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茶屋

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「そうか、旅立つと言うなら止めはしない。達者でな」
城主鈴木重秀はやや名残惜しそうに十郎たちを見送った。
一行は、まず伊勢へと向かった。姫は笠をかぶり、男装した。
十郎たちも町人を装い、早足で歩いた。
やがて三人の行く先に大集団が現れた。
「あれは伊勢参りの集団だな。用心しよう」
遼次が流し目で目配せし、一行は素通りしようと試みた。
「あらあ、こちらいい男じゃないの。ちょっといらっしゃい」
通りの茶屋から肉付きのいい娘がやってきて、亘の腕をつかんだ。
「お、おお。お前もいい女だな。ちょっと休憩しよう」
亘は興奮したのか、顔が上気している。
(どうも臭うな。用心に越したことは無い)
十郎が娘の胸元を見ると、きらりと何かが光った。
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