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夜盗

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(なかなか大きな村だ。しばらく隠れ住むにはうってつけかもしれん)
麓の村を一望し、十郎はしばらく思案した。
「姫様。俺の作戦に協力してくれ。俺は一芝居打つ。姫様も一つ頼む」
十郎は川で洗濯をしている老婆へ近づき、笑顔で話しかけた。
「頼みがある。洗濯を手伝うから一晩泊めてほしい。連れも一緒だ」
老婆は一瞬怪訝な顔をしたが、十郎の目つきを見て頷いた。
「娘さんは足をくじいているようだね。お前さんたちはどういう仲だい?」
「俺はただの風来坊さ。娘が山道で倒れていたのでちょいと助けたのさ」
老婆はぎょろりと十郎を見て、じっくりと雪姫を見た。
「まあいい。洗濯を終えたら家に来な。飯くらいは食わせてやるよ」
粗末な老婆の家で十郎が眠りにつこうとしたとき、村中が騒がしくなった。
「また奴らが来たようだね。お前さんたちには関係ないから静かにしてな」
老婆はそう言って外の様子を見た。
「あの野武士ども。この村から盗めるだけ盗もうってんだね。ひどい話さ」
十郎がちらりと外を見ると、武装した夜盗の集団が村を荒らしていた。
同じように外を見た雪姫は憤怒の表情で宝刀をすらりと抜いた。
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