性転換サプリ

ユカリ

彼女の名前はユカリ。ある日、偶然にも「性転換できるサプリメント」という怪しげな薬を手に入れた。ネットで見つけたこのサプリメントは、使い方が簡単だ。たった一粒飲むだけで、24時間の間、自分の性別が変わるという。ユカリは半信半疑だったが、興味が抑えられなかった。

「どうせ嘘でしょ。でも、ちょっと面白いかも。」

好奇心が勝ち、ユカリはサプリメントを一粒飲み込んだ。すると、体の中で不思議な感覚が広がり、数分後には、目の前の鏡に映る姿がまったく別人になっていた。

そこにいたのは、見た目は20代半ばの長身の男性。短髪で、筋肉質の体つき。ユカリは自分の姿に驚き、鏡に近づいて顔をよく見た。見た目は完全に男性だが、どこか自分らしさも残っている。

「すごい…本当に男になってる。」

低く響く声が自分の口から出ることに、彼女はさらに驚いた。鏡をじっと見つめながら、顔を触ってみる。ひげが生えていて、手のひらの感触もごつごつしている。これは本物だと、彼女は改めて実感した。

「せっかくだから、これで一日過ごしてみようかな？」

服も変えなくてはいけない。ユカリは、兄のタケルが置いていったジャケットとジーンズを引っ張り出し、それを着て外に出た。

***

最初に向かったのはカフェだった。いつもは女性として注文をしていたが、今日は男性の声で話す。カウンターに立ち、店員に「コーヒーを一つ」と注文する。少し緊張しながらも、店員は特に違和感なく対応してくれた。彼女はほっとし、カップを受け取って座席についた。

「これ、面白いかも。」

ユカリは周りを見渡し、自分を見ている人がいないことに気づく。誰も彼女が本当は女性だとは思っていない。ただの一人の男性として見られている。それが不思議で、同時に少し解放されたような気持ちにもなった。

次に向かったのはスポーツジム。普段はなかなか筋トレに挑戦しないユカリだが、男性の体ならどうだろうかと試してみたくなった。ウェイトリフティングのバーに手をかけると、驚くほどスムーズに持ち上がった。

「こんなに重いのが持てるなんて、すごい！」

普段は女性として気にしていた視線も、この体なら気にならない。ジムの他の男性たちと同じように、自由にトレーニングができることが新鮮だった。

***

夜になると、ユカリは友人たちとバーに出かけた。もちろん、彼女の正体を知っている人はいない。新しい名前として「ユウ」と名乗り、男性として振る舞った。

彼女は男性としての生活が意外と気楽だと感じ始めていた。飲み物を注文する時も、周りの反応が普段と違うことに気づいた。彼女が女性としている時は、よく男性から話しかけられていたが、今はその立場が逆転している。今度は自分が「一人の男」として周囲に溶け込んでいるのだ。

夜が深まると、友人の一人が「一緒にダーツをしよう」と誘ってきた。ユカリはそれに応じ、久しぶりにダーツのゲームを楽しんだ。腕力が増しているからか、いつもよりも高得点を出すことができた。

「これなら、男性として過ごすのも悪くないな。」

***

一日の終わりに、ユカリは自分の部屋に戻ってきた。男性として過ごした一日は、驚きと発見に満ちていた。サプリメントの効果が切れる前に、もう一度鏡を見つめる。

「不思議な体験だったな…。でも、これで分かったことがある。」

ユカリは、男性としての自分と女性としての自分、どちらも彼女の一部だと感じた。そして、性別が変わっても変わらない「自分自身」がいることに気づいた。

次の日、彼女はまた元の女性の姿に戻ったが、その体験は忘れられないものとなった。そして、時々サプリメントを使って、気まぐれに性別を変えながら、自由に日常を楽しむことにした。

「たまには違う自分を楽しむのも悪くないわね。」