君とイルミネーションで。

SNOW❄️

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イルミネーション編

第4話 『光のあと、静かな時間。』

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人の波を抜けると、
音が少しだけ遠くなった。

さっきまでのざわめきが
嘘みたいに、風の音が戻ってくる。

「……ここ、ちょっと静かやな」 
 ユキが周りを見て言う。 

「うん。人少ない」
 ユウはそう答えながら、
繋いだままの手を見た。

離すタイミングを、
完全に見失っている。

イルミネーションはまだ見える。

でも、さっきほど眩しくない。

その分、落ち着いて見られる。

「さっきのとこ、すごかったな」

「クリスマスやもんな」

「来てよかった?」

ユキが、少しだけ不安そうに聞く。

「……うん。来てよかった」
 即答だった。

ユキは一瞬きょとんとして、
それから笑う。

「珍し。即答」

「……たまには」

「レアやなぁ」

そう言いながら、
ユキは少しだけ距離を詰めた。

肩が触れる。

「寒い?」

「……ちょっと」

「ほら見て。強がるから」

「強がってない……」

ユキはくすっと笑って、空を見上げた。

「四月さ」

「ん?」

「まだ名字で呼び合ってたやん」

「……せやな」

「あのときさ、こうして歩くとか、
想像してた?」

 ユウは少し考える。

「……してなかった」

「正直やな」

「でも……今のほうが、ええ」
言ってから、少し照れた。

「……それ、今言う?」

「……今やから」

ユキは何も言わずに、
手を少し強く握った。

光は変わらずそこにある。

でも、さっきよりも、
ちゃんと見えている気がした。

「なぁ、ユウ」

「なに」

「次、どこ行く?」

「……あったかいとこ」

「カフェ?」

「たぶん」

「賛成」
 そう言って、ユキは一歩前に出る。

 手は、まだ繋がれたまま。

イルミネーションの光が、
背中で揺れた。

——光の時間は、ここまで。
この先は、二人だけの温度で。
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