72 / 137
離宮の夜は大混乱!?
淋しそうな誘拐犯 1
しおりを挟む
バチン、とヴァイオリンの弦が切れて、バードは顔をしかめた。
しばらく無言で弦の切れたヴァイオリンに視線を落としていた彼は、細く息を吐きだすと、ヴァイオリンをテーブルの上において窓際の揺り椅子に腰かける。
エルザはうまくいっただろうか―――、窓の外を見つめながら、バードは、およそひと月前にエルザが泣きながらこの邸を訪れたときのことを思い出した。
あの日――
バードもとある理由から絶望の淵にいた。
そこへ、エルザが泣きながらやってきたのだ。「ジェイルが裏切った」と。
バードにはエルザが泣いている理由にも、ジェイルの裏切りとやらにも心当たりがあった。
バードを絶望の淵に追いやった理由も、同じだったから――
「リリア……、君はどうして……」
バードはポケットから天鵞絨の小箱を取り出した。
目を閉じれば、瞼の裏にはリリアのまぶしい笑顔が浮かんでくる。
どうしてこんなことになったのか、どれだけ考えてもバードにはわからなかった。
コンコン
扉を叩く音がして、バードは小箱をポケットに戻すと、揺り椅子から立ち上がった。
「誰?」
部屋を横切って、外に問いかけながら扉を開けたバードは目を丸くした。
そこにはエルザと、黒髪の見知らぬ少女が立っていた。
しばらく無言で弦の切れたヴァイオリンに視線を落としていた彼は、細く息を吐きだすと、ヴァイオリンをテーブルの上において窓際の揺り椅子に腰かける。
エルザはうまくいっただろうか―――、窓の外を見つめながら、バードは、およそひと月前にエルザが泣きながらこの邸を訪れたときのことを思い出した。
あの日――
バードもとある理由から絶望の淵にいた。
そこへ、エルザが泣きながらやってきたのだ。「ジェイルが裏切った」と。
バードにはエルザが泣いている理由にも、ジェイルの裏切りとやらにも心当たりがあった。
バードを絶望の淵に追いやった理由も、同じだったから――
「リリア……、君はどうして……」
バードはポケットから天鵞絨の小箱を取り出した。
目を閉じれば、瞼の裏にはリリアのまぶしい笑顔が浮かんでくる。
どうしてこんなことになったのか、どれだけ考えてもバードにはわからなかった。
コンコン
扉を叩く音がして、バードは小箱をポケットに戻すと、揺り椅子から立ち上がった。
「誰?」
部屋を横切って、外に問いかけながら扉を開けたバードは目を丸くした。
そこにはエルザと、黒髪の見知らぬ少女が立っていた。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】恋につける薬は、なし
ちよのまつこ
恋愛
異世界の田舎の村に転移して五年、十八歳のエマは王都へ行くことに。
着いた王都は春の大祭前、庶民も参加できる城の催しでの出来事がきっかけで出会った青年貴族にエマはいきなり嫌悪を向けられ…
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】公爵令嬢は勇者への恩返しを試みる〜サブヒロインとして頑張ります〜
マロン株式
恋愛
公爵令嬢ユウフェには、ひとつだけ秘密がある。
――この世界が“小説の中”だと知っていること。
ユウフェはただの“サブヒロイン”で、物語の結末では魔王のもとへ嫁ぐ運命にある……はずだった。
けれどーー
勇者の仲間、聖女、そして魔王が現れ、〝物語どおり〟には進まない恋の三角関係(いや、四角関係?)が動き出す。
サブヒロインの恩返しから始まる、ほのぼの甘くて、少し切ない恋愛ファンタジー。
◇◇◇
※注意事項※
・序盤ほのぼのめ
・勇者 ✖ サブヒロイン ✖ 魔王 ✖ 巫女(?)の恋愛模様
・基本はザマァなし
・過去作のため、気になる部分あればすみません
・他サイトと並行改稿中のため、内容に差異が出る可能性があります
・設定ゆるめ
・恋愛 × ファンタジー
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
【完結】タジタジ騎士公爵様は妖精を溺愛する
雨香
恋愛
【完結済】美醜の感覚のズレた異世界に落ちたリリがスパダリイケメン達に溺愛されていく。
ヒーロー大好きな主人公と、どう受け止めていいかわからないヒーローのもだもだ話です。
「シェイド様、大好き!!」
「〜〜〜〜っっっ!!???」
逆ハーレム風の過保護な溺愛を楽しんで頂ければ。
竜帝と番ではない妃
ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。
別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。
そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・
ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる