上 下
6 / 22

王女は振り向かない

しおりを挟む
「ボクはルビイさまのためなら死ねます。魔法も特訓しました」
少年はルビイを見つめて杖を振りかざしました。
「ほう、ところでお前は誰じゃ? 記憶にないのう」
忘れっぽいルビイは思い出そうとしましたが、すぐあきらめました。
「ルビイさま、神官見習いのドリフです。ルビイさまが好きです!」
「ふうん、とりあえず死んでみせてくれ、面白そうじゃ」
ドリフの告白を華麗にスルーして、ルビイは笑いました。
するとドリフはなにやら呪文を唱え始めました。
「タッタッタタッタラッタッタ、自爆5秒前、4、3、2……」
「待てい、愚か者め! ルビダ~キック!」
ルビイは高く飛び、美しいフォームの飛び蹴りでドリフを倒しました。
「ここで自爆されたら私も死んでしまうではないかスカタン!」
「……お見事ですルビイさま、これでワシも楽になれますわい」
老人は微笑んで息を引き取りました。
「なんじゃ、死んでしまったか。百の奥義を見せたかったのう」
ルビイは振り返らずに城を去りました。
しおりを挟む

処理中です...