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第5章:結末
Episode19:皇帝の玉座――選択の果て
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剣戟の音が、次第に遠ざかっていく。
重く、静かな沈黙が
地下通路を満たしていた。
リネルとダリウス。
互いに息を荒くしながら、
剣を下ろさずに立っている。
血は流れた。
だが、致命傷はない。
――勝負は、まだ決していなかった。
「……来い」
ダリウスが顎で示す。
「ここで終わりではない」
「帝国の“答え”を、見せてやる」
⸻
二人が辿り着いたのは、
城の最上階。
巨大な扉が開かれ、
玉座の間が姿を現す。
黄金。
黒曜石。
冷たい威圧。
そして――
玉座に座す、ひとりの男。
帝国皇帝
《ヴァルド・エグゼリア》。
「……ほう」
皇帝は、興味深げに笑った。
「噂の“灰王の血”か」
「よくぞ、ここまで来た」
その声には、恐怖も緊張もない。
まるで、全てを掌の上で
見ているかのようだった。
リネルは一歩前に出る。
「帝国は、民を駒として扱った」
「王国を滅ぼし、故郷を灰にした」
「その罪をここで終わらせる」
玉座の間に、
はっきりとした沈黙が落ちる。
皇帝は、ゆっくりと立ち上がった。
「罪?」
「それは“勝者”が語る言葉だ」
「秩序とは、力だ。
力なき者は、守れん」
その視線が、ダリウスへ向く。
「――だから私は、この男を選んだ」
ダリウスは何も言わない。
ただ、
剣を支える存在として立っている。
「だが」
皇帝は、
再びリネルを見る。
「お前は、違う道を語る」
「ならば問おう、灰王の血よ」
皇帝の声が、
玉座の間に響く。
「帝国を倒した先で、
お前は何をする?」
「復讐か?」
「解放か?」
「それとも、新たな支配か?」
⸻
リネルは、一瞬だけ目を閉じた。
灰街の灯。
泣いていた村人。
母の手紙。
父の背中。
すべてが、胸の中で繋がる。
そして、はっきりと目を開いた。
「俺は――」
「王になる」
ざわめき。
「だが、支配する王じゃない」
「奪う王でもない」
リネルは、玉座をまっすぐ見据える。
「民と共に立つ王だ」
「剣は、奪うためにじゃない」
「選ぶために使う」
皇帝は、しばらく沈黙した後
愉快そうに笑った。
「面白い」
「実に、若い」
「だが……理想だけで国は動かん」
その瞬間。
ダリウスが、一歩前に出た。
「……陛下」
皇帝が、初めて視線を向ける。
「彼は、選び切りました」
静かな声。
「私が持たなかった“答え”を」
玉座の間が、凍りつく。
「ダリウス?」
「……これ以上、
帝国は血を流すべきではない」
ダリウスは、剣を床に突き立てた。
「私は、帝国の剣でした」
「だが、剣が
国を導いてはならない」
皇帝の笑みが、消える。
「……反逆か?」
「いいえ」
ダリウスは、首を振る。
「これは、“選択”です」
⸻
皇帝は、
ゆっくりと玉座に腰を下ろした。
「ならば――」
「最後の問いだ」
その視線が、リネルに突き刺さる。
「この男を、どうする?」
ダリウス・グランディア。
王国を滅ぼした将軍。
憎むべき仇。
リネルの手が、剣にかかる。
一瞬、
ほんの一瞬、殺意がよぎる。
だが。
リネルは、
剣を抜かなかった。
「……生きろ」
その言葉に、誰もが息を呑む。
「裁かれるべきは、一人の剣じゃない」
「血を選ばせ続けた“帝国の在り方”だ」
「俺は、終わらせる」
皇帝は、長い沈黙の末に笑った。
「……負けだな」
玉座に、深く身を預ける。
「時代が、私を置いていった」
⸻
夜明けの光が、
玉座の間に差し込む。
長かった戦争が、静かに
終わりを告げようとしていた。
リネルは、玉座の前に立つ。
まだ、座らない。
「……これは、始まりだ」
重く、静かな沈黙が
地下通路を満たしていた。
リネルとダリウス。
互いに息を荒くしながら、
剣を下ろさずに立っている。
血は流れた。
だが、致命傷はない。
――勝負は、まだ決していなかった。
「……来い」
ダリウスが顎で示す。
「ここで終わりではない」
「帝国の“答え”を、見せてやる」
⸻
二人が辿り着いたのは、
城の最上階。
巨大な扉が開かれ、
玉座の間が姿を現す。
黄金。
黒曜石。
冷たい威圧。
そして――
玉座に座す、ひとりの男。
帝国皇帝
《ヴァルド・エグゼリア》。
「……ほう」
皇帝は、興味深げに笑った。
「噂の“灰王の血”か」
「よくぞ、ここまで来た」
その声には、恐怖も緊張もない。
まるで、全てを掌の上で
見ているかのようだった。
リネルは一歩前に出る。
「帝国は、民を駒として扱った」
「王国を滅ぼし、故郷を灰にした」
「その罪をここで終わらせる」
玉座の間に、
はっきりとした沈黙が落ちる。
皇帝は、ゆっくりと立ち上がった。
「罪?」
「それは“勝者”が語る言葉だ」
「秩序とは、力だ。
力なき者は、守れん」
その視線が、ダリウスへ向く。
「――だから私は、この男を選んだ」
ダリウスは何も言わない。
ただ、
剣を支える存在として立っている。
「だが」
皇帝は、
再びリネルを見る。
「お前は、違う道を語る」
「ならば問おう、灰王の血よ」
皇帝の声が、
玉座の間に響く。
「帝国を倒した先で、
お前は何をする?」
「復讐か?」
「解放か?」
「それとも、新たな支配か?」
⸻
リネルは、一瞬だけ目を閉じた。
灰街の灯。
泣いていた村人。
母の手紙。
父の背中。
すべてが、胸の中で繋がる。
そして、はっきりと目を開いた。
「俺は――」
「王になる」
ざわめき。
「だが、支配する王じゃない」
「奪う王でもない」
リネルは、玉座をまっすぐ見据える。
「民と共に立つ王だ」
「剣は、奪うためにじゃない」
「選ぶために使う」
皇帝は、しばらく沈黙した後
愉快そうに笑った。
「面白い」
「実に、若い」
「だが……理想だけで国は動かん」
その瞬間。
ダリウスが、一歩前に出た。
「……陛下」
皇帝が、初めて視線を向ける。
「彼は、選び切りました」
静かな声。
「私が持たなかった“答え”を」
玉座の間が、凍りつく。
「ダリウス?」
「……これ以上、
帝国は血を流すべきではない」
ダリウスは、剣を床に突き立てた。
「私は、帝国の剣でした」
「だが、剣が
国を導いてはならない」
皇帝の笑みが、消える。
「……反逆か?」
「いいえ」
ダリウスは、首を振る。
「これは、“選択”です」
⸻
皇帝は、
ゆっくりと玉座に腰を下ろした。
「ならば――」
「最後の問いだ」
その視線が、リネルに突き刺さる。
「この男を、どうする?」
ダリウス・グランディア。
王国を滅ぼした将軍。
憎むべき仇。
リネルの手が、剣にかかる。
一瞬、
ほんの一瞬、殺意がよぎる。
だが。
リネルは、
剣を抜かなかった。
「……生きろ」
その言葉に、誰もが息を呑む。
「裁かれるべきは、一人の剣じゃない」
「血を選ばせ続けた“帝国の在り方”だ」
「俺は、終わらせる」
皇帝は、長い沈黙の末に笑った。
「……負けだな」
玉座に、深く身を預ける。
「時代が、私を置いていった」
⸻
夜明けの光が、
玉座の間に差し込む。
長かった戦争が、静かに
終わりを告げようとしていた。
リネルは、玉座の前に立つ。
まだ、座らない。
「……これは、始まりだ」
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