マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#68魚の煮付けは至高なのです

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「これは思い切りましたねぇ」

「ふふ、シュージさんのせいでもあるんですよ?」


 沿海州に来てから数日が経ち、いつものように食堂に向かうと、そこにはシュージが持ってきた2台の炊飯器に加え、新たに3台の炊飯器が置かれていた。

 パナセア曰く、潮騒の花のメンバーからもっとライスが食いたいというリクエストが止まらなかったらしい。

 なので、懇意にしている商会や組合のツテを使って購入してきたそうだ。


「かくいう私も、シュージさんの作る料理はとても好きですから、文句はありませんし、シュージさんが帰っても必要になりますから」

「そう言ってもらえると、色々と作って良かったと思えますね」

「なので、今日からはライスを沢山使う料理でも大丈夫ですよ」

「はは、分かりました。 今日の夕食はライスが進む料理にしましょう」

「ふふ、楽しみです」


 そんなやり取りをしてからすぐに時間も経ち、現在夕飯時。

 ライスが進む料理という事で、今日作ることにしたのは煮付け料理だ。

 やはり、魚の煮付けは魚料理の中でもかなり万人受けする調理法だとシュージは思っている。

 だが、残念な事にこちらの世界では煮付けという調理法は無いらしいので、この機会に覚えてもらうつもりだ。

 という事で、今回使う魚はカレイとブリにする。

 どちらも煮付けにしたら非常に美味しい魚なのだが、ブリはともかくカレイはあまり人気がない魚だそうなので、ぜひこれも美味しい魚だと知ってもらいたい。

 と、そろそろ調理を始めようかというタイミングで、来客があった。


「あ、お父さん!」

「おう! 今日はこっちで飯を食おうと思って来たぞ!」


 来たのはセリアの父親で、この街の漁業組合の組長であるリンドだった。

 どうやらリンドは、週に何回かは娘と妻がいる潮騒の花でご飯を食べるらしい。

 まぁ、夜になったらパナセアもセリアもリンドも、ギルド近くにある自分達の家に帰るので、毎日ちゃんと顔を合わせてはいる。

 そんな感じなので、皆んな特に驚いたりもせず、リンドの事を迎え入れていた。


「今日は早いね?」

「折角ならシュージがどんな料理を作るのか見てみたくてな。 見学しててもいいか?」

「もちろんですよ」


 今日はセリアとミドリに加え、リンドも厨房に入ってきた。

 リンドもそれなりに料理はできるそうだが、セリアには全然及ばないそうなので、今日のところは大人しく見ているそうだ。


「では、下処理からですね。 まずはカレイとブリの鱗を取っていきましょう」


 今回はカレイもブリも丸々1匹買ってきたので、捌くところからだ。

 まず、カレイもブリも鱗がそれなりに付いている魚なため、鱗かきでしっかりと鱗を落としていく。

 それが済んだら、まずはブリのエラ蓋をこじ開け、エラの外周を切り落としたら、エラを掴んで内臓ごと取り除く。

 あとは血ワタなどの汚れを掃除して水洗いをしたら、手早く3枚におろして切り身にする。

 続けてカレイの方も同じように内臓を取り出すのだが、カレイには苦玉という人間でいう胆嚢にあたる部位が存在していて、これを破いてしまうと身に苦みが付いてしまうので、そこに注意して捌くのが大切だ。

 それにさえ気をつければそこまで捌くのは難しくないので、しっかりとおろしてこちらも一人前サイズに切り分ける。


「お? 卵は取らないのか?」

「はい。 卵も使いますよ。 こちらではあまり魚卵は食べないそうですね?」

「まぁ、特別美味いもんでもないしなぁ」

「意外とそんなこともないですよ? しっかり調理すれば魚卵も美味しいものが沢山あります」

「ほう? そいつは楽しみだな」


 好き嫌いは別れるが、シュージは魚卵はかなり美味しいと思っているタイプだ。

 もちろん、見た目や食感が苦手という人もいるのは理解しているので、食べるのを強いたりはしないが。

 そんな会話も挟みつつ、一旦カレイには臭みを取るために塩を振って置いておき、ブリの方は沸騰したお湯にサッとくぐらせて冷水に取って軽く洗い、こちらも臭みを取っていく。

 そして、大根を取り出して皮をむいて乱切りにしたら、沸騰させたライスのとぎ汁で茹でる。


「なんでライスのとぎ汁で茹でるんですか?」

「こうすると、大根から出るアクを包み込んで戻らないようにしたり、大根ととぎ汁の成分が反応して、甘みが引き立つようになるんです」

「へぇ…… 勉強になります」


 それからしっかりと大根に火が通ったら、取り出して水気を切る。

 その大根をブリの切り身と一緒に、水、醤油、みりん、砂糖、おろししょうが、和風出汁を入れて煮立たせた鍋に入れ、落とし蓋をして20分ほど煮詰めていく。

 そしてカレイの方は、身からかなりの量の臭みが入った水が抜けてきたので、それをしっかりと拭き取り、ブリと同じように沸かしたお湯にサッとくぐらせて、冷水に取って軽く洗っておく。

 そうして下処理を終えて臭みや汚れの取れたカレイを、水、酒、みりん、醤油、砂糖、しょうがを入れたフライパンに入れ、こちらも煮詰めていく。

 それらを煮詰めている間に、レタスやサラダを切って青じそドレッシングをかけたサッパリとしたサラダも作っておく。

 煮付け料理は味が濃いので、こういった酸味の強いドレッシングのサラダが合うだろう。


「うおっ、すげーいい匂いしてきたな?」

「食欲そそりますよね」

「そうだな。 にしてもシュージは、とにかくたくさんの調味料を使うんだな? 見たことない調味料も結構あったし」

「こちらの方では基本一つですものね。 調味料に関しては、この街の商会でも最近売り出し始めたと思いますよ」

「あー、言われてみると知らない調味料売ってたっすね。 何に使うか分からなくて、買ってなかったっすけど」

「お、そうこうしていたらいい感じですよ」


 そう言いながらブリの方の鍋を開けると、そこにはしっかりとブリにも大根にも煮汁が染み込んでおり、とても美味しそうなブリ大根が出来上がっていた。

 そして、カレイの方も同じように煮汁が染み込んでおり、匂いからもう美味しそうなのが伝わってくる。

 その頃には他のメンバーも集まってきて、厨房から漂う食欲をそそる匂いに皆んな早く出てこないかなとソワソワしていた。

 そんな皆んなを待たせるのも悪いので、手早く器に料理を盛り付け、一人一人に渡し、ライスは各自で食べたい分をお茶碗に盛ってもらった。


「今日はカレイの煮付けとブリ大根という料理です。 炊飯器が来たので、ライスのお代わりもぜひどうぞ。 では、いただきます」


 シュージの説明が終わると、皆んな一斉にご飯を食べ始めた。


「おお! これは美味いな!」

「魚に味が染み込んでて美味いっすね!」

「大根も甘辛くてとても美味しいですね」


 すると、食べた者達から続々と絶賛の声が上がってきた。

 その言葉通り、しっかりと時間をかけて煮込まれたカレイは口の中でとろけるくらい柔らかくて美味しいし、ブリ大根もしっかりと下処理をしたおかげで臭み一つ無く、味の濃い料理なのにどんどん端が進んでしまうくらいには食べやすく出来ていた。

 すると当然、ライスの消費量も比例するように増え、お代わりをする者が続出した。


「ふふ、炊飯器増やして正解でしたね」

「お前が炊飯器が欲しいって言ってたのはこのためだったんだな」

「今ならあなたも理由がわかるでしょう?」

「ああ。 これから沿海州では炊飯器が飛ぶように売れるだろうな。 こんな美味いもん食わされたら、明日の試食会も楽しみになっちまうよ」

「はは、お手柔らかにお願いしますね」


 以前話していた試食会もついに明日に迫っているが、準備はもうほとんど済ませておいたので、成功を願いつつ、目の前の美味しいご飯を堪能するシュージ達であった。
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