カップに届け!

北条丈太郎

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熱血コーチ就任

コーチの技に震えるあゆみ

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「コーチに先に打たせてあげますわ。私が打った後では絶望しますもの」
 あゆみは微笑み、土方コーチのショットを見守った。
「まあ、そんなに大きく振りかぶって。冗談やってるんですか?」
 土方が振り上げたウェッジは砂に食い込み、白球が高く舞い上がった。
「ごらんなさい。大オーバー……」
 白球は旗竿でゆらめく旗に当たり、すとんと落ちてカップに吸い込まれた。
「さあ菊崎の番だ。お前もチップインさせれば引き分けだ」
 あゆみの額からぽろぽろと光る汗が流れ、その表情は曇りを増した。
「負けませんわ! チップインくらい! 私ならば!」
 あゆみは震える手でウェッジを振り上げ、強く砂に突き刺した。
「ダフった! 先輩がダフった!」
 勝負を見ていたアスカが叫び、あゆみはがっくりと肩を落とした。
「お前は技よりも心を鍛えろ。ゴルフは自分の心との戦いだ」
 グリーンの端に乗った自分の打球を見つめ、あゆみは立ち尽くしていた。
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