子供の姿で転生したパティシエ、異世界で甘くて幸せな生活を送る。〜調味料や料理器具を生み出す力で、食文化を発展させます〜

かむら

文字の大きさ
42 / 52

#42 王城の料理人

 謁見のために王城を訪れてから一夜明け、今日も今日とてカスミは王城へとやってきていた。


「気が進まねーな……」

「あはは…… 付き添いありがとうございます、アネッタさん」


 今日はアネッタがカスミの付き添いとして来てくれているのだが、堅苦しい場が好きじゃないアネッタは、ちょっとげんなりした様子だった。


「まぁ、今日は別に王族と話すってわけじゃないんだろ?」

「そうですね。 今日は王城の料理人の方々と顔合わせして、現状決まってるメニューの共有と試作が目的です」

「ならまだいいか」


 カスミの言葉通り、今日は王城の料理人達との顔合わせが主な目的なので、堅苦しい場などは特にない予定だ。


「あ、カスミさん」


 それからカスミとアネッタが王城の前まで辿り着くと、そこにはシクウがいた。


「シクウさん!」

「お疲れ様です、カスミさん。 アネッタさんはお久しぶりですね」

「ああ」


 シクウとアネッタはお互い顔は知ってるくらいの仲なので、挨拶は少しよそよそしかった。


「昨日の謁見で話された内容はある程度聞きました。 正式に第二王女殿下の誕生日パーティーを担当することになったそうで」

「そうなりましたね」

「改めてよろしくお願いします。 今日はこれから王城の料理人達と料理をすると聞きましたので、以前教えてもらったメニューに必要な分の食材は用意しておきました」

「ありがとうございます!」


 できる商人であるシクウは、既に今日必要になる食材を運び込んでくれたそうで、カスミはそれに対してお礼を告げた。


「折角なら私も途中までになると思いますが、付き添っても良いですか?」

「もちろんですっ」


 カスミとしては王城内でも顔が利くシクウがいてくれるのはとても心強いので、その申し出を喜んで承諾した。

 それから早速、カスミ、アネッタ、シクウは王城の門を潜り、待っていた城勤めのメイドに連れられ、王城の料理人がいる厨房に向かった。


「こちらになります」


 メイドに促され、カスミ達が厨房に入ると、そこには15人程の王城の料理人達が並んでいた。


「ようこそお越しくださいました。 私はここの料理人達をまとめる料理長をしております、ムッダと申します」


 その中でも一番前に立っている、まるで戦士のような厳つい体格をした、料理長のムッダが代表して挨拶をしてきた。
 

「初めまして、カスミと申しますっ」


 カスミがそう挨拶を返すと、ムッダの後ろに並ぶ料理人達は、カスミの可愛らしさに笑顔になる者、こんな子供が料理を教えられるのかと、不安そうな顔を浮かべる者に反応が別れた。

 ただ、カスミとしては、今の子供の姿だと、最悪話を聞いてもらえないかもしれないと思ってたので、とりあえず話は聞いてもらえそうで一安心していた。


「今回は第二王女殿下の誕生日パーティーに出す料理の指南をしていただけると聞いております」

「はいっ」

「王からの命ですので私としてはそれに従うのみ…… ですが、若い者の中には、カスミ殿に対して不安を抱いている者も多いようです」


 ムッダはそう言いながら、ちょっと鋭い目線を後ろの料理人達に向けた。

 それを受けたカスミに不信感を抱いている者達が、気まずそうに目線を逸らした。


「いきなり皆さんの立場を奪うような形になりましたから、当たり前の反応だと思ってますっ」

「カスミ殿はその歳で礼儀や建前を理解していて素晴らしいですな」


 ムッダは強面な印象を受けさせる顔を少し綻ばせながら、カスミに対してそんな風に言う。


「ですので、私がどんなものを作るのか知ってもらえるものを作ってきましたっ」


 カスミはそう言うと、腰に付けた収納ポーチから、用意してきたものを取り出し、厨房にあった手頃な皿を貸してもらい、その上に載せた。

 そうして皿に載せられたのは、薄い黄色の円柱形の物体で、集まってきた王城の料理人達も、それを見てなんだこれはと首を捻った。


「カスミ殿、これは?」

「こちらはパーティーにも出そうかと思ってるスイーツです。 切り分けますね」


 ムッダを始めとした王城の料理人達からの注目を集める中、カスミはその円柱状のものを切り分けていく。

 すると、その断面は見えていた薄黄色の生地が渦巻状になっており、それと隣り合うように、真っ白なクリームが渦巻状に内側に塗られていた。


「おお、これは……」

「こちらはロールケーキというものになります。 ぜひ食べてみてください」

「カスミ、俺のもあるか?」

「私も欲しいですね」

「ふふ、もちろん用意してますよ」


 それから王城の料理人達だけでなく、アネッタとシクウの分も用意して、早速皆でそのロールケーキを口に運んでいった。


「な、なんだこれは……!」

「お、美味しいーっ♡!」


 すると、そのロールケーキを一口食べた瞬間、王城の料理人達は全員が感嘆の声を漏らした。


「おお……! しっとりとしていて舌の上で溶けていく柔らかい生地に、確かな甘さがあるのに全くくどくないクリーム……! なんて一品だ……!」


 その中には当然、料理長であるムッダも混ざっていて、これまで自分達が食べたり作ってきたスイーツはなんだったのかと思うと同時に、カスミの確かな料理人としての実力を、一口で思い知らされた。


「んー、やっぱカスミの作る甘いもんは美味いな」

「以前食べさせてもらったケーキと同等のスイーツ…… カスミさんは底が知れませんね」

「えへへ…… ありがとうございます」


 アネッタとシクウにも当然ながら絶賛してもらえ、カスミは照れつつも嬉しそうな表情を浮かべた。


「カスミ殿。 お見それしました。 改めて、私達にカスミ殿の料理を教えていただきたい」


 そして、ロールケーキを食べ終えた王城の料理人達は、カスミに向き直って深々と頭を下げながら、料理指南を請うてきた。

 そこには、先程まで侮っていた者達の姿はなく、ただただ料理が上手くなりたいという強い熱意が感じ取れた。


「ああそんなっ。 頭なんて下げないでいいですよっ。 ちゃんとお教えしますのでっ」


 ただ、カスミからすると、そこまでされると逆に申し訳なくなってしまい、オロオロしながら王城の料理人達の顔を上げさせた。


「で、では、気を取り直して、パーティーに出す料理の打ち合わせをしましょう」


 そうして、カスミの腕を理解した王城の料理人達に、カスミは現状考えている料理のレシピが書かれた紙をテーブルに広げ、手に取らせた。


「ほう、これは……」

「見たことのない料理ばかりですね」


 そのレシピを見た王城の料理人達は、見たことのない調理工程や材料に興味津々だった。


「特に調味料がよくわからないものが多いと思うんですけど、これは私とシクウさんが協力して作ったもので、その内シクウさんの商会から売り出される予定ですっ」


 レシピに書かれた聞き慣れない調味料に関して、カスミはそのように説明をした。

 一応、それらの調味料がカスミのスキルで生み出せるということは、王城の料理人達にも秘密にすることにしている。

 カスミに関しての緘口令は王族から敷かれているものの、必要以上に情報を公開する必要はないとクリスタに口酸っぱくカスミは言われているので。


「今日はいくつかの調味料と材料を用意しましたので、早速いくつかの料理を作ってみましょうか」

「「「はいっ!」」」


 それからカスミは、王城の料理人達と一緒に、ミーユイアの誕生日パーティーに出す料理の練習をするのであった。
感想 10

あなたにおすすめの小説

空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される

木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。 婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。 やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。 「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。

「お前の味付けは田舎臭い」と追放された宮廷料理番——翌月の晩餐会で、王宮から料理が消えた

歩人
ファンタジー
マルガレーテは宮廷料理番の家系に生まれた令嬢。「素材の声を聴く」調理法で、食べる人の体調に合わせた料理を作る。 だが婚約者フリードリヒは流行の分子美食学に傾倒し、彼女の料理を「田舎臭い」と蔑んだ。 追放されたマルガレーテが去った翌月の大晩餐会、新しい料理人の華やかな料理は見た目だけ。 賓客は一口食べて顔をしかめ、「前の料理番はどこだ」と問う。 一方マルガレーテは、小さな食堂で「本物の味」を求める人々に囲まれていた。 「お口に合わないのでしたら、どうぞお帰りくださいませ」

契約結婚から始まる公爵家改造計画 ~魔力ゴミ令嬢は最強魔術師の胃袋をつかみました~

夢喰るか
恋愛
貧乏男爵令嬢エマは、破格の報酬に惹かれて「人食い公爵」と恐れられるヴォルガード公爵邸の乳母に応募する。そこで出会ったのは、魔力過多症で衰弱する三歳のレオと、冷酷な氷の魔術師ジークフリート。前世の保育士経験を持つエマは、自身の「浄化魔力」で作った料理でレオを救い、契約結婚を結ぶことに。エマの温かさに触れ、ジークフリートの凍りついた心は次第に溶けていく。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

「子守唄しか能がない女は要らぬ」と追い出された令嬢——3日後、王宮から眠りが消えた

歩人
ファンタジー
リディアは「眠りの歌い手」——声で人の精神を調律し、安らかな眠りに導く宮廷職。 王の安眠、騎士団の心的外傷ケア、外交使節の睡眠管理まで、宮廷の「夜」を支えてきた。 だが第二王子オスカーは嗤った。「子守唄しか能がない女は要らぬ」 リディアが王宮を去って3日後、王宮から眠りが消えた。 誰も眠れない。王も大臣も近衛騎士も。不眠は判断力を奪い、外交を狂わせ、王国を蝕む。 辺境で新たな居場所を見つけたリディアに、王宮から帰還要請が届く。 「おやすみなさい——はもう、言いません」

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

巨大オカメインコの「フク様」と幸せスローライフ!〜聖なる脂粉で枯れ木に花を咲かせます~

ベル坊
ファンタジー
目が覚めたら、そこはボロボロの家と荒れ果てた荒野だった。 絶望する日和 恵(ひより めぐみ)の前に現れたのは、飼っていた愛鳥のオカメインコ……のはずが、なぜか軽自動車サイズの巨大な姿に!? インコが羽ばたけば、枯れた大地が花畑に。 インコが歌えば、妖精たちが踊り出す。 オカメパニックを起こせば 敵が嵐に吹き飛ぶ(わざとじゃない) 妖精たちも「フク様!」と集まってきて……。 巨大もふもふインコと、ちょっとお疲れ気味だった女の子が、魔法と美味しいごはんで異世界スローライフ、のんびり開拓物語