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フェルナーンからの招待状
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フェルナーンとは陸隣りだが、馬車で片道十日の長旅になる。
イリアがいるから休憩を長めに設定していることも時間がかかる理由の一つであるが、
長旅は体力を消耗させ、体調を崩す原因になりやすい。
道中、できるだけいい宿をとるように指示を出しているが、まあまあの人数で移動するのだ、一人一部屋なんて贅沢は言っていられない。そのためクラヴィスは旅の間、堂々とイリアと同室になることを訴えることができた。
護衛たちは、少しでも自分たちに部屋を割こうとする王太子の心優しい気づかいに感動したが、ただ一人リュベックだけは、そこにあるクラヴィスの下心を感じ取っていた。冷静沈着で寛大そうに見える王太子が、唯一イリアに関することだけ、ひどく狭量で横暴で自己の欲求を優先させることを知っていたからだ。
「さ、イリア。こっちにおいで」
お互いに湯を使ってさっぱりしたあと、クラヴィスはベッドに乗り上げると、イリアに向かって両手を広げた。
宿屋の女将が気を利かせて、別の部屋からベッドを一つ持ってこようとしてくれたのだが、それについてクラヴィスは「兵士たちに与えてくれ」と寛大な主人の顔を見せ、兵士たちを大いに感動させた。しかし彼は何も寛大だったわけでも、兵士たちのことを気遣ったわけでもなく、イリアと一つのベッドでいちゃいちゃして眠りたいという自己の欲求に従っただけだった。
イリアは少し警戒して、イリアの足元にすり寄るようにして付いて歩いていた白狐ポチを抱きかかえた。
クラヴィスはイリアがポチを抱きかかえたのを見て面白くなさそうな表情になったが、逆を言えばその狐がいる限り、イリアが自分と同じベッドで眠ることを知っていた。イチャイチャするにはポチは邪魔だが、致し方ない。
イリアはポチを抱っこしたままベッドにもぐりこんだ。
クラヴィスはこの狐がついてきた時点でこうなることはある程度想定ずみだったので、諦めて狐ごとイリアを抱きしめた。
「狭いからね。くっついていないとね」
もっともらしい言い分だが、腰のあたりに回された手つきが怪しい。
イリアは抵抗しようとしたが、薄い壁を一枚隔てて兵士がいることを知っていた。ここで騒いで逆に恥ずかしい思いをするのはイリアである。
(もーう!)
イリアはちょっぴりムッとして、腕に抱いたポチをクラヴィスの顔に近づけた。
「狐さん、ぱんち!」
「コォン」
ポチはイリアに命じられるまま、クラヴィスの顔面に猫パンチならぬ狐パンチを見舞わせた。
イリアだって反撃するときには反撃するのである。
イリアがいるから休憩を長めに設定していることも時間がかかる理由の一つであるが、
長旅は体力を消耗させ、体調を崩す原因になりやすい。
道中、できるだけいい宿をとるように指示を出しているが、まあまあの人数で移動するのだ、一人一部屋なんて贅沢は言っていられない。そのためクラヴィスは旅の間、堂々とイリアと同室になることを訴えることができた。
護衛たちは、少しでも自分たちに部屋を割こうとする王太子の心優しい気づかいに感動したが、ただ一人リュベックだけは、そこにあるクラヴィスの下心を感じ取っていた。冷静沈着で寛大そうに見える王太子が、唯一イリアに関することだけ、ひどく狭量で横暴で自己の欲求を優先させることを知っていたからだ。
「さ、イリア。こっちにおいで」
お互いに湯を使ってさっぱりしたあと、クラヴィスはベッドに乗り上げると、イリアに向かって両手を広げた。
宿屋の女将が気を利かせて、別の部屋からベッドを一つ持ってこようとしてくれたのだが、それについてクラヴィスは「兵士たちに与えてくれ」と寛大な主人の顔を見せ、兵士たちを大いに感動させた。しかし彼は何も寛大だったわけでも、兵士たちのことを気遣ったわけでもなく、イリアと一つのベッドでいちゃいちゃして眠りたいという自己の欲求に従っただけだった。
イリアは少し警戒して、イリアの足元にすり寄るようにして付いて歩いていた白狐ポチを抱きかかえた。
クラヴィスはイリアがポチを抱きかかえたのを見て面白くなさそうな表情になったが、逆を言えばその狐がいる限り、イリアが自分と同じベッドで眠ることを知っていた。イチャイチャするにはポチは邪魔だが、致し方ない。
イリアはポチを抱っこしたままベッドにもぐりこんだ。
クラヴィスはこの狐がついてきた時点でこうなることはある程度想定ずみだったので、諦めて狐ごとイリアを抱きしめた。
「狭いからね。くっついていないとね」
もっともらしい言い分だが、腰のあたりに回された手つきが怪しい。
イリアは抵抗しようとしたが、薄い壁を一枚隔てて兵士がいることを知っていた。ここで騒いで逆に恥ずかしい思いをするのはイリアである。
(もーう!)
イリアはちょっぴりムッとして、腕に抱いたポチをクラヴィスの顔に近づけた。
「狐さん、ぱんち!」
「コォン」
ポチはイリアに命じられるまま、クラヴィスの顔面に猫パンチならぬ狐パンチを見舞わせた。
イリアだって反撃するときには反撃するのである。
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