王子様を落とし穴に落としたら婚約者になりました ~迷惑がられているみたいですが、私あきらめませんから!~

狭山ひびき

文字の大きさ
39 / 43

犯人捕縛作戦 5

しおりを挟む
 放課後、ウォルターに用意してもらった二年三組の生徒の部活動の一覧と、それから昨日の行動履歴の写しをもらって、エイミーはカニング侯爵家に帰宅した。

「やっぱりこれ、おかしいのよね」

 自室でエイミーが資料を見ながらぶつぶつ呟いていると、スージーがお茶を入れながら首を傾げる。

「なにがおかしいんですか?」
「うん……。ねえスージー、例えばなんだけど、園芸部に在籍していない人が、こっそり園芸部の部室を訪れる理由って何だと思う?」
「花が見たくなったんじゃないですか?」
「それが、肥料とかしゃべるとかを収めている倉庫だったとしたら?」

 スージーは不思議そうな顔をして、うーんと唸った。

「そうですね……ええっと、何か花を植えたくなったけど肥料もしゃべるも持っていないから、倉庫から拝借しようとした、とか? でもそれって泥棒ですよねー」
「じゃあ、それが音楽室だったらどうかしら?」
「音楽室ですか?」
「ええ。音楽室は放課後、音楽部が使うでしょう? でも、音楽部が楽器を持ち出したあとで、こっそり誰かが音楽室に入ったら……それも泥棒目的だと思う?」
「フリージア学園のお話ですよね? フリージア学園の楽器が盗まれたりしたら大騒ぎになりませんか? 肥料とかしゃべるくらいなら騒がれないでしょうが、さすがに楽器は高価ですし……」
「盗難届が出されて、すぐに捕まるわよね」
「盗まれたんですか?」
「うーん、どうかしら? まだ調べてみないとわからないわ」

 エイミーは資料を置いて、スージーが入れてくれた紅茶に口をつけた。
 それからしばらく考え込んで、紅茶を飲みほしてから立ち上がる。

「ねえ、今日お兄様はいるかしら?」
「はい、お嬢様のあとに帰っていらっしゃいましたよ」
「ありがとう」

 エイミーはスージーに断って、資料を片手に、兄パトリックの部屋へ向かった。
 扉を叩けば、すぐに返事がある。

「お兄様、入りますねー」

 扉を開ければ、パトリックは一人がけのソファに座って本を読んでいた。
 エイミーの顔を見て、ちょっと複雑な表情を浮かべる。

「お前、今度は何をやらかしたんだ?」
「どうしたんですか藪から棒に。わたし、なにかやらかしたことなんてないですよ」
「お前の常識はどうなっているんだろう……」

 パトリックはやれやれと息をついて、本にしおりを挟んで閉じるとテーブルの上に置く。

「学園じゃあ、お前が殿下を追いかけまわしていると噂になっているぞ。その相談に来たんじゃないのか?」
「違いますけど? その噂、何か対策が必要なんですか?」
「必要じゃないと思っているお前がすごいな。ここ数日おとなしくしていたようだから、噂を消すために頑張っているのかと思っていたが違ったのか……」
「殿下はもう好きな時にぎゅーさせてくれるので、追いかける必要がなくなっただけです」
「妄想か?」
「違います!」

 この兄は、兄のくせにたまにひどい。
 ぷーっと頬を膨らませると、パトリックが「殿下も可哀想にな……」と意味不明なことを言った。
 エイミーはふくれっ面のままパトリックの対面のソファに腰を掛けた。

「お兄様、教えてほしいことがあるんです」
「殿下の秘密なら知らないぞ」
「なんでわたしがお兄様に殿下の秘密を聞くんですか? わたしの方がお兄様よりも十倍……ううん、百倍は殿下に詳しいですから必要ないです! だってお兄様は殿下の耳のここにほくろがあることも知らないでしょ?」
「逆になんでそんな見えにくいところのほくろの存在をお前が知っている……」
「えっへん!」
「褒めてない!」
「?」

 てっきりよく知っているなと褒められたと思ったのに怒られて、エイミーは「なんでだろう」と首をひねる。
 パトリックはもう一度息を吐き出した。

「それで、教えてほしいことってなんだ」
「これです。この人物について、教えてほしいことがあるんです」

 資料を机の上に置いて、エイミーは名簿の中にある一人の人物の名前を指さした。



しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています

鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。 指示を出さない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。 それなのに―― いつの間にか屋敷は落ち着き、 使用人たちは迷わなくなり、 人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。 誰かに依存しない。 誰かを支配しない。 それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。 必要とされなくてもいい。 役に立たなくてもいい。 それでも、ここにいていい。 これは、 「何もしない」ことで壊れなかった関係と、 「奪わない」ことで続いていった日常を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

折角転生したのに、婚約者が好きすぎて困ります!

たぬきち25番
恋愛
ある日私は乙女ゲームのヒロインのライバル令嬢キャメロンとして転生していた。 なんと私は最推しのディラン王子の婚約者として転生したのだ!! 幸せすぎる~~~♡ たとえ振られる運命だとしてもディラン様の笑顔のためにライバル令嬢頑張ります!! ※主人公は婚約者が好きすぎる残念女子です。 ※気分転換に笑って頂けたら嬉しく思います。 短めのお話なので毎日更新 ※糖度高めなので胸やけにご注意下さい。 ※少しだけ塩分も含まれる箇所がございます。 《大変イチャイチャラブラブしてます!! 激甘、溺愛です!! お気を付け下さい!!》 ※他サイト様にも公開始めました!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...