22 / 25
22
しおりを挟む
目が覚めるとそこは暗くて冷たい石で出来た牢屋の中だった。
私は手首と足首を縛られ転がされているようだ。
鉄格子の向こうにぼんやりとオレンジ色の蝋燭の明かりが見える。
(……どうかセーラが無事でありますように……)
はじめて人が刺されるのを見た。
私を知ろうとしてくれた優しく温かいセーラ。
お城には魔術医のクローケンがいるからきっと大丈夫だと自分に言い聞かせる。
そうでもしないと不安で押し潰されそうだった。
「目が覚めた?」
「ひゃっ!?」
いきなり後ろから声がして肩が跳ねる。
振り返ると幼い少年が同じ様に縛られた状態でこちらを見ていた。ルヴィアナと同い年くらいだろうか。
「ごめん、驚かせるつもりは無かったんだ」
「いえ、こちらこそ……変な声出しちゃってごめんなさい。あなたも、誘拐されたの?」
少年に向き直り尋ねると彼は小さく頷いた。
「ごめん。君を誘拐したの、僕の兄ちゃんなんだ」
「お兄さん……?」
ということはこの子はあの男の弟なのか。
こうして捕まっているという事は、あの男は弟を人質に取られて仕方なく私を誘拐したことになる。
騎士やサイアスという魔王がいる城の中から私を難なく連れ出せたということは、男を操っている黒幕はそれなりに城に詳しい人間だろう。
(もしかしてリーアとか言う、あの勘違い女かしら?それともルヴィアナを虐待してたあの侍女?)
もしくは私がまだ出会ったことのない、サイアスに恨みを持つ人物だろうか。
「ねぇあなた、名前は?私は……ヴィアよ」
今はとにかく情報を集めようと少年に声をかける。
ルヴィアナと名乗りかけて止め貰った名前を名乗った。
「ヴィアだね。僕はコルトっていうんだ、よろしくね」
「こちらこそ」
微笑みかけるとコルトも微笑み返してくれる。
「ねぇ、コルトは誰に誘拐されたの?」
「女の人2人だよ、多分片方は貴族の女の人」
「どんな人か覚えてる?」
「えっと」
コルトが答えようとした時、コツコツと石の通路を歩く音が響いた。
私達は思わず息を潜める。
段々と足音が近づいて来て、その姿が蝋燭の明かりに照らされた。
「ごきげんようルヴィアナ様」
姿を現したのは自称魔王の婚約者で勘違い女のリーアだった。そしてその後ろには腕と足に包帯を巻いたあの虐待をしていた吊り目の侍女がいる。
彼女達は私を見下ろしてニヤニヤと笑みを浮かべていた。
見事に予想は的中してしまった。
「わたくしのこと、覚えておいでですわね?ルヴィアナ様のせいで、愛しい魔王陛下に会えなくなってしまったではありませんか。それどころかあなたはこちらのサーリが気に食わないからと、魔王陛下に嘘をついて彼女を牢屋に閉じ込め鞭打ちにの刑にしたとか。なんて極悪非道な子供なのかしら」
「リーア様の仰る通りです!あなたのせいで私は心に癒えぬ傷を受けました!」
この侍女はサーリと言う名前なのか。初めて知った。
というか、彼女達は自分がサイアスに受けた罰を全部私のせいにして逆恨みしているだけではないか。
サーリが心に癒えぬ傷を受けた?バカバカしい。心を傷つけられていたのはルヴィアナの方だ。
どの世界にも加害者であるにもかかわらず被害者ぶっている馬鹿者はいるようだ。呆れて反論する気にもなれない。
「ですからわたくしは、サーリの手を借りて悪い子のルヴィアナ様にお仕置きして差し上げることにしましたの。魔王陛下のためにも未来の義母として躾をする役割がありますから。サーリ、ルヴィアナ様を連れていらして。しっかり躾をしてあげましょう」
「はい、リーア様」
サーリは鉄格子の扉を開けると私の髪を乱暴に掴む。
「……っ!」
まさか髪を掴まれるとは思わなくてバランスを崩した私は無様にも地面に倒れ込んだ。
「うふふっ、なんて無様なのかしら!これじゃあ陛下にも愛されないはずだわ!」
リーアはおかしくて仕方ないというように扇を口元で広げながら笑っている。
それはサーリも同じだった。
(この顔、見たことある……)
それは私をイジメて楽しげに笑う加害者どもの顔とよく似ていた。
私は手首と足首を縛られ転がされているようだ。
鉄格子の向こうにぼんやりとオレンジ色の蝋燭の明かりが見える。
(……どうかセーラが無事でありますように……)
はじめて人が刺されるのを見た。
私を知ろうとしてくれた優しく温かいセーラ。
お城には魔術医のクローケンがいるからきっと大丈夫だと自分に言い聞かせる。
そうでもしないと不安で押し潰されそうだった。
「目が覚めた?」
「ひゃっ!?」
いきなり後ろから声がして肩が跳ねる。
振り返ると幼い少年が同じ様に縛られた状態でこちらを見ていた。ルヴィアナと同い年くらいだろうか。
「ごめん、驚かせるつもりは無かったんだ」
「いえ、こちらこそ……変な声出しちゃってごめんなさい。あなたも、誘拐されたの?」
少年に向き直り尋ねると彼は小さく頷いた。
「ごめん。君を誘拐したの、僕の兄ちゃんなんだ」
「お兄さん……?」
ということはこの子はあの男の弟なのか。
こうして捕まっているという事は、あの男は弟を人質に取られて仕方なく私を誘拐したことになる。
騎士やサイアスという魔王がいる城の中から私を難なく連れ出せたということは、男を操っている黒幕はそれなりに城に詳しい人間だろう。
(もしかしてリーアとか言う、あの勘違い女かしら?それともルヴィアナを虐待してたあの侍女?)
もしくは私がまだ出会ったことのない、サイアスに恨みを持つ人物だろうか。
「ねぇあなた、名前は?私は……ヴィアよ」
今はとにかく情報を集めようと少年に声をかける。
ルヴィアナと名乗りかけて止め貰った名前を名乗った。
「ヴィアだね。僕はコルトっていうんだ、よろしくね」
「こちらこそ」
微笑みかけるとコルトも微笑み返してくれる。
「ねぇ、コルトは誰に誘拐されたの?」
「女の人2人だよ、多分片方は貴族の女の人」
「どんな人か覚えてる?」
「えっと」
コルトが答えようとした時、コツコツと石の通路を歩く音が響いた。
私達は思わず息を潜める。
段々と足音が近づいて来て、その姿が蝋燭の明かりに照らされた。
「ごきげんようルヴィアナ様」
姿を現したのは自称魔王の婚約者で勘違い女のリーアだった。そしてその後ろには腕と足に包帯を巻いたあの虐待をしていた吊り目の侍女がいる。
彼女達は私を見下ろしてニヤニヤと笑みを浮かべていた。
見事に予想は的中してしまった。
「わたくしのこと、覚えておいでですわね?ルヴィアナ様のせいで、愛しい魔王陛下に会えなくなってしまったではありませんか。それどころかあなたはこちらのサーリが気に食わないからと、魔王陛下に嘘をついて彼女を牢屋に閉じ込め鞭打ちにの刑にしたとか。なんて極悪非道な子供なのかしら」
「リーア様の仰る通りです!あなたのせいで私は心に癒えぬ傷を受けました!」
この侍女はサーリと言う名前なのか。初めて知った。
というか、彼女達は自分がサイアスに受けた罰を全部私のせいにして逆恨みしているだけではないか。
サーリが心に癒えぬ傷を受けた?バカバカしい。心を傷つけられていたのはルヴィアナの方だ。
どの世界にも加害者であるにもかかわらず被害者ぶっている馬鹿者はいるようだ。呆れて反論する気にもなれない。
「ですからわたくしは、サーリの手を借りて悪い子のルヴィアナ様にお仕置きして差し上げることにしましたの。魔王陛下のためにも未来の義母として躾をする役割がありますから。サーリ、ルヴィアナ様を連れていらして。しっかり躾をしてあげましょう」
「はい、リーア様」
サーリは鉄格子の扉を開けると私の髪を乱暴に掴む。
「……っ!」
まさか髪を掴まれるとは思わなくてバランスを崩した私は無様にも地面に倒れ込んだ。
「うふふっ、なんて無様なのかしら!これじゃあ陛下にも愛されないはずだわ!」
リーアはおかしくて仕方ないというように扇を口元で広げながら笑っている。
それはサーリも同じだった。
(この顔、見たことある……)
それは私をイジメて楽しげに笑う加害者どもの顔とよく似ていた。
10
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
潮海璃月
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる