旦那様は魔王様!

狭山ひびき

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離宮の夜は大混乱!?

淋しそうな誘拐犯 1

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 バチン、とヴァイオリンの弦が切れて、バードは顔をしかめた。

 しばらく無言で弦の切れたヴァイオリンに視線を落としていた彼は、細く息を吐きだすと、ヴァイオリンをテーブルの上において窓際の揺り椅子に腰かける。

 エルザはうまくいっただろうか―――、窓の外を見つめながら、バードは、およそひと月前にエルザが泣きながらこの邸を訪れたときのことを思い出した。

 あの日――

 バードもとある理由から絶望の淵にいた。

 そこへ、エルザが泣きながらやってきたのだ。「ジェイルが裏切った」と。

 バードにはエルザが泣いている理由にも、ジェイルの裏切りとやらにも心当たりがあった。

 バードを絶望のふちに追いやった理由も、同じだったから――

「リリア……、君はどうして……」

 バードはポケットから天鵞絨ビロードの小箱を取り出した。

 目を閉じれば、瞼の裏にはリリアのまぶしい笑顔が浮かんでくる。

 どうしてこんなことになったのか、どれだけ考えてもバードにはわからなかった。

 コンコン

 扉を叩く音がして、バードは小箱をポケットに戻すと、揺り椅子から立ち上がった。

「誰?」

 部屋を横切って、外に問いかけながら扉を開けたバードは目を丸くした。

 そこにはエルザと、黒髪の見知らぬ少女が立っていた。
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