子供の姿で転生したパティシエ、異世界で甘くて幸せな生活を送る。〜調味料や料理器具を生み出す力で、食文化を発展させます〜

かむら

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#13 魔法の練習

 ローニャを迎えてからの話し合いもひと段落し、その後はお風呂に入ったり夕食を済ませて、現在皆でリビングでのんびりしていた。

 ちなみに、夕食はオーブンを使ってグラタンを作ったのだが、初めてカスミのご飯を食べたローニャは、猫舌なのでグラタンの熱さに苦戦しつつも、感動の涙を流す勢いで美味しそうに食べてくれた。


「そうだ、カスミ。 魔法の練習してみるか?」


 すると、クリスタがおもむろにそんな事を言ってきた。
 

「魔法の、ですか?」

「ああ。 カスミは水魔法に適性があるみたいだからな」

「そもそも適性とかっていうのもよく分かってないんですけど……」

「確かにそうか。 魔法には基本の属性として、火、水、風、土、光、闇という属性があってな。 体内の魔力が魔法を使えるくらいあれば、勉強次第で魔法を使うことができる。 そして、適性というのはどの属性がその人に合っているかどうかといった感じだな」

「なるほど……」

「適性があるとないとじゃ大違いで、適性がある魔法を使うための魔力はかなり少なく済んだり、威力も上がったりする。 もちろん適性がなくても魔法は使えるが、戦えるレベルとなると適性が無いと厳しいな」

(って事は、私は水魔法で戦えるくらい魔法が使えるという事? ……でも、転生直後に出会ったあの狼みたいな魔物とかと戦える気はしないなぁ)


 平和な日本で暮らしていたカスミからすると、危険な魔物と戦うというのはあまり現実的に思えなかった。

 ただ、いざとなったら戦える手段を持っていた方が安心はできると思うので、クリスタの話を聞き逃さないようにしていく。


「カスミが練習するのは、適性のある水属性からだな。 まずは体内にある魔力を感じ取る事から始めるぞ」


 クリスタはそう言うと、カスミの手を握っておでこを突き合わせてきた。


「わっ…… く、クリスタさん?」

「最初は誰かに魔力を流してもらうのが良いんだ」

「そ、そうなんですねっ」

(うぅ、同性だけどクリスタさんかっこいいからドキドキしちゃう…… って、ダメダメっ。 今は魔力ってやつを感じ取るのに集中しないと……)


 カスミが内心あたふたしている中、クリスタはカスミと触れ合っている場所から自分の魔力をカスミへと緩やかに流していった。


「あっ、温かい……」

「その温かいのが体を巡ってるのがなんとなく分からないか?」

「言われてみると、そうですねっ」


 言われてみないと気づかないくらいの感触だが、確かに温かいものが体を流れる感触があった。


「それが魔力だ。 その魔力を自分の意思で動かして溜めて、どういう形にするかをイメージしながら放出する」


 カスミから手を離しながらクリスタはそう言うと、指先にポンッと水球を出現させた。


「自分の意思で体内の魔力を操作するのは人それぞれ感覚が違う。 エルフは魔法に長けた種族だから、私は息をするようにできてしまうから参考にはならないんだよな」

「私は流れを操作するってより、集めた魔力をボーッて燃やすイメージかな!」

「私は水が同じ場所をぐるぐる流れてるイメージ~……」

「ローニャは、ぐーってやってパッて出すにゃ!」


 レネ、フィオ、ローニャも自分なりの感覚を教えてくれたが、やはりその辺の感覚は人それぞれのようだ。


(うーん、魔力を循環…… 循環……)


 なので、カスミもとりあえず体内を巡る魔力の感覚を捉えつつ、それを自分で動かそうと頑張ってイメージしてみた。

 ただ、中々感覚を掴む事はできず、15分くらいやっていると自分がなにやってるか分からなくなってきた。


(循環…… 回す…… ぐるぐる…… かき混ぜる……)


 ドツボにハマってきたカスミだったが、不意にお菓子作りで生地をかき混ぜる光景が思い浮かんだ。


「あっ」

「お、何か掴んだか?」


 すると、急に自分の体内の魔力が認識でき、それを自分の意思でかき混ぜられるようになった。


「は、はいっ」

「よし、その感覚を保ったまま、水の球を両手の上に出すようにイメージしてみよう」

「分かりましたっ」


 カスミはクリスタに言われた通り、両手を顔の前で上に向け、水の球をそこに出すようイメージしてみた。

 すると、体の中の魔力が手のひらから放出される感覚と共に、顔の前にポンッと小さな水球が出来上がった。


「わぁっ、できました!」

「おお、カスミは飲み込み早いな」

「やった…… あっ」


 ただ、嬉しさからか気が抜けてしまい、カスミが作った水球はテーブルの上にぱしゃっと落っこちてしまった。


「あぁ、落ちちゃいました……」

「魔法を留めておいたり、放ったりするのもまた魔力操作が必要だからな。 それでも、こんな短時間で形になっただけでも上出来だ」

「カスミは天才にゃ!」

「わぁっ……! え、えへへ、ありがとうございますっ」


 どうやら中々に優秀だったようで、カスミはクリスタに褒められ、ローニャに抱っこされて頭を撫でくり回された。


「あっ、けど、凄い魔力使った気がします」

「最初はそんなものだ。 練習していけば、今の水球くらいならほぼ魔力を使わないで出せるようになる。 だから、暇な時にまた水球を出してみたり、それをその場に留めるイメージの練習だな」

「分かりました」

「もちろん、スキルと同じで練習する時は誰かの近くでやって、ちょっとでも魔力が少なくなってきたなって思ったら止めるんだぞ」

「はいっ」

(まさか私が魔法使いになれんなんて……!)


 地球人なら誰もが憧れる魔法使いに自分がなれてしまい、戸惑う気持ちもカスミにはあったが、それよりも嬉しさの方が勝った。


(練習が上手くなったら、火魔法とかも練習したいな。 水と火さえ出せれば、生活に困らなそう)


 だが、カスミ的にはそれで戦おうとは微塵も思っておらず、日々の料理とか、今後遠出をする時とかに使えればいいなくらいに思っていた。


「さて、それじゃあ今日のところは寝るか」


 魔法の練習をしていたら結構時間が経っており、クリスタがそう言うと、レネがしゅばっと手を挙げた。
 

「はい! 今日は私がカスミちゃんと寝ます!」

「って、言ってるが、カスミはいいか?」

「あ、はいっ。 大丈夫ですよ」


 クリスタの問いかけに、カスミは笑顔でそう答えた。
 

「やったー!」


 どうやらレネは、昨日クリスタがカスミと寝たというのを聞いて、羨ましかったらしい。

 カスミ的にはまだちょっと恥ずかしさはあるものの、昨日クリスタと寝た時はとても安心して眠れたので、レネと一緒に寝るのも承諾した。

 そうして、嬉しいのかニコニコ笑顔のレネと手を繋いでレネの部屋に向かった。

 レネの部屋に入ると、そこにはフルプレートアーマーと言うべき厚手の鎧と、持ち手は小さいが刃の部分が大きい大斧が置かれていて、あとはドレッサーとクローゼットといった必需品が置いてあるシンプルな部屋だった。


「わぁ、立派な武器ですね」

「私はパーティーだとタンクだからね! 戦闘の時はこれ着けるんだよー」

「えっ、レネさんがタンクなんですね」

「あー、今、小さいのにって思ったでしょー?」


 カスミの発言を聞いて、レネがジト目を浮かべながらそんな風に言ってくる。
 

「い、いや、小さいからこそ凄いなって思いましたよ?」

「お、そっかそっか。 そしたら、その内カスミちゃんの魔法の発動を助ける杖とかも作ってあげるね」

「えっ、いいんですか……?」

「私は何か作るのが趣味だからね!」

「ありがとうございますっ」


 そんな会話をしつつ、レネとカスミはベッドに上がっていった。


「ふふ、カスミちゃん可愛いねー」

「いや、私なんて…… レネさんの方が……」

「お、私の事可愛いって思ってくれてるの?」

「あっ、いやその……」

「あはは、そんな慌てなくていいのに。 嬉しいから大丈夫だよ」


 こう見えて大人であるレネに可愛いと言うのは失礼だったかなと思ったカスミだったが、レネは普通に嬉しく思ってくれたようだ。


「今日もたくさん美味しいご飯にお菓子まで作ってくれてありがとね」

「いえいえっ。 命を救われたわけですし、これくらい……」

「えー、命救われてなかったら作ってくれてないの?」

「そ、そんな事ないですっ」

「ふふ、私達もだよ。 カスミちゃんが美味しいご飯とか作れなくても、カスミちゃんと一緒にいたい。 カスミちゃんも恩返しとかは考えずに、私達だから一緒にいたいって思ってくれると嬉しいな」

「そう、ですねっ。 私も、レネさん達といるのはとても楽しいし、し、幸せなので、できれば一緒にいたいです……」

「あーん、可愛いカスミちゃんっ♡」

「わぷっ……!」


 カスミの言葉が嬉しかったのか、レネはカスミの事をぎゅーっと抱きしめていった。

 そうすると、レネは低身長ながらも中々立派な胸部装甲を携えているので、その立派な丘にカスミは顔を埋める形になった。


「これからも一緒にいようね、カスミちゃん♡」

「は、はいっ……!」


 最初はその感触におっかなびっくりといった感じのカスミだったが、少し落ち着いてくるとレネの心音がかすかに聞こえてきて、そのリズムがやけに心地よく、いつの間にか眠りの世界へと旅立っていくのであった。
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