おばあちゃんはお姫様

月兎もえ

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おばあちゃんはお姫様

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 僕のおばあちゃんの話をしよう。僕のおばあちゃんはお姫様みたいなんだ。背は僕よりも小さくて、力もぼくよりも弱い。お菓子の袋も僕が開けてあげているんだよ。そして、優しくてかわいいだ。まるでおとぎ話のお姫様みたいでしょ?だからね、僕は決めたんだ。僕がおばあちゃんを守ってあげるって。
だから、僕は頑張ってきたよ。おばあちゃんと買い物に行ったら荷物を持ってあげたり、ゴンタ(ケンちゃんの家の犬だ)から守ってあげたり、いっぱい頑張ったんだ。でも、守れなかった。おばあちゃんは病気にさらわれてしまったんだ。
ママもパパも元気がなくなっちゃた。ママは僕がプリントを出し忘れても怒らない。パパはずっとボーッとしてる。僕がこっそりテレビ番組を変えても気づかないくらいだ。そんなママとパパを見てると、僕までもっと悲しくなってきた。おばあちゃんはこのままさらわれたままなのかな?
 そんな時、ママのスマホが鳴った。ちらっとキッチンを見るとママはご飯を作っていた。僕はママのスマホを持って、トイレに入った。
「もしもし。」おばあちゃんだ。
「おばあちゃん。大丈夫?ごめんね。僕守ってあげられなくて。」僕の目から涙が出てきた。今まで、泣かなかったのになんでだろう。おばあちゃんの声を聞いたら涙が止まらない。
「悠くんかい?おばあちゃんは大丈夫だから、そんなに泣かないで。」
「でも…」声が出ない。たくさん話したいのに悲しさが邪魔をするんだ。
「おばあちゃんね実は今、決闘してるんだ。」
「決闘?」ピタッと涙が止まった。
「そうだよ。病気と決闘してるんだ。大丈夫。おばあちゃんこう見えて強いから、必ず勝つよ。だから、悠くんも一緒に闘ってくれるかな?」
「うん!もちろんだよ!僕も一緒に闘うよ!僕は何をしたらいい?」おばあちゃんを守れるなら何でもする。
「まず、仲間を集めてほしいんだ。ママとパパに話してくれるかな。」
「わかった!おばあちゃん、一緒に頑張ろうね!」
僕はキッチンに駆け込んだ。
「ママ!おばあちゃん、さらわれたんじゃなかった!闘いに行ったんだよ!だから、ママ、僕たちもおばあちゃんと一緒に闘おうよ!」
ママはびっくりした顔をしてから、涙をボロボロ零した。
「今もおばあちゃんは決闘しているんだって!パパも呼んでおばあちゃんを助けなきゃ!」
僕はママにテッィシュを渡しながら言った。
「そうね。悠くん。ごめんね。ママも強くならなくちゃね。」ママはパパにすぐに電話した。そしてパパが帰ってくると、「ありがとう。」と言って、パパは僕の頭を撫でてくれた。
さぁ、作戦会議だ。僕らはおばあちゃんのために何ができるか話しあった。僕らはおばあちゃんの心が元気になる方法を考えたんだ。そしたらもっともっと力が出るはずだ!僕らが用意したのはアルバム。それから戦闘服。アルバムは僕たち家族の写真や、おばあちゃんが大切にしているお花の絵(お花はママが守ってくれてるよ)、友達のトキさんの絵、大切にしているブローチの絵とか、おばあちゃんの好きな物をたくさん詰め込んだよ。それから戦闘服はピンク色のパジャマにしたよ。おばあちゃんが大好きなピンク色。パパが一生懸命選んでいたよ。ママに「いいかげん早くしてよ」って怒られてたよ。そして、戦闘服にはおまじないをかけたんだ。庭のラベンダーの上にパジャマを広げて、ラベンダーの香りをお裾分けしてもらうんだ。おばあちゃんがよく僕らの枕カバーにやってくれてたんだ。良く眠れるおまじないなんだって。
 今は病院の中に入れないから、直接渡せないけれど、プレゼントに気持ちをいっぱい詰め込んで贈ったんだ。
「おばあちゃん、僕たちがいるよ。絶対勝ってね。」
 それから秋が来て、冬を越し、春が来た。
おばあちゃんが帰ってきた!闘いに勝ったんだ!僕はおばあちゃんに飛びついた。
「おばあちゃん、お帰り!」
ママもパパも嬉しいはずなのに泣いていた。
「ただいま。一緒に闘ってくれてありがとうね。まだ闘いは続くけれど、お家に帰れてこれたのは皆んなのおかげだよ。」おばあちゃんは僕を抱きしめてくれた。
「ううん。おばあちゃんが強いからだよ!おばあちゃんはお姫様じゃなくて、勇者だね!」おばあちゃんもママもパパも笑った。
「そうだねぇ。おばあちゃんは強いお姫様がいいかなぁ。だからこれからもよろしくね。」
「うん!僕はこれからもおばあちゃんを守るよ!」
これが僕のおばあちゃん。ねぇ、僕のおばあちゃんって素敵なお姫様でしょ?
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