two in one

廣瀬純七

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優斗と沙織

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彼女、沙織と彼、優斗は付き合って3年目のカップルだった。ある日、二人は日帰り旅行の帰り道で交通事故に遭遇する。車は猛スピードで突っ込んできて、二人は大きな衝撃を受け、意識を失った。

***

沙織が目を覚ましたとき、周りは白い光に包まれていた。病院のベッドの上で目を覚ましたと気づくが、何かがいつもと違う感覚に彼女は戸惑う。頭がぼんやりしていて、自分がどこにいるのかすぐにはわからなかった。

「…ここは…?」声を出そうとするが、聞こえてきたのは自分の声ではなかった。それは低く、男の声だ。

驚いた沙織は、慌てて手を見下ろす。そこにあるのは、自分の細い女性の手ではなく、大きな男の手だった。さらに、病室の窓に映る自分の姿を見て彼女は息を飲む。そこに映っていたのは、優斗の顔だったのだ。

「なんで…?どうして…?」沙織は混乱しながら、ベッドから起き上がり、部屋の中を見回す。

その時、別のベッドからかすかな声が聞こえた。彼女が振り向くと、そこには優斗が横たわっている。だが、彼の体から聞こえる声は明らかに沙織のものだった。

「沙織…?これ、どういうことなんだ…?」

優斗の体に入った沙織は呆然としながら、ゆっくりとベッドに近づいた。

「私、優斗の体に…そして、優斗は私の体に入ってるってこと…?」

「そんな…まさか、夢か?」優斗の意識は混乱し、頭を抱えるように沙織の体を動かした。

二人は目を見合わせ、言葉を失った。

***

医者の説明によると、二人は事故により大きな衝撃を受け、奇跡的に命は助かったものの、彼らの意識が入れ替わってしまったことについては、医学的に説明がつかないということだった。身体は無傷ではなかったが、治療すれば元に戻るだろうと告げられたが、精神の入れ替わりについては全く手がつけられなかった。

「どうしてこんなことに…」沙織は優斗の体の中でため息をつき、手を握り締めた。

「俺たち、これからどうするんだ?」優斗は沙織の顔をした自分の姿を見つめ、肩を落とした。

***

二人は、退院後も仕方なくお互いの生活を続けることにした。沙織は優斗の体で彼の仕事に出かけ、優斗は沙織の体で彼女の仕事をこなすことになった。しかし、性別も体の動きも違うため、最初は全くうまくいかなかった。

沙織は優斗の重たい体に慣れず、仕事中も何度もミスを繰り返す。優斗の同僚たちは、いつもの彼らしくない様子に驚き、冗談で「どうしたんだ?急に不器用になったな」と笑いかけたが、沙織は内心焦っていた。

一方の優斗も、沙織の体で女性の服を着ることに抵抗を感じていた。朝のメイクやファッションにも苦戦し、会社の同僚たちからは「最近、雰囲気変わったね」と言われ、どう対応していいかわからない状態だった。

「優斗!ヒールで歩くの、難しすぎるんだけど…」沙織は、帰宅後に優斗に文句を言った。

「お前だって、俺の仕事を何度もミスしてるじゃないか。お互い様だろ!」優斗も不満そうに返す。

そんな日々が続き、二人は少しずつお互いの体での生活に慣れていった。しかし、問題は体の動きだけではなかった。性別の違いからくる感情や視点の違いに、二人はしばしば戸惑いを感じるようになった。

ある日、沙織は優斗の体で鏡を見つめながら、ふと思った。

「ねえ、優斗。私たち、入れ替わってからお互いのことを前よりも理解できてる気がしない?」

優斗は少し考えてから頷いた。「確かに…お前が毎日どんなことに苦労してたのか、少しわかってきた気がするよ。今まで何気なく過ごしてたことが、実はこんなに大変だったんだなって」

沙織も同意した。「私も、優斗がこんなに仕事でプレッシャーを感じてたなんて知らなかった。でも、こうやってお互いの体を通じて理解することで、なんか…絆が深まった気がするよね」

「そうだな…確かに、入れ替わる前よりもお前のことがもっとわかってきた気がする」

二人はお互いの手を取り合い、少し微笑んだ。

***

そんな生活が続いて数か月が経ったある日、突然何の前触れもなく二人の体は元に戻った。朝、目を覚ますと、沙織は自分の体で、優斗も自分の体に戻っていた。

「戻った…!?」沙織は自分の手を見つめ、驚きながら叫んだ。

優斗も自分の体に戻ったことを確認し、喜びに溢れた。「本当に戻ったんだ…!」

二人は喜び抱き合い、やっと元の生活に戻れることに感謝した。しかし、二人の心には以前とは違う何かが残っていた。お互いの体を通じて得た経験が、彼らの関係をより深めたのだ。

「お前のことを、今まで以上に大切にしたいと思うよ」と優斗は真剣な表情で言った。

沙織も優しく微笑みながら答えた。「私も。お互いにもっと理解し合えるようになったから、これからも一緒に成長していこうね」

二人は、交通事故で始まった奇妙な出来事が、実はお互いの絆を深めるための運命的な出来事だったのかもしれないと感じるようになった。
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