マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#75 甘くてほろ苦いガトーショコラ

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「シュージ、荷物が届いてるわよ」

「ああ、ありがとうございます。 今行きますね」


 アンネリーゼにそう言われてギルドの入口に行くと、かなりの量の荷物が届いていた。

 それは以前シュージが関わったセネルブルグ家から送られてきたものだった。

 中身は色んな地域から集められた沢山の食材で、見たことある物から無い物まで、それはもうすごい量だ。

 運ぶのも大変そうな量ではあるものの、シュージは箱から開けてそれが何かをカタログで確認しつつ、自分の収納袋にしまっていく。

 ここに入れておけば数日で傷んでしまうような食材でも、数ヶ月は保つようになるので。


「おっ、これは……」

「それは何ですの? シュージ」

「これはチョコレートというお菓子ですね。 ……うん、前よりも美味しくなってます」


 その中にはシュージが教えてさらに改良されたチョコレートも入っており、同封されていたシュミットからの手紙によると、もう間もなく商会を通して販売できそうとのこと。

 あと、良ければまた顔を出して欲しいとも書かれていたので、その内また行かなきゃなと、のほほんと考えるシュージだった。


「アンネリーゼさんも一つどうぞ」

「あら、それなら一つ。 ……んん! こ、これは美味しすぎるわ……!」

「チョコ美味しいですよねぇ。 あ、そうしたら、今日のおやつはチョコを使って何か作りますか」


 蒼天の風では頻繁におやつの時間が設けられていて、(主に女性陣の要望により)今日も何か作ろうと思っていたシュージは、早速厨房に向かうのであった。

 ちなみに、暇だからと言ってアンネリーゼも付いてきてくれた。


「何を作るんですの?」

「簡単に作れるチョコケーキを作ろうかと」

「ケーキを簡単に?」

「簡単と言っても、1時間くらいはかかりますけどね。 まずはチョコを溶かす作業からしましょうか」


 始めに、チョコレートを細かく刻んでバターと一緒にボウルに入れ、湯煎にかけていく。

 ゆっくりゆっくりヘラで優しく混ぜながら溶かし、それが済んだら砂糖と練乳を投入し、再び混ぜる。

 それがよく混ざったら,今度は溶き卵を入れ、これまた混ぜる。


「混ぜる作業が多いわね」

「一気に入れても多分そこまで問題はないんですけど、細かく入れた方が美味しい気はするんですよね」


 アンネリーゼと交代交代でしっかりと生地を混ぜ終えたら丸い型に流し込んで、あらかじめ温めておいたオーブンに入れてしばらく焼いていく。


「後は待ちの作業ですね」

「手順自体は本当に簡単なのね」

「お菓子作りはハードル高いと思われがちですけど、意外と簡単にできるものも多いですよ」

「シュージはすごいわね。 こういうのをこの前、セネルブルグ家でもしてきたんでしょう?」

「そうですね」
 
「貴族相手に緊張とかはしなかったの?」

「うーん、そこまでは無いですかね? もちろん、侮ったりしてるわけでは無いですが、緊張してもそんな良いことありませんし」

「ふふ、強いのね」


 アンネリーゼはそう言うと、少し表情を真剣なものに変えた。


「……私もね、元々貴族の生まれなの」

「おや、それは初耳ですね」

「一応、他のメンバーは知ってるわ。 毎回、新しいメンバーが来たら私から言うの」

「なるほど」

「それで、私の家は既に取り潰しになっているの。 それは私の両親が貴族としてあるまじき、脱税や裏での工作に手を染めたことが明るみになったから」

「その言い方だと、アンネリーゼさんは関わっていなさそうですね」

「ええ。 私はその頃、貴族の子息子女が通う学院で寮にいましたから、話を聞いた時は本当に寝耳に水でしたわ。 まさか両親がそんなことをしているなんて」


 そう語るアンネリーゼの表情は、話の内容にしてはそこまで暗いものでは無かった。

 恐らく、彼女の中では一区切りもうついているのだろう。


「悪事が明るみになったことで貴族位は剥奪。 財産は没収され、あるべき場所へ戻された。 両親は賠償金を背負い、この国のどこかでそれを返すべく、奉仕作業をしているそうですわ」

「正直な事を言ってしまうと、少し処分が甘いような気もしてしまうのですが……」

「まぁ、貴族からしたらそこまで騒ぐほどの損害でもなかったみたいだから、死罪にするほどではないとの判断だそうよ。 贅沢三昧の暮らしだった両親からしたら、今の状況は死よりも辛いかもしれないけれど」

「なるほど」

「私はそんな両親から、よく言えば放任主義、悪く言えば育児放棄されて育ったから、両親に対して残念ながら良い感情はないわ。 多少悲しく、情けなくはなったけど」

「苦労したんですね。 アンネリーゼさんは特に処罰などは受けなかったんですか?」

「しっかりと王家が調査して、私は何も関わっていない事が証明されたから、貴族位の剥奪だけで私の処罰は済んだわ。 ただ、経過観察として、このギルドで冒険者をする事を命じられたの」

「そういう経緯でここに来たんですね」

「これでも私は、貴族学院では成績トップで、現役の宮廷魔法使いを含めても、この国で5本の指には入るくらいの魔法使いだから、遊ばせておくには惜しかったのもあったんじゃないかしら?」

「おお、流石ですね」

「ふふ、ありがとう。 まぁ、ここへ来た時はまだ気持ちの整理ができてなくて、今思うと結構酷い態度を取っていたと思うけど、ギルマスやキリカ、他のメンバーもそんな私にとても良くしてくれて、気付いたらこのギルドが私の居場所になってたわ。 おかげさまで、もう経過観察期間も終わって自由の身なの」

「それは良かったです」

「これが私がここに来た理由よ。 もうとっくにシュージの事はこのギルドの仲間として認めてて話したかったけど、中々機会が無かったから」

「そう言ってもらえると嬉しいです。 話してくれてありがとうございました」

「シュージも簡単に受け入れてくれるのね」

「どういう事です?」

「普通、元貴族とか犯罪者の娘と聞いたら、態度が少し変わったりするものでは無くて?」

「うーん、まぁ、アンネリーゼさんはアンネリーゼさんですからね。僕は今、目の前にいるアンネリーゼさんの事を、同じギルドの大切な仲間だと思ってますから、過去がどうであれそれで態度を変えたりする必要はないかなって」

「……ほんと、このギルドのメンバーは揃いも揃ってお人好しばかりね」

「はは、それは確かにそうかもしれませんね。 ……お、ケーキもいい感じに焼き上がりましたよ」


 色々と話していたら、オーブンに入れていたケーキがいい感じになっていたので、冷蔵庫でしっかり冷やしたら、お手製ガトーショコラの完成だ。


「どうぞ、アンネリーゼさん」

「ありがとう。 ……んっ! 凄いしっとりしてて、深みのある甘さね。 とっても美味しいわ」

「やっぱりチョコケーキは良いですねぇ」

「……ふふ」

「おや、どうしました?」

「シュージは料理を作る時も楽しそうだけど、美味しいものを食べてる時、とても幸せそうな顔をしているから、ちょっと可愛らしくて」

「そんなに緩んでましたか?」

「ええ。 それはもう」

「それはちょっと恥ずかしいですねぇ」

「いいのよ、シュージはそのままで。 人間、ありのままでいるのが1番いいわ」

「それもそうですね」


 今日もまた一つ、仲間の事を深く知れ、改めてここはいい場所だなと再認識するシュージなのであった。

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