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#56 〆は甘くてとろける甘味を一つ
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デザートとはまた別に貴族達の元へと運ばれてきたのは、大きなお皿に並べられた一口サイズの四角い板状の食べ物達。
それは白、茶色、焦げ茶色の3色をしていて、それがまるで一枚の板のように綺麗に並べられており、非常に美しいものとなっていた。
そしてもう一つ、シュミット達セネルブルグ家の者達とフローリアとルビィの元へと運ばれたのは、とても大きくて明るめの茶色をしたクリームで彩られた、立派なケーキが運ばれていった。
『皆様、こちらは我が領地で最近収穫されたカカオという豆を加工した、チョコレートという甘味でございます』
そう、今回シュージが用意した目玉食材は、チョコレートだった。
これは初めてセネルブルグ家を訪れた際に倉庫で見つけたもので、その時はまだ色々と処理が足りなかったのか、形は良くても味はひたすら苦いし、舌触りも悪くてとてもじゃないが食べれるものではなかった。
ただ、シュージは前世で働いていた食堂の自作好きの店長が、チョコも自作しようと言い出し、カカオからチョコを作った経験があったのだ。
それで意気揚々と作り出したのはいいものの、工場にあるような専用の機械がない状態だと非常に手間も時間もかかり、一応市販のものと大差無いくらい美味しいチョコレートは出来たのだが、あまりにも手間なので、結局メニューに入れるのは泣く泣く断念したという過去がある。
だが、今回はその経験が生き、これを作ったというカカオを生産しているという村の者たちに詳しい作り方を教え、ムグラなどと協力してかなり急ピッチだが完成まで漕ぎ着けたのだ。
『そしてシュミット、誕生日おめでとう。 このチョコレートケーキは、今回の誕生日の祝いとして、世界で初めて君に食べてもらいたい』
「父上……」
先程の料理達もそうだが、この展開もセルゲイのサプライズで、スッと横から現れたメイドさんが、大きなチョコレートケーキを一切れ切り分け、シュミットの前の皿へと運んでくれた。
そんなケーキを周りの貴族達が見守る中、シュミットはゆっくりと口に運んだ。
「では…… んんっ!? こ、これはっ…… 美味しすぎるのじゃ……♡!」
シュミットが幸せそうな表情でそう言った途端、ホールからは拍手が鳴り響き、改めてシュミットの誕生日を皆んなが祝ってくれていた。
『喜んでもらえて良かった。 このチョコレートは、我が領の新たな名物となるだろう! 皆さんもぜひご賞味ください』
セルゲイがそう言うと、貴族の者たちにもチョコレートケーキが配膳され、並べられたホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、ビターチョコレートもそれぞれ口に運んでいった。
「あぁっ…… 口の中でとろける……♡ なんて幸せな甘さなの……♡」
「こっちの黒めのチョコレートは苦味が強くて、白い方は甘味が強い…… どれも違った美味しさがあるな!」
「このケーキ、スポンジが何層にもなっていて、中に薄いチョコレートが入ってるわ!」
そうしてチョコレートを口に運んだ者達は、すぐにその美味しさにノックアウトされた。
「これは良いものですね…… 間違いなく、今まで食べてきた甘味の中で、最上級と言えるでしょう」
「これ、すごく美味しいです~♡」
それは王族であるフローリアとルビィも例外ではなく、噛み締めるように大事にケーキを頬張っていた。
『今回、こうして提供したチョコレートですが、量産の目処も立っておりますので、そう経たずして販売もできると思います。 それに、制作者の意向で、更なる味や種類の改善も進んでいきますので、楽しみにしていてください。 本日はお帰りの際に手土産として、そちらのホワイト、ミルク、ビターチョコレートの詰め合わせを保冷機能のついた箱に入れてお渡しします。 チョコレートは熱に弱いので、各自の家に帰ってからどうぞご家族とお楽しみください』
そんな大盤振る舞いなセルゲイの言葉に、貴族達は色めき立ち、再びホール内は拍手に包まれるのであった。
*
「ふぅ……」
ところ変わって、ここはセネルブルグ家の厨房。
先程までケーキ作りに勤しんでいたシュージは、座って一息ついていた。
一応、ケーキ作りの経験はそれなりにあるものの、本職のパティシエという訳では無いので、今回のケーキ作りはかなり神経を使った。
ただ、個人的に練習やイメージトレーニングもしていたおかげで、納得いくものが作れたため、一安心していた。
「シュージさん、お疲れ様です!」
「後は片付けくらいなので、私達にお任せください!」
「ありがとうございます、皆さん」
そんな少し疲れた様子のシュージに、周りにいたシェフ達は気を遣ってくれ、その言葉に甘えてシュージは少し休むことにした。
「シュージ様」
と、そこへ1人のメイドさんが近づいてきた。
そのメイドさんはシュージだけに聞こえるように近くに寄り、小声で声をかけてくる。
「今から1時間ほど後の話なのですが、王妃様、並びに王女様がシュージ様との面会を希望しています。 断っても罰したりは絶対に無いそうなのですが、いかがなさいますか?」
「王妃様方がですか?」
「はい。 シュージ様の作った料理にいたく感動されたようで……」
「なるほど…… 分かりました。 お会いさせていただきますとお伝えください」
「かしこまりました」
どうやら、もう少しシュージの仕事は続くようだ。
それは白、茶色、焦げ茶色の3色をしていて、それがまるで一枚の板のように綺麗に並べられており、非常に美しいものとなっていた。
そしてもう一つ、シュミット達セネルブルグ家の者達とフローリアとルビィの元へと運ばれたのは、とても大きくて明るめの茶色をしたクリームで彩られた、立派なケーキが運ばれていった。
『皆様、こちらは我が領地で最近収穫されたカカオという豆を加工した、チョコレートという甘味でございます』
そう、今回シュージが用意した目玉食材は、チョコレートだった。
これは初めてセネルブルグ家を訪れた際に倉庫で見つけたもので、その時はまだ色々と処理が足りなかったのか、形は良くても味はひたすら苦いし、舌触りも悪くてとてもじゃないが食べれるものではなかった。
ただ、シュージは前世で働いていた食堂の自作好きの店長が、チョコも自作しようと言い出し、カカオからチョコを作った経験があったのだ。
それで意気揚々と作り出したのはいいものの、工場にあるような専用の機械がない状態だと非常に手間も時間もかかり、一応市販のものと大差無いくらい美味しいチョコレートは出来たのだが、あまりにも手間なので、結局メニューに入れるのは泣く泣く断念したという過去がある。
だが、今回はその経験が生き、これを作ったというカカオを生産しているという村の者たちに詳しい作り方を教え、ムグラなどと協力してかなり急ピッチだが完成まで漕ぎ着けたのだ。
『そしてシュミット、誕生日おめでとう。 このチョコレートケーキは、今回の誕生日の祝いとして、世界で初めて君に食べてもらいたい』
「父上……」
先程の料理達もそうだが、この展開もセルゲイのサプライズで、スッと横から現れたメイドさんが、大きなチョコレートケーキを一切れ切り分け、シュミットの前の皿へと運んでくれた。
そんなケーキを周りの貴族達が見守る中、シュミットはゆっくりと口に運んだ。
「では…… んんっ!? こ、これはっ…… 美味しすぎるのじゃ……♡!」
シュミットが幸せそうな表情でそう言った途端、ホールからは拍手が鳴り響き、改めてシュミットの誕生日を皆んなが祝ってくれていた。
『喜んでもらえて良かった。 このチョコレートは、我が領の新たな名物となるだろう! 皆さんもぜひご賞味ください』
セルゲイがそう言うと、貴族の者たちにもチョコレートケーキが配膳され、並べられたホワイトチョコレート、ミルクチョコレート、ビターチョコレートもそれぞれ口に運んでいった。
「あぁっ…… 口の中でとろける……♡ なんて幸せな甘さなの……♡」
「こっちの黒めのチョコレートは苦味が強くて、白い方は甘味が強い…… どれも違った美味しさがあるな!」
「このケーキ、スポンジが何層にもなっていて、中に薄いチョコレートが入ってるわ!」
そうしてチョコレートを口に運んだ者達は、すぐにその美味しさにノックアウトされた。
「これは良いものですね…… 間違いなく、今まで食べてきた甘味の中で、最上級と言えるでしょう」
「これ、すごく美味しいです~♡」
それは王族であるフローリアとルビィも例外ではなく、噛み締めるように大事にケーキを頬張っていた。
『今回、こうして提供したチョコレートですが、量産の目処も立っておりますので、そう経たずして販売もできると思います。 それに、制作者の意向で、更なる味や種類の改善も進んでいきますので、楽しみにしていてください。 本日はお帰りの際に手土産として、そちらのホワイト、ミルク、ビターチョコレートの詰め合わせを保冷機能のついた箱に入れてお渡しします。 チョコレートは熱に弱いので、各自の家に帰ってからどうぞご家族とお楽しみください』
そんな大盤振る舞いなセルゲイの言葉に、貴族達は色めき立ち、再びホール内は拍手に包まれるのであった。
*
「ふぅ……」
ところ変わって、ここはセネルブルグ家の厨房。
先程までケーキ作りに勤しんでいたシュージは、座って一息ついていた。
一応、ケーキ作りの経験はそれなりにあるものの、本職のパティシエという訳では無いので、今回のケーキ作りはかなり神経を使った。
ただ、個人的に練習やイメージトレーニングもしていたおかげで、納得いくものが作れたため、一安心していた。
「シュージさん、お疲れ様です!」
「後は片付けくらいなので、私達にお任せください!」
「ありがとうございます、皆さん」
そんな少し疲れた様子のシュージに、周りにいたシェフ達は気を遣ってくれ、その言葉に甘えてシュージは少し休むことにした。
「シュージ様」
と、そこへ1人のメイドさんが近づいてきた。
そのメイドさんはシュージだけに聞こえるように近くに寄り、小声で声をかけてくる。
「今から1時間ほど後の話なのですが、王妃様、並びに王女様がシュージ様との面会を希望しています。 断っても罰したりは絶対に無いそうなのですが、いかがなさいますか?」
「王妃様方がですか?」
「はい。 シュージ様の作った料理にいたく感動されたようで……」
「なるほど…… 分かりました。 お会いさせていただきますとお伝えください」
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どうやら、もう少しシュージの仕事は続くようだ。
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