マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#115 食事会の終わり、そして後日談

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「ふぅ」

「シュージ殿、怪我はないか!?」

「あっ、オリオン様。 大丈夫ですよ。 オリオン様やエヴェリーナ様、あと陛下や他の方々も大丈夫でしたか?」

「ああ、君達のおかげで誰一人として怪我人はいないよ」


 オリオンがそう声をかけてくれた間に、突然の襲撃をしてきた犯人達は、兵士達に連行されていった。


「本当に済まなかった。 持ち物の検査などはしているはずだが、どうにかしてすり抜けて来たらしい」

「いえいえ、お気になさらず。 狙われるような事をした僕のせいでもありますから」

「貴殿は本当に出来た人間だな……」

「ふむ…… ネームレス公爵?」

「は、ははははいっ!? な、何でございましょうか、陛下っ!?」


 シュージがオリオンに謝られているすぐ横では、皇帝アレキサンドルが会場の隅っこで縮こまっていたネームレス公爵を呼び寄せた。
 

「確か、今回の会場の警備は其方も兼任していたな?」

「そ、そうでございます……」

「皇家の近衛達がこのような失態をするとは考え難いのだが、何か知っているかね?」

「い、いえ、私は何も…… 警備の者達には罰を与えておきますので……」

「そうか」


 アレキサンドルは冷たい目でそう一言言い放ち、ネームレス公爵から目線を外した。

 その態度は明らかにネームレス公爵を疑っているものだったが、この場では確たる証拠は無いのでそれ以上詰める事はしなかった。

 だが、その皇帝の態度と、ネームレス公爵の血の気が引きすぎて青を通り越して真っ白になっている顔色を見て、周りの者達もネームレス公爵から自然と距離を取っていた。


「シュージ殿、このような素晴らしい料理を用意してくれた其方に、仇を返してしまった事を我からも深く謝罪する」

「ああ、そんな、畏れ多いです。 私は気にしておりませんので、どうか頭をお上げください」

「其方の寛大な心に感謝しよう」

「イザベラ殿、ボリー殿も本当にありがとう」

「いえいえ。 まぁ、私達がいなくともシュージなら何とか出来そうだったけどねぇ」

「……確かに。 シュージは強い」

「いやいや、そんな事ないですよ。 いち早く駆け付けてくれて本当に嬉しかったです」

「さて、このようなことが起きてしまった以上、この場はこれでお開きにしよう。 ……まだ残党がいる可能性もあるからな」

「……っ!?」


 そうオリオンはネームレス公爵の方をチラリと見てそう言った。

 周りの参加者達も、こんな素晴らしい会がこのような形で終わってしまうのを残念そうにしていた。


「皆様、本日はありがとうございました。 また今度、同じような会を開く事もきっとあると思いますから、また会いましょう」

「我からも少し。 今回の会は非常に心を動かされた。 今回の騒動の詫びとは別として、シュージ殿が販売しているレシピや商品などをそう遠く無いうちにも我が国で扱う事をここに誓おう」


 そうアレキサンドルが宣言すると、会場にいる者達が一斉に賛同の意を示す大きな拍手を送った。


「我が国は長年変化のない国だったが、良い機会かもしれない。 もちろん、我が国が他国に誇れるものは残しつつ、より良く昇華させられるものを改めて検討もしていこう」

「父上……! ありがとうございます!」


 こうして、オリオンが望んでいた以上の結果を以て、帝国での食事会は幕を閉じるのであった。



 *



「シュージさーん、お手紙ですよー」

「おや、ありがとうございます、キリカさん」


 帝国の食事会から数日経った頃。

 シュージにオリオンからの手紙が届いた。

 内容は食事会についての改めての感謝と、シュージに対する襲撃事件の犯人が自供し、ネームレス公爵の仕業であるという証拠が掴めたという報告で、その尋問方法についてシュージが提案した事が見事に効果を成したそうだ。


『捕まえたのはいいが、果たして口を割るかどうか……』

『僕の故郷では取り調べで敢えて美味しいものを食べさせるという逸話みたいなものががありましたねぇ』


 そんな何気ない会話と共に、折角ならとカツ丼のレシピを教えて帝国のシェフが作り、それを数日まともな食事を与えなかった犯人達に出して、「お前達はこんなに美味しい料理を作ってくれる料理人を襲ったんだぞ」と良心に訴えかけたら、カツ丼を泣きながら頬張りつつ全て自供したそうだ。

 手紙にも「改めて食事の大切さを知ったよ」と書かれていた。

 流石に皇族達もいるパーティーを襲って無罪というわけにもいかず、本来なら実行犯達は死罪になってもおかしく無かったのだが、公爵からの逆らえない命令だった事、そして本人達が心から反省しているという事で、数年の鉱山などでの無償労働で刑は手打ちになったそうだ。

 それに対しては頑張って更生して欲しいと思うシュージだった。

 そして、ネームレス公爵に関しては、まず爵位剥奪は確定で、多額の借金を科せられ強制労働にさせられるそうだ。

 帝国には死罪になった方がマシと思えるぐらい過酷な環境の収容所があるらしく、そちらに入れられるとのこと。

 それで、ネームレス公爵の動機だが、どうやら彼は上質な砂糖や蜂蜜を独占販売…… しかもかなりの暴利を貪っていたようで、皇家にバレないよう報告書の改竄、養蜂場への支援金の着服など、詳しく調べたらもう余罪が出るわ出るわで、恐らく一生働いても返せない額の借金が科せられるそう。

 それに関してはもうシュージをして自業自得だと思わざるを得なかった。

 多くの人を不幸にした上で成り立つ幸せなど、自分は願い下げだなとも思いながら。


「シュージさん、今日のおやつはなに作ってるんですか?」

「ああ、これはフレンチトーストというものですよ。 帝国から帰る際に、上質な砂糖や蜂蜜、あとシロップなんかも沢山頂いたので、それを使った甘い料理です」

「わぁ、楽しみです!」


 食事会の後、少しオリオン、そして皇帝のアレキサンドルとも改めて話して、食事会の感謝と襲撃の謝罪、そして今回の礼として帝国の特産品を沢山貰ってきたのだ。

 片付けや襲撃事件の調査など色々あり、あんまり深く言葉は交わせなかったが、ぜひまた来て欲しい、ウチのシェフ達にも料理を教えて欲しいと言われたので、王国と同じように定期的に帝国の城にもまた行くことになるだろう。

 今回の帝国の一件で、着実にこの世界に来た使命を果たせている事を改めてシュージは実感し、満足感に浸りながら今日も楽しく料理をこなしていくのであった。
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