子供の姿で転生したパティシエ、異世界で甘くて幸せな生活を送る。〜調味料や料理器具を生み出す力で、食文化を発展させます〜

かむら

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#18 朝の市場へ

 朝、カスミが目を覚ますと、目の前にはフィオの寝顔があった。

 例の如く、カスミはフィオにしっかりと抱きしめられて、しかも今日は足まで絡められており、全く身動きが取れそうになかった。


(完全に抱き枕だ…… フィオさん可愛いなぁ…… でも、フィオさんいつ起きるんだろう……)


 カスミは今日、朝の市場に行くつもりなのだが、このままフィオと寝ていたら朝ご飯を作るのが遅れてしまうので、心苦しいがフィオを一旦起こして体を離してもらうことにした。


「フィオさーん……」

「ん、んぅ……?」

「おはようございますっ。 私、これから朝ごはん作りたいので、離してもらっていいですか……?」

「んやぁ~…… まだ寝るぅ~……」


 優しくフィオを起こそうとしたカスミだったが、まだ寝ぼけているフィオは、温かくて抱きやすいカスミを離したくなくて、さらに強くカスミの事を抱きしめてきた。


「わっ…… ふ、フィオさん、顔近いっ……」


 すると、カスミとフィオの顔が頬擦りできそうなくらい近くなってしまう。


「あったかい~……」

「ああ、フィオさんー……」


 そのままフィオは二度寝の体勢に入ろうとしてしまう。

 これは寝坊コースかなとカスミが思っていると、部屋の扉がバァンと開いた。


「おはよーにゃー!」


 扉を開けて入ってきたのはローニャで、そのままの勢いでベッドにダイブしてきた。


「あったかそうにゃー!」

「わぁっ、ローニャさんっ」

「んんぅ~…… うるさいぃ~……」


 朝からハイテンションなローニャに、フィオが顔を顰めながらもぞもぞとローニャから離れようとする。
 

「カスミ、朝市行くって言ってなかったにゃ?」

「そうなんですけど、その、フィオさんがこんな感じで……」

「あー、そんなの無理やり抜けちゃって良いのにゃ。 カスミは優しいにゃー」


 今日の朝市にはローニャと一緒に行く予定だったので、どうやら起こしに来てくれたようだ。


「そしたら、フィオは離れるにゃ!」

「やぁぁ~……」


 カスミがフィオに抱きつかれて少し困ってるのを確認したローニャは、ベリっとフィオからカスミを引き剥がした。


「あぁ~…… カスミちゃん~……」

「ご、ごめんなさいフィオさん…… 朝ご飯作って来ますっ。 良かったらまたお昼寝しましょうっ」

「ん~…… 分かった~……」


 カスミが離れてしまい悲しそうにしているフィオに、ちょっと罪悪感をカスミは抱いてしまうが、背に腹は変えられないので、今度また一緒に昼寝をする約束を取り付け、フィオの部屋を後にした。


「全く、フィオは寝坊助にゃー」

「ローニャさんは早起きですね?」

「猫人は早起きなんにゃ!」


 そうして、朝から元気なローニャと共に一階に降りたカスミは、そのままキッチンに入って朝食を作っていった。

 今日はシンプルなハムエッグにトースト、野菜スティックにスキルで出したコンソメキューブを使ったコンソメスープを作ってみた。

 そして、手早くそれらを食べた後は、朝市に向かう準備をした。


「よーし、出発にゃ!」

「はいっ」

「待て、俺も行く」


 ただ、準備も終え、いざ出発しようとしたタイミングで、アネッタも付いてくる事になった。


「ローニャに財布を持たせるのはダメだ。 それに、カスミに変な事教えそうだし」

「そ、そんな事しないにゃ!」

「お前は信用ないんだ、諦めろ」

「うにゃ~……」

「あはは……」


 確かに、ローニャとカスミの2人きりだと、ローニャのギャンブル衝動が湧き上がった際に、カスミ1人では止められないだろう。

 その点、アネッタなら力づくで止められるし、最悪ローニャが振り切って賭場に行ってしまったりしても、カスミを1人きりにしてしまうことは防げるだろう。

 あと普通に、食材を買うための財布の中身がちょろまかされる恐れもあったりするので、アネッタがついてくる方が諸々の心配をしなくて済む。

 という事で、カスミはローニャとアネッタと共に市場へと向かった。

 それから程なくして辿り着いた市場は、以前昼前くらいに来た時よりも活気があり、売られている商品も多いように見えた。


「やっぱり市場は朝が一番品揃えいいにゃ!」

「そうみたいですね」


 ローニャとそんな会話をしつつ、市場に足を踏み入れたカスミは、とりあえず肉類や野菜類を中心に、ここ数日で使った分を買って補充していく。

 なお、前回はクリスタが空間魔法のストレージで収納してくれたが、今回は収納袋と呼ばれている、ストレージと同じ効果が付与された魔道具を持ってきたので、それに収納していく。

 ちなみにこの収納袋は、商人の間では必需品と言われているが、かなり価値の高いもので、その値段は一番グレードの低い、中に入れたものの時が普通に進んでしまうものでも相当なものがする。

 なお、カスミが今回持たせてもらったのは、一番グレードの高いものなので、その値段は豪邸が一軒建つくらいだそう。

 そんな貴重なものを出かける前にポイっと普通に渡されたのにカスミは驚いたが、ストレージの魔法が使えるクリスタと、魔道具が作れるレネがいれば普通に自作できるらしい。

 そんな話を聞いて、やっぱりこの家の人達は凄い人なんだなと、改めてカスミは思わされたのであった。


「私ばっか買ってますけど、ローニャさんとアネッタさんは欲しいものとかありますか?」

「俺は別に。 料理については全く分からねーし、カスミに任せる。 ま、肉とかガッツリしたもんが多いとありがたいな」

「ローニャもそうにゃけど、またカスミの甘いものが食べたいにゃ!」


 カスミの質問に、アネッタとローニャはそんな風に答えた。
 

「確かにお肉は消費が凄いのでもう少し買いましょうか。 甘いものは…… あ、あそこで果物が売ってるので、あそこで買ってそれを使った何かを作りましょう」


 カスミ的にはやっぱりビフレストの面々に喜んでもらいたいので、ローニャとアネッタが求めたものを作るために、材料をちょっと多めに買った。


「あっ…… あの店……」


 そんな中、カスミは一つの出店の前で足を止めた。


「すみません」

「らっしゃい! お、可愛い嬢ちゃんだな!」


 その出店の店主はよく日に焼けた男性で、カスミの事をニカっと笑って出迎えてくれた。


「ここ、ひょっとしてお魚屋さんですか?」

「おう、そうだぜ!」


 そう、カスミがこの出店で足を止めた理由は、店先に魚の絵が沢山置かれていたからだ。


「絵ばかりですけど、商品は……」

「ああ、商品は収納袋に入ってるよ。 この市場で店を出したての時は店先に商品置いてたが、臭えって苦情もらっちまってな。 だから、匂いがするやつは収納袋に入れて、匂いがしないこっちの袋詰めされた海藻なんかは店先に出してるぜ」

「あ、これ海藻…… わかめですね! わっ、乾燥昆布も…… こっちは鰹節だぁ……!」

「お、なんだ嬢ちゃん、詳しいな!」


 その店には、カスミがとても欲しかった海産物が沢山売っていた。

 どうやらこの街はかなり内陸にあるようで、海産物をこの町で手に入れるのは、この世界の輸送技術だと厳しいのかなと思っていたが、こうやって収納袋を駆使して海産物を売りにくる商人もいるようだ。


「とりあえず、これとこれと…… お魚は何がありますか?」

「今回持ってきたのはマグロとサーモン、カツオ、あとはデーモンフィッシュとロケットシュリンプだな」

「お魚の魔物も食べるんですねっ」


 オークなどの魔物の肉があるように、魚の魔物もこの世界では食べられているようだ。

 ただ、マグロなどの普通の魚も食べられているようなので、とりあえずカスミは切り身にしてくれているマグロ、サーモン、カツオは5人前ずつくらいの量を買い、デーモンフィッシュとロケットシュリンプという魚の魔物食材もいくつか買ってみた。

 あとは海藻類や鰹節なんかも購入し、カスミの持つ収納袋にはたくさんの海産物が一気に入ってきた。


「嬢ちゃん太っ腹だなぁ!」

「気持ち的にはもっと買いたいくらいですけど、これくらいでっ。 どちらから来られてるんですか?」

「海沿いのハンソンって街からだな。 この世界でも有数の港町だぜ!」


 やはり海産物は新鮮なものが一番だとカスミは思っているので、獲れたての海産物が手に入るであろう港町に興味が沸々と湧いてくる。

 こうして、先日のライスを売っていたマキが住む村、メッコ村に続き、またまたカスミにとって行きたい所が増えてしまった。


「良い所だぜ! 魚が好きなら特にな! 正直言っちまうと、いま嬢ちゃんに売ったものより断然新鮮で美味いし、他にも色々と海産物が売ってる!」

「行ってみたいです……! あ、そういえば、こちらのお魚って生でも食べられますか?」

「おっ! 嬢ちゃん生で魚イケる口かぁ! ああ、もちろんいけるぜ! 寄生虫とかチェックする魔道具で確かめてるから、間違いないぞ!」

「そうなんですね」

「ハンソンでは普通に生で魚食うんだが、こっちの方じゃ広まってなくてなぁ。 生で食えるって言っても、皆んな顔を顰めるんだ」

「馴染みのない人はそうですよね……」

(まだまだその辺の常識とかもよく分からないからあれだけど、色々と落ち着いてきたら色んな場所に行ってみたいな)


 内心でカスミはそんな風に思いつつ、魚屋の店主に別れを告げ、その後もアネッタとローニャと共に買い物を楽しむのであった。
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