マッチョな料理人が送る、異世界のんびり生活。 強面、筋骨隆々、非常に強い。でもとっても優しい男が異世界でほのぼの暮らすお話

かむら

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#248 身も心も温まるかきたまうどん

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「ふぅ、ひとまずは安心ですかね」

「そうですね」


 蒼天の風の空き部屋のうちの一つ。

 そこにはリリスの母親で、リリスに名を聞いたところ、クリスという名前の魔族の女性が、すぅ…… と落ち着いた寝息を立てて眠っていた。

 先程まで近くの診療所の医者に往診をしてもらい、数日寝たきりだという事で点滴を打ってくれた。

 ただ、その医者もクリスの症状については分からないそうで、また後日来るまでに少し調べてみると言ってくれた。


 ――コンコンコン


「シュージ、入るぞ」


 そんなノックの音の後に部屋に入ってきたのは、我らが蒼天の風のギルドマスターであるジルバートと、ディアナ、イザベラの3人だった。


「ジルさん、お疲れ様です」

「ああ。 それで、話はある程度聞いている。 魔族の親子を保護したと」

「はい。 ただ、症状の原因がグレースさんやお医者さんでもよく分からないそうで。 皆さんは何か知っていますか?」

「済まないが俺は分からないな」

「私も。 魔族に会った事は本当に数えるぐらいしか無いし、会った人は皆んな元気だったから、病気の事は聞いた事ないな」

「私も分からないねぇ」

「そうですか……」


 この物知りな3人でも分からないとなると、いよいよ原因を突き止めるのは無理かもしれないとシュージは思ってしまう。


「ただ、やれる事はある」

「本当ですか?」

「ああ。 知り合いに魔族の冒険者がいるから、そいつに聞けば原因が分かるかもしれない」

「えっ、ジルバートの知り合いの魔族の冒険者って、あの子でしょ? どこにいるか知ってるの?」

「……それは分からん」

「だよねー…… あの子、気分屋だし、住処とか無いし、今頃世界の何処かでふよふよ漂ってるんじゃない?」

「だが、魔国から外に出てきている魔族など、俺はあいつしか知らない」

「それに、皆んな素性は隠してるからね。 私が会ったことある人も最後に会ったのは何十年前とかだし、全員今どこにいるかとか分からないや」

「だが、あいつならギルド本部が居場所を知ってるかもしれない。 たまに依頼を受けてるのは間違いないから、そこから何とか辿ってみよう」

「じゃあ、ジルバートは本部に行って情報集めてきてよ。 現地には私が行くからさ」

「私は私で文献とか漁ってみるかねぇ」

「ああ、それでいい」

「あ、あの、ありがとうっ……! でも僕、お金とか無いんだけど……」

「子供がそんなこと気にしないでいい。 困っていた者は助ける。 それが冒険者だからな」

「そうそう。 リリスちゃんだっけ? 君はお母さんの看病っていう大事な仕事があるしね」

「でも……」

「あ、もし気にしてしまうなら、僕の仕事の手伝いとかしますか?」

「お兄さんの?」

「はい。 主に炊事、洗濯、掃除といったところですね」

「お兄さん、あんなに力強いのにお掃除とかする人なの?」

「はは、実はそうなんですよ」

「それなら、手伝いたいっ。 家の家事は基本僕がやってたから、掃除とかも得意だし、料理も簡単なのならできるよっ」

「おお、即戦力ですね。 では、早速昼食を作りましょうか」

「昼食……」


 ――きゅるる~……


「あっ……」


 シュージがご飯についての話をすると、リリスのお腹から可愛らしい音が鳴った。


「おや、お腹空いてるんですね」

「あう…… その、ここ数日あんまりまともなもの食べてなくて……」

「それはいけませんね。 では、サクッと作っていきましょうか」

「うんっ。 ……お母さん、行ってくるね」


 リリスはクリスの手をぎゅっと軽く握ってから立ち上がり、その部屋を後にした。


「よし、そうしたら今日はうどんにしましょうか」

「うどん?」

「麺料理ですね。 リリスさんは種族的に何か食べれないものとかってあったりしますか?」

「いや、ないよっ」

「そうですか。 では、リリスさんはこちらのボウルに卵を割り入れて、溶いてくれますか?」

「分かったっ」


 ある程度料理はできるというリリスには卵を割って溶く作業を任せ、シュージは大鍋にたっぷりの湯を沸かし、作り置きしているうどんを収納袋から取り出して、鍋に放り込んでいく。

 鍋底にうどんがくっつかないようにたまにかき混ぜつつ、もう二つコンロを使い、一つにはトッピング用のコッコのささみ肉をお湯を沸かした鍋に入れて茹で、もう一つの方では、こちらも鍋に水を入れて、顆粒出汁、醤油、みりん、塩、あと水溶き片栗粉を少し入れて火にかけていく。


「卵溶けたよっ」

「お、ありがとうございます」

「お兄さん、凄い手際いいんだね? 僕が卵溶く間に凄い色々やってる……」

「この辺は慣れですね。 でも、リリスさんもちゃんと出来てて凄いですよ」


 料理が出来る人にとっては卵を割って溶くなんて事は朝飯前だが、あまり経験のない人は卵が上手く割れなくて殻が入ってしまったり、混ぜてる間にこぼしてしまったりするものだ。

 その点、リリスは慣れた手つきで卵を割って溶いていたので、それなりに料理ができるというのは本当のようだ。


「そうしたら、この卵をこちらのつゆに軽く混ぜながら注いでってくれますか?」

「分かったっ。 ……わぁ、ゆらゆらしてるっ」

「結構楽しいですよねぇ」


 リリスにはそのまま温めたつゆに卵を入れてかきたまを作ってもらい、シュージは茹で上がったうどんをザルに移して水を切って、器にうどん、薄切りにした茹でたささみ肉、小口切りにしたネギを盛り付けておく。


「卵全部入れたよっ」

「お、いい感じですね。 では、これをうどんにかけてと」


 それが済む頃には、リリスの方のかきたまつゆも出来上がったので、そのつゆをうどんに注いでいったら、かきたまうどんの完成だ。

 早速それを食堂まで運んでいき、一足先にシュージとリリスはうどんを食べ始めていった。


「いい匂い……! ……んっ! 美味しいっ!」

「美味しく出来ましたねぇ」

「こんな美味しい料理、初めて食べた…… お兄さんって、凄い料理人なの?」

「凄いかどうかは自分では分かりませんが、それなりに知識はありますよ。 あ、そういえば、ちゃんと名乗っていませんでしたね。 僕の名前はシュージといいます。 よろしくお願いしますね」

「えっと、シュージ、さん?」

「さん付けとかはしなくても大丈夫ですよ。 呼びやすいように呼んでください」

「じゃあ、シュージっ」

「はい。 それで良いですよ」

「シュージ、僕なんだってするから、いっぱい仕事したいっ。 あと、料理も覚えたいっ。 お母さんが目を覚ましたら、美味しいもの食べて欲しいから……」

「とても良い考えですね。 ただ、無理はしちゃダメですよ? リリスさんが無理をして調子を崩したら、折角お母さんが起きても心配されちゃいますから」

「そうだねっ。 じゃあ、疲れ過ぎない範囲で頑張る!」

「ええ、そうしましょう」


 それからシュージとリリスは美味しいかきたまうどんでお腹を満たし、それからやって来たメンバー達にリリスの事を紹介したり、リリスにギルドの案内などをしていくのであった。
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