カップに届け!

北条丈太郎

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熱血コーチ就任

あゆみの豪邸で特訓開始

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「……ここが菊崎の家か。やはり豪邸だな。お前専用の練習場もあるんだろう?」
 土方は帰宅するあゆみを追って菊崎家に着くなり言った。
「コーチ。本当に今から特訓しますの? それも私のお家で……」
 よろよろと歩いていたあゆみは土方のサングラスを見てつぶやいた。
「なるほど、いい庭だ。アプローチ練習もここでやってるのか?」
 土方はサングラスを外して菊崎家の庭を眺め、あゆみにそう言った。
「コーチ、ちょっと待ってくださいませ。お父様に……」
 だが土方はずかずかと庭に入り込んで芝生の感触を確かめた。
「菊崎! 靴を脱いで裸足になれ。今からアプローチの練習だ。早くしろ!」
 土方は言いながらあゆみの足をつかみ、強引に靴を脱がせた。
「キャア! コーチ! セクハラです! 裸足なんて恥ずかしい……」
「うるせえ! これは特訓だ! 足の裏でアプローチを覚えるんだ!」
 土方に怒鳴られたあゆみは震えながら靴下を脱ぎ、素足で芝生を踏んだ。
「ウェッジを持て! ボールはここだ。右足の裏、左足の裏だ。わかったか!」
 あゆみはウェッジを持ち、言われたとおりに足を交互に踏んでショットした。
「そうだ! まあまあだ。グリップの感覚を消して足で打て! 覚えろ!」
 あゆみは足の裏に刺さる芝生の感覚を確かめながらショットを繰り返した。
「倒れるまでやれ菊崎。お前が倒れたら次の特訓だ。俺が見ててやる」
 意識を失いかけたとき、あゆみは自分の体が抱き上げられたような気がした。
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