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第二章
望月の計画
しおりを挟む美優と菜々子は緊迫した空気の中、輝一の提案に耳を傾けた。
「計画って、一体何をさせようとしてるの?」
美優が毅然とした声で問いかける。
輝一は薄笑いを浮かべながら、机の上に積まれたファイルを一冊取り出し、二人の目の前に広げた。その中には、さまざまな人々の写真が貼られ、それぞれに性別や年齢が書き込まれていた。
「俺の計画は、人類の限界を超えることだよ。性別なんてただの殻にすぎない。それを自由に行き来できる世界を作る。それが俺の目標だ。」
菜々子は眉をひそめた。
「それが本当に必要なこと?そのために普通の人を巻き込むなんて許されない!」
「普通の人?君たちも普通じゃないだろう。君たちの経験が、この研究の価値を証明してる。」
輝一の目が鋭く光る。
「俺が求めてるのはデータだ。君たちが体の変化をどう感じたか、どんな影響があったか――そのすべてが、この計画を次の段階に進める鍵になる。」
### **突きつけられた選択肢**
輝一は二人に実験参加の契約書を差し出した。
「この研究に協力するなら、元に戻れる方法を教える。そして新たな未来を一緒に作るんだ。」
美優はファイルの中の写真を眺めながら、複雑な表情を浮かべた。
「もし私たちが協力しなかったら?」
輝一は肩をすくめた。
「それでも構わない。ただ、戻る方法はこのクリームの副作用の研究が進まない限り見つからないだろうな。」
菜々子が拳を握りしめ、声を震わせた。
「それは脅しと同じじゃない!人の体を自由に弄んで、元に戻れない人たちの気持ちを考えたことがあるの?」
輝一は少しだけ表情を曇らせたが、すぐに冷たい目に戻った。
「感情論で科学は進まない。大切なのは結果だ。」
### **揺れる決断**
二人はその場で答えを出せず、輝一に少し時間をもらうよう頼んだ。倉庫を後にしながら、美優と菜々子は小声で話し合う。
「どうする、美優?協力するしかないのかな…」
菜々子が不安げに呟く。
美優は深くため息をつき、空を見上げた。
「協力するにしても、あの人の言うことを全部鵜呑みにするのは危険よ。でも…私たちだけじゃ解決できないこともある。」
菜々子はうなずきながらも、まだ納得できない表情だ。
「他に頼れる人がいればいいんだけど…。」
その時、美優のスマホが鳴った。画面には見覚えのない番号が表示されている。彼女が恐る恐る応答すると、低く落ち着いた声が耳に届いた。
「君たちが望月輝一と接触したと聞いた。私は彼の元で働いていた者だ。話したいことがある。」
美優と菜々子は顔を見合わせた。この声の主は、輝一の秘密を知る重要な人物かもしれない。
「どこで会えますか?」
美優は慎重に尋ねた。
「街の南にある古い喫茶店『カメリア』に来てくれ。詳しい話はそこで。」
### **新たな展開**
二人は輝一の提案を保留したまま、指定された喫茶店へ向かうことに決めた。そこで待っているのは、味方なのか、それとも新たな罠なのか――真相はまだ霧の中だった。
物語は、輝一の陰謀とその裏側に潜む真実を探る方向へ、さらに加速していく。
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