子供の姿で転生したパティシエ、異世界で甘くて幸せな生活を送る。〜調味料や料理器具を生み出す力で、食文化を発展させます〜

かむら

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#80 ついに発売!

 シクウとジリアムとの打ち合わせがあった次の日。

 いよいよカスミが携わった調味料とレシピの発売日になった。

 カスミは品質チェックも兼ねて今回販売する調味料を一通りもらったので買いはしないが、どれくらい売れているのかはやはり気になってしまうので、散歩がてらレネと共に商業ギルドへと行ってみることにした。


「どんな感じで売ってるんだっけ?」

「えっと、この街の商業ギルドと、王都とこの国の大きな街にあるデラフト商会の支店で売るそうです」

「おー、他店舗で売ってくれるんだ! まぁ、絶対売れるから当たり前っちゃ当たり前か!」

「この街にも近い内にデラフト商会の支店を出すって言ってましたね。 商業ギルドの購買スペースで売るのは場所代や手数料がかかるそうなので」


 この街にはデラフト商会の支店はまだ無いが、シクウ的にはカスミが拠点としている街なので、ぜひ支店を出したいらしく、猛ピッチで準備を進めているとのこと。


「カスミちゃんのおかげで、良い方向にどんどん進んでいってるね!」

「そう言ってもらえると嬉しいですっ」

「カスミちゃん自身は何かしたいこととかないの?」

「私はビフレストの皆さんと今みたいに過ごせればそれで……」

「あーん、カスミちゃん可愛いっ♡ でもさ、それって私達もそうだからもう叶ってるようなものじゃん? 他にやってみたいこととかはないの?」

「うーん…… あ、それなら……」

「お、何かある?」

「……ケーキ屋さん、やりたいですね」


 その願いは、カスミにとっては色んな感情が含まれたものだった。

 前世で自分がパティシエを目指すきっかけになったケーキ屋が無くなった時、生きる意味が分からなくなってしまったことからも分かるように、ケーキ屋というのはカスミにとっては物凄く思い入れのある場所なのだ。


「おー! 良いじゃん! ……あー、でも、今すぐにってのはちょっと難しいのかも?」

「まぁ、やるってなったら色々準備しなきゃいけませんからね」

「それもそうだけど、カスミちゃんのケーキって、まだ一部の人しか食べたこと無いし、誰もが虜になっちゃうようなものだから、お店なんて出したらもうすんごい人が集まると思うんだ」

「そうですかね?」

「そうだよ! カスミちゃんは自分がどれだけ凄いもの作ってるかまだ分かってないの~?」

「むああ~」


 レネはそう言って、ちょっと呆れたような目を向けながら、カスミの頬っぺをむにむにしてきた。


「だからね、需要とカスミちゃんしか作れないっていう希少性を考えたら、もう値段が付けられないんだよ」

「ほ、ほうれふは?」

「私だったら一切れ金貨100枚でも買っちゃうな」


 金貨100枚、つまり日本円にして100万円の価値がカスミのケーキのたった一切れにこの世界の現状だと発生するとレネは言う。


「だから、平民でも手の届く適正価格にするには、カスミちゃんの美味しい料理がもっと広まって、カスミちゃんの他にもケーキを作れる人が現れないとちょっと難しいかもね」

「ほうれふか…… ほ、ほいうは、はらひれふらはい~」

「おっと。 カスミちゃんの頬っぺ、もちもちしてて触り心地良いからつい」


 レネに頬っぺから手を離してもらいつつ、カスミは確かにケーキ屋を出すにはまだ時期尚早かなと再認識した。


「でも、カスミちゃんのケーキ屋はぜひ出して欲しいから、応援するよ!」

「ふふ、ありがとうございますレネさん。 とりあえず、気長に目指していこうと思います」


 現在行っている料理を広めるという使命を続けていれば、自ずとケーキ屋への道も拓けていくだろうとカスミは思ったので、とりあえず今やっていることを精一杯頑張ることにした。

 そんなことを話しながら歩いていると、カスミ達は商業ギルドの前までいつの間にか辿り着いていた。


「んー、いつも通りに見えるね? ちょっと客が多いくらい?」

「ですね」


 そんな商業ギルドは、いつものように買い物に来た客や商人が出入りをしており、そこまで様子が変わった感じはしなかった。


「なんかもっとこう、人集りができてるのかなって思ってたんだけど……」

「ちょっと中に入ってみましょうか」


 外の様子はいつも通りだったが中はどうだろうと思い、カスミとレネは商業ギルドの購買スペースに足を運んでみた。

 すると、入ってすぐのとても目立つ場所に、何も載っていない沢山の棚が並べられており、そこには「完売御礼」の看板が立てられていた。


「ここにカスミちゃんの商品売ってたのかな?」

「多分そうだと思います。 入口近くの目立つ場所で並べると言ってたので」

「ってことは、売り切れたんだ! まだ開店してちょっとしか経ってないのに!」


 商業ギルドは今から1時間ちょっと前が営業開始時間なのだが、客がまばらになっているのを見るに、相当前にカスミの商品は売り切れたようだ。


「おや、こちらの商品をお求めですか?」


 すると、空の棚の前にいたカスミ達に、店員の女性が声をかけてきた。


「すみません、こちらの商品はすぐに売り切れてしまいまして。 3日後に再入荷いたしますので、その時に営業開始してすぐに来ていただければ買えると思います。 あ、レシピの方は昼過ぎに新しく印刷したものを持ってきますので、レシピだけで良ければ今日中に買えますよ」

「あ、えっと、とりあえずは大丈夫です」


 カスミのことは商業ギルド長のジリアムしか知らないので、まさかこの店員もここに売られていたものが目の前の少女が考案したものだとは夢にも思っていないだろう。

 そんな親切な店員に礼を言いつつ、カスミとレネは商業ギルドを後にした。


「凄いね! もう売り切れだって!」

「相当な量用意したって聞いたんですけどね?」

「絶対売れるとは思ってたけど、想像以上だったね!」

「そうですね。 これで色んな人が美味しいものを食べられるようになったら嬉しいです」


 今日の売れ行きを見て、食文化を良くし、広めるという使命の第一歩が踏み出せたような気がして、カスミとしても一安心だった。

 ただ、恐らくシクウもジリアムも在庫管理に奔走していると思うので、今度会う時は何かお土産を持っていこうとカスミは密かに決意するのであった。
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