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アマルベルダ、風邪を引く!
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こんこん、とイリアは咳をした。
頭の芯がぼーっとして、体が気だるい。そして、全身が燃えるように熱かった。
「ほらねぇ、だからうつるよって言っただろう?」
すっかり体調のよくなったアマルベルダが、イリアのベッドの枕元に座って、彼女の額に手を伸ばした。魔女の手はひんやりとしていてとても気持ちがいい。
「あーあー、熱まで出て。ちょっと待ってな。濡らしたタオルを持ってきてあげようね」
アマルベルダがそう言って部屋を出て行くと、魔女と入れ替わるように、壁の扉をくぐってクラヴィスが姿を現した。
「イリア、風邪をひいたんだって?」
クラヴィスの手には、イチゴと、皮をむいたオレンジがあった。彼は先ほどまでアマルベルダが座っていた椅子に腰を下ろすと、はふはふと浅い息をくり返すイリアの頬を撫でた。
「果物なら食べられるだろう?」
イリアはこくんと頷いた。あまり食欲はなかったが、クラヴィスが持ってきてくれたのだ。彼の気持ちを無駄にしたくない。
クラヴィスはイリアの背にクッションを置いて彼女が体を起こすのを手助けすると、フォークに刺したイチゴを彼女の唇に近づけた。
「はい、あーんして」
イリアは素直に口を開けた。
もぐもぐと小さな口を動かしてイチゴを咀嚼していると、クラヴィスが褒めるように頭を撫でてくれる。
食欲がないと思っていたが、水分の多い果物は、熱の出た体にすーっと染み渡る。イリアはごくんとイチゴを飲み下すと、無意識のうちに「あーん」と口をあけていた。
クラヴィスは満面の笑顔を浮かべると、今度はオレンジを口に入れてくれた。
「美味しい? イリア」
「おいしい」
イリアが頷くと、クラヴィスは満足したようだった。彼はご機嫌で、せっせとイリアの口に果物を運んだ。
そして持ってきていた果物をすべてイリアに食べさせると、汗で張り付いた彼女の服に気がついて、唐突に「着替えよう」と言い出して、イリアの服のボタンに手をかけた。
平静であったならば顔を真っ赤にして慌てるイリアも、この時は頭がぼーっとしていて正常な思考になかった。
イリアは、彼の手によって服を脱がされ、新しい服に着替えさせられても、何の違和感も覚えなかった。
クラヴィスはイリアがおとなしいのをいいことに、調子に乗って、近くの水差しから口に水を含むと、口移しで彼女に飲ませた。
「かわいい、僕のイリア……」
うっとりとささやくクラヴィスの様子を、部屋に入るには入れずに見ていたアマルベルダは、あきれたようにつぶやいた。
「おーおー、嬉しそうにまぁ。口移しなんて、うつしてくれって言っているようなもんだろう。知らないからねぇ」
アマルベルダのこの予言の通り、二日後、王太子クラヴィスは風邪を引いて寝込むことになり、つながった扉をくぐってイリアが看病しに来てくれると、「このまま熱が下がらなくてもいい」などと血迷ったこと言って、側近のリュベックをあきれさせたそうだ。
頭の芯がぼーっとして、体が気だるい。そして、全身が燃えるように熱かった。
「ほらねぇ、だからうつるよって言っただろう?」
すっかり体調のよくなったアマルベルダが、イリアのベッドの枕元に座って、彼女の額に手を伸ばした。魔女の手はひんやりとしていてとても気持ちがいい。
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「果物なら食べられるだろう?」
イリアはこくんと頷いた。あまり食欲はなかったが、クラヴィスが持ってきてくれたのだ。彼の気持ちを無駄にしたくない。
クラヴィスはイリアの背にクッションを置いて彼女が体を起こすのを手助けすると、フォークに刺したイチゴを彼女の唇に近づけた。
「はい、あーんして」
イリアは素直に口を開けた。
もぐもぐと小さな口を動かしてイチゴを咀嚼していると、クラヴィスが褒めるように頭を撫でてくれる。
食欲がないと思っていたが、水分の多い果物は、熱の出た体にすーっと染み渡る。イリアはごくんとイチゴを飲み下すと、無意識のうちに「あーん」と口をあけていた。
クラヴィスは満面の笑顔を浮かべると、今度はオレンジを口に入れてくれた。
「美味しい? イリア」
「おいしい」
イリアが頷くと、クラヴィスは満足したようだった。彼はご機嫌で、せっせとイリアの口に果物を運んだ。
そして持ってきていた果物をすべてイリアに食べさせると、汗で張り付いた彼女の服に気がついて、唐突に「着替えよう」と言い出して、イリアの服のボタンに手をかけた。
平静であったならば顔を真っ赤にして慌てるイリアも、この時は頭がぼーっとしていて正常な思考になかった。
イリアは、彼の手によって服を脱がされ、新しい服に着替えさせられても、何の違和感も覚えなかった。
クラヴィスはイリアがおとなしいのをいいことに、調子に乗って、近くの水差しから口に水を含むと、口移しで彼女に飲ませた。
「かわいい、僕のイリア……」
うっとりとささやくクラヴィスの様子を、部屋に入るには入れずに見ていたアマルベルダは、あきれたようにつぶやいた。
「おーおー、嬉しそうにまぁ。口移しなんて、うつしてくれって言っているようなもんだろう。知らないからねぇ」
アマルベルダのこの予言の通り、二日後、王太子クラヴィスは風邪を引いて寝込むことになり、つながった扉をくぐってイリアが看病しに来てくれると、「このまま熱が下がらなくてもいい」などと血迷ったこと言って、側近のリュベックをあきれさせたそうだ。
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