魔法熟女三姉妹の物語

北条丈太郎

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魔王ドロンの力

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「おい魔王ちゃん、アタシちょっと戦ってくるからまた魔法少女呼べよ。早くしろ」
ミクたちは宮殿でぐったりと寝込んでいる魔王ドロンを見下ろした。魔王がミクたちの気配に気づいて顔を上げたときにマキがその大きな顎を蹴りあげた。
「……オロ! 痛いでおじゃるよマキさまいえローズさま、も、もう許してくだされ」
「うるせえ! 早くなんとかロードってやつで新しい魔法少女呼べってんだよクソ魔王」
魔王ドロンは弱々しい表情で涙を流しつつ土下座を繰り返したが、ミクとメグはブーツでその頭を容赦なく何度も踏みつけた。すると魔王ドロンは観念したように口を開いた。
「……ホーマロードをただいま開きまするよエメラルダさまサファイアさまローズさま」
魔王ドロンは鎖でつながれたまま大きな両手を天に上げ、ぶつぶつと呪文を唱えた。
「……ホームホーマーホーメスト! いでよドリーマーたちオロロロロ~~ン!」
魔王ドロンの両手から光が立ち上り、やがて三人の女がふわふわと宮殿に落ちてきた。
「……呼んだでごじゃる。ワシは疲れたので眠らせていただくでおじゃるよ」
ミクたちの前に現れた女たちはそれぞれがぽかんとして目をこすり、宮殿をきょろきょろと見まわしたのちにミクたちを見て首を傾げた。
「……ここどこ? お城? あれ? 可愛い魔法少女がいる? どういうこと?」
ミクたちは三人の女が落ち着くまで待ち、それぞれの女に自己紹介させた。
「……私はマオ。コスプレ衣装を自分で作ってる会社員なんだけど、ここどこなの?」
マオと名乗った女はミクたちのドレスを見るとはしゃぎ、しばらくして眠った。
「……私はナオ。漫画を描いていたら寝ちゃったんだけど、これって夢なの?」
ナオと名乗った女は何度も目を細め、自分の頬を何度か叩いたのちにあくびをして寝た。
「……私はアヤだよ。家事手伝いっていうか無職だけど文句ある?」
アヤと名乗った女はミクたちに興味を示さず、すぐに寝てしまった。
「魔王ちゃんさあ、こいつら使えなさそうなんだけど、とりあえず魔法少女にしてよ」
ミクはうとうとしている魔王ドロンの鼻っ面をステッキで強打し、命令した。すると魔王ドロンは鼻をさすりながら呪文を唱え、手のひらに三人分のドレスとステッキを出した。
「カムドリカムドリオロロンロン!」
三人はそれぞれ魔法少女の姿になり、一斉に目覚めた。
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