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旅立ち

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十郎が起きると姫は結髪をほどいていた。月明かりに黒髪が流れる。
宝刀時雨を手にした姫はそれを十郎に預け、小袖の帯を解いた。
「十郎。私の髪を束ねてそこの頭巾で覆ってくれ。お前とおそろいだ」
十郎がのろのろ作業をしている間に姫はさっさと道着袴姿に着替えた。
「ふふ。この姿でよく町に出かけたものだ。それでは行くぞ十郎」
部屋から庭へ、庭から外へと急ぐ姫の真後ろに十郎は付き従った。
月が照らす二人のほか、人影はなかった。どこかで犬の鳴く声がした。
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