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世界最強の魔女は普段はポンコツ

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「なんでお前そんなに外見若いの。いや……そもそも人間って八百年生きれんのか?」

「しらなーい。わたし昔からこんなだし。あんまり昔のことって覚えてないしぃ。とりあえず古代龍が襲ってきたからぶっ殺したのは覚えてるけど」

「あー……、なんかある意味安心したわ。お前なら災厄なんとかできんだろ。つーかしろ。今すぐしろ。いろいろ疲れた」

 何がラブラブパワーだふざけやがってクソババァ。八百歳の女とどうラブラブしろって言うんだ。あほくさ。フランシスは椅子に座りなおすとテーブルの上に突っ伏した。

 アメリアはリンゴを食べ終えて、ほかに食べるものを探している。

「その魔力が満ちねぇと星を何とかできねぇの?」

「うん。何とかする魔法は知ってるけど、何とかするだけの魔力がない」

「魔力を回復するのは、食べ物?」

「そう。おなかすいたー」

「さっき食ったよな⁉」

 あれだけ食べてもう空腹とは、アメリアの胃はどうなっているんだろう。

(あーでも、こいつの腹を満たさねぇと災厄が襲ってくんのか)

 いったいどこまで食べるのか恐ろしくもあるが、災厄が訪れるのは勘弁だ。国が二、三個吹き飛ぶなんて聞いたら余計に。

 フランシスは立ち上がった。

「わかった。満足するまで飯作ってやる」

 ラブラブじゃなくてただ飯作りに来ただけじゃねーか。あのババァの予言、やっぱりあてにならねぇわ。

 フランシスは嘆息して、先ほどからにした大鍋を、再び火にかけた。





「フランシスって天才かもー!」

 テーブルの上に並べる料理を端から平らげていきながら、アメリアがニコニコと機嫌よさそうに笑っている。

 アメリアが魔方陣で出した食材は、フランシスによって次々と料理されてアメリアの胃に収まっていた。

「マジでよく食うな」

 底なしと言う言葉がぴったりなほど、アメリアの体の体積の何十倍もの量の食べ物が彼女の小さな口の中へと消えていく。

 必死になって食べ物を口に詰めて、リスのようにもごもごやる姿はちょっとかわいいかもしれない。

 肩よりも少し長いくらいの黒髪に、同じ色の大きな目。推定八百歳という年齢を聞いていなければ、素直に可愛いと思えただろう。

(この小せぇ体のどこに消えるんだかね)

 肉の塊はすでにもう半分以上ないし、アメリアの顔よりも大きかったカボチャを使ったパイはすでに彼女の胃の中に消えた。新しく作った鍋一杯のシチューももうない。それでもまだ食べると言う。

「おかわりー!」

「あーはいはい」

 ジャガイモとかニンジンとか、とにかく腹に溜まりそうな野菜をふんだんに入れたオムレツを差し出せば、アメリアはまた大口で食べはじめる。気持ちがいいほどの食べっぷりた。

「魔力は?」

「まだー」

 これだけ食べて満ちない魔力はいかほどのものだろう。

「魔力が満ちたら災厄を何とかしてくれるんだよな?」

 なんとなく、食べたものがそのまま魔力になると言うのなら、本当に災厄を何とかできるのではないかと思えてくるから不思議だ。そのくらい、アメリアは食べる。

 アメリアはフォークを持った手を一瞬止めて、それから小さく笑った。

「うん」

 その笑顔は、どうしてかフランシスの胸に小さな棘のように突き刺さった。








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