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不思議な鍵屋
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もしも心から『欲しい』と思った時、あなたの目の前には『ドア』が現れるでしょう。古びた茶色。真ん中にはかぎ穴型の窓。そのドアを開けてください。
ドアの向こうには、『不思議なかぎや』が待っていますよ。
『キィー』鈍い音を響かせながら、ドアが開きました。かすかにコーヒーの香りが漂ってきました。
「いらっしゃいませ。」優しく落ち着いた声。緑色の帽子を深く被り、紺色のエプロンをつけたかぎやさんが、お店のカウンター越しから声をかけました。
「どんなかぎを、お探しですか?」
「元気がほしいの。元気になるかぎをください。」そのお客さんは、まるで背中や肩に骨が入ってないみたいに丸まっていて、弱々しい声で、床を眺めながら言いました。
「かしこまりました。少々おまちください。」そういうと、店主さんはお店の奥へ入っていきました。外から見ると、カウンターと屋根だけのお店ですが、暗い店の奥は不思議とどこまでも続いているように見えました。
「おまたせしました。げんきがでるかぎです。」そのかぎは深い海のような青色をしていました。
「このかぎを、あなたのお家のテーブルに立てると、かぎが刺さります。そして、回してかぎをあけてください。大丈夫。何も難しいことはありませんよ。」
「わかりました。」
「あっちょっと、待ってください。」かぎやさんは黄色いリボンをかぎに結びました。
「どうか元気がでますように。」かぎやさんはそう言うと、お客さんにかぎを手渡しました。
お客さんは初めてかぎやさんの顔を見て言いました。
「ありがとう。」
お客さんはその日、家に帰ると、かぎやさんに言われた通り、テーブルにかぎをたてました。すると、かぎは星のように輝きながら、テーブルに吸い込まれるように刺さりました。お客さんはドキドキしながらかぎを回しました。
『カチャ』
すると、今度はテーブルが輝きました。テーブルの真ん中から泉が湧くように、光が湧いてきました。
「何てきれいなんだろう。」温かいその光が、お客さんの瞳に反射します。
そして、光の泉からは、たくさんのごちそうが浮かんできました。
たっぷりの野菜が入ったスープに、柔らかくて焼きたてのパン。トロトロのオムレツに、甘い香りがするいちご。どれもお客さんが大好きだったものでした。
『ぐぅ』お客さんのお腹がなりました。
「お腹すいた。」お客さんはスプーンを取り、スープをひと口飲みました。すると、
「おいしい…」自然と声が出てきて、お客さんの瞳からは、やっと涙がこぼれてきました。
「おいしい、おいしい…」そう何度も口にし、今までためていた涙をたくさん、たくさん流しながら、ごちそうを食べ続けました。
お腹がいっぱいになったお客さんは、もう泣いていませんでした。雨上がりのお空のように、すっきりとした顔をしています。
「そういえば、ドキドキしたのも、何かをきれいだと思ったのも、お腹がすいたのも、おいしいと思ったのも、おなかがいっぱいになったのも久しぶりだな。」
「このかぎのおかけだね。」
お客さんはかぎを眺めました。かぎやさんがつけてくれた黄色いリボンが解けています。お客さんはリボンを結び直すと、ふと思いました。
「そうだ。暖かくなったら海に行こう。こうしちゃいられない!準備しなきゃ!友達も誘わなきゃな!」
お客さんは嬉しそうに立ち上がりました。
かぎやさんの所に風が吹きました。爽やかな風です。マグカップに入ったコーヒーの水面が揺れ、黄金色に輝きました。
「おや?元気になるかぎが、あいたみたいだな。良かった。」かぎやさんは微笑みました。
ここはふしぎなかぎや。
『キィー』ドアが開きました。今度はどんなお客さんが来たのでしょうか?
「いらっしゃいませ。どんなかぎをお探しですか?」
ドアの向こうには、『不思議なかぎや』が待っていますよ。
『キィー』鈍い音を響かせながら、ドアが開きました。かすかにコーヒーの香りが漂ってきました。
「いらっしゃいませ。」優しく落ち着いた声。緑色の帽子を深く被り、紺色のエプロンをつけたかぎやさんが、お店のカウンター越しから声をかけました。
「どんなかぎを、お探しですか?」
「元気がほしいの。元気になるかぎをください。」そのお客さんは、まるで背中や肩に骨が入ってないみたいに丸まっていて、弱々しい声で、床を眺めながら言いました。
「かしこまりました。少々おまちください。」そういうと、店主さんはお店の奥へ入っていきました。外から見ると、カウンターと屋根だけのお店ですが、暗い店の奥は不思議とどこまでも続いているように見えました。
「おまたせしました。げんきがでるかぎです。」そのかぎは深い海のような青色をしていました。
「このかぎを、あなたのお家のテーブルに立てると、かぎが刺さります。そして、回してかぎをあけてください。大丈夫。何も難しいことはありませんよ。」
「わかりました。」
「あっちょっと、待ってください。」かぎやさんは黄色いリボンをかぎに結びました。
「どうか元気がでますように。」かぎやさんはそう言うと、お客さんにかぎを手渡しました。
お客さんは初めてかぎやさんの顔を見て言いました。
「ありがとう。」
お客さんはその日、家に帰ると、かぎやさんに言われた通り、テーブルにかぎをたてました。すると、かぎは星のように輝きながら、テーブルに吸い込まれるように刺さりました。お客さんはドキドキしながらかぎを回しました。
『カチャ』
すると、今度はテーブルが輝きました。テーブルの真ん中から泉が湧くように、光が湧いてきました。
「何てきれいなんだろう。」温かいその光が、お客さんの瞳に反射します。
そして、光の泉からは、たくさんのごちそうが浮かんできました。
たっぷりの野菜が入ったスープに、柔らかくて焼きたてのパン。トロトロのオムレツに、甘い香りがするいちご。どれもお客さんが大好きだったものでした。
『ぐぅ』お客さんのお腹がなりました。
「お腹すいた。」お客さんはスプーンを取り、スープをひと口飲みました。すると、
「おいしい…」自然と声が出てきて、お客さんの瞳からは、やっと涙がこぼれてきました。
「おいしい、おいしい…」そう何度も口にし、今までためていた涙をたくさん、たくさん流しながら、ごちそうを食べ続けました。
お腹がいっぱいになったお客さんは、もう泣いていませんでした。雨上がりのお空のように、すっきりとした顔をしています。
「そういえば、ドキドキしたのも、何かをきれいだと思ったのも、お腹がすいたのも、おいしいと思ったのも、おなかがいっぱいになったのも久しぶりだな。」
「このかぎのおかけだね。」
お客さんはかぎを眺めました。かぎやさんがつけてくれた黄色いリボンが解けています。お客さんはリボンを結び直すと、ふと思いました。
「そうだ。暖かくなったら海に行こう。こうしちゃいられない!準備しなきゃ!友達も誘わなきゃな!」
お客さんは嬉しそうに立ち上がりました。
かぎやさんの所に風が吹きました。爽やかな風です。マグカップに入ったコーヒーの水面が揺れ、黄金色に輝きました。
「おや?元気になるかぎが、あいたみたいだな。良かった。」かぎやさんは微笑みました。
ここはふしぎなかぎや。
『キィー』ドアが開きました。今度はどんなお客さんが来たのでしょうか?
「いらっしゃいませ。どんなかぎをお探しですか?」
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