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戸隠へ

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「戸隠に行くというのなら我が配下の甲賀衆が護衛しよう。問題はない」
「いいえ殿様。ありがたきお言葉ですが、我々だけで向かいます」
十郎がきっぱり断ると、遼次以下三人は目を丸くした。
「そうか。それより、そこな姫殿はどうする。我々で預かろうか」
「いいえ! 私はどこまでも十郎についていきます!」
雪姫が大声で叫ぶと殿様は大笑いして膝を叩いた。
「よかろう。それでは道中の無事を祈ろう。下がってよい」
十郎たちは与えられた一室に戻り、深夜まで議論した。
「姫を武田家に預ければ万事済む話じゃないか。それが一番平和だ」
「そうだ。亘の言うとおりだ。十郎、考え直してくれ」
十郎は何も言わず、夜空に輝く満月をじっと見ていた。
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