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魔女は魔女でも、男です
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イリアは硬直した。
それはもう、見事に凍り付いた。
アマルベルダの家には、大きな風呂場がある。魔女は風呂好きのようで、いったいどうやって湯を運んでいるのだろうと首を傾げたくなるほど、ひろーい風呂があるのだ。
イリアは意気揚々とポチを抱えて風呂場の扉を開けた。おそらくアマルベルダの魔法だろうが、常に暖かい湯がはられている風呂をあけると、むわっと白い靄があふれ出た。
イリアはポチを抱えて靄が立ち込める風呂場に足を踏み入れ、そして違和感を覚えた。
誰かがいる気がする。
気温差であふれ出た靄はやがて落ち着き、視界がクリアになるにつれて、存在を感じた「なにか」が明確になった。
「おや、イリアかい。なんだい、背中でも流しに来てくれたのかい?」
何かはアマルベルダだった。しかし、今まさに体を洗おうとしていた魔女は、いつもと様子が違った。
赤と黒を混ぜたような不思議な色味の髪に、卵型の顔はいつも通り。唇はいつものように赤くなかったが、紅が落ちたのだろうから、まあおかしくない。だが――
「―――」
イリアの目は、魔女の胸に注がていた。
「……胸が、ない」
アマルベルダは「なにをいうんだろう」と不思議な顔をした。
「あたりまえだろう。胸は魔法で作った偽物だよ。あんたが言ったんじゃないか、男だって」
確かにそうだ。確かに言った。男らしい喉ぼとけを見て、イリアは魔女が男だとわかったから。と、言うことは――
イリアはそのまま視線をスライドさせた。胸から割れた腹筋の見事な腹へ。そして――
「き、きやああああああ――――――!」
イリアは両手に抱えていたポチを放り出すと、絶叫して風呂場から逃げ出した。
かわいそうなのはポチである。
イリアに放り投げられた彼は、体勢を整えることもできずに、風呂の中へ真っ逆さま。
ぼちゃーんと無情な音を立てて、彼は風呂の中へとダイブした。
それはもう、見事に凍り付いた。
アマルベルダの家には、大きな風呂場がある。魔女は風呂好きのようで、いったいどうやって湯を運んでいるのだろうと首を傾げたくなるほど、ひろーい風呂があるのだ。
イリアは意気揚々とポチを抱えて風呂場の扉を開けた。おそらくアマルベルダの魔法だろうが、常に暖かい湯がはられている風呂をあけると、むわっと白い靄があふれ出た。
イリアはポチを抱えて靄が立ち込める風呂場に足を踏み入れ、そして違和感を覚えた。
誰かがいる気がする。
気温差であふれ出た靄はやがて落ち着き、視界がクリアになるにつれて、存在を感じた「なにか」が明確になった。
「おや、イリアかい。なんだい、背中でも流しに来てくれたのかい?」
何かはアマルベルダだった。しかし、今まさに体を洗おうとしていた魔女は、いつもと様子が違った。
赤と黒を混ぜたような不思議な色味の髪に、卵型の顔はいつも通り。唇はいつものように赤くなかったが、紅が落ちたのだろうから、まあおかしくない。だが――
「―――」
イリアの目は、魔女の胸に注がていた。
「……胸が、ない」
アマルベルダは「なにをいうんだろう」と不思議な顔をした。
「あたりまえだろう。胸は魔法で作った偽物だよ。あんたが言ったんじゃないか、男だって」
確かにそうだ。確かに言った。男らしい喉ぼとけを見て、イリアは魔女が男だとわかったから。と、言うことは――
イリアはそのまま視線をスライドさせた。胸から割れた腹筋の見事な腹へ。そして――
「き、きやああああああ――――――!」
イリアは両手に抱えていたポチを放り出すと、絶叫して風呂場から逃げ出した。
かわいそうなのはポチである。
イリアに放り投げられた彼は、体勢を整えることもできずに、風呂の中へ真っ逆さま。
ぼちゃーんと無情な音を立てて、彼は風呂の中へとダイブした。
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