、彼は驚かず、満足げに微笑んだ。

「どうだ、気分は?」と彼は軽く問いかける。

「気分?なんで、こんなこと…?」私は問い返すが、その声がまだ自分のものだとは思えない。

「その水着、特別なものなんだよ。男が着れば何も起こらないが、女性が着ると、こうやって男性になるんだ」と彼は言った。

「でも、これ…元に戻れるの?」私は焦って尋ねた。突然の変化に、心が追いつかない。

「もちろん、戻れるよ。ただ、君がどう感じるか次第でね」彼は意味深に笑った。

「どう感じるかって…」私は言葉を失った。この状況をどう感じればいいのか、自分でもわからなかった。だが、不思議なことに、内なる変化を少しずつ感じ始めていた。自分が男性の体になったことで、視界も感覚も微妙に変わっていることに気づいたのだ。

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その後、彼と並んで海辺を歩いた。砂浜を踏みしめる足の感覚も、風が肌に当たる感覚も、いつもとは違う。新たな自分の体が、まるで長年慣れ親しんだものであるかのように馴染んでいくのが不思議だった。

「どうだ?悪くないだろう?」彼が笑って私を見る。

「…思ったよりも、変じゃないかも」私は正直な気持ちを伝えた。最初は驚きと戸惑いでいっぱいだったが、次第にこの新しい感覚に慣れていく自分がいた。そして、内心では少し楽しんでいることに気づいた。

「元に戻りたい?」彼が静かに尋ねる。

私は一瞬迷ったが、すぐに答えが浮かんだ。

「もう少しこのままでいてみる…何か新しい発見があるかもしれない」

彼は満足そうに頷き、私の隣で波打ち際を歩き続けた。私たちは何も言わず、ただ静かに夏の海を眺めていた。

新しい自分、新しい感覚。まるで自分の中に隠されていた別の一面を見つけたような気がした。この体で感じる世界は、以前とどこか違って見える。だが、その違いが心地よく感じられる瞬間が増えていくのを、私は不思議に思いながらも受け入れ始めていた。

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青い波が砂浜にそっと寄せては返す。その音が、今の私にはどこか懐かしく、そして新しいものに感じられた。
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