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日常編

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「入れ替わり、ですか?」

あの後、立ち話もなんだしここじゃ目立つということで、あの場所からほど近いグレイの家にお邪魔していた。

「そう。僕としては自由に街を歩きたいんだけど、皆許してくれなくてね~。」

そりゃそうだろ、と俺とグレイは心の中でツッコんだ。
仮にも一国の王が護衛も付けずに街を出歩くなど、いくら治安のいいこの国だって危険すぎる。

「え、そりゃあまあ…。危ないですから。」

よし、よく言ったグレイ!あとで撫で回してやろう。

「うーん。それは良くわかってるけどねえ。」
「今お前が居なくなったら今度こそこの国は終わるだろ。世継ぎが居ないし、王宮も国民も混乱する。」

それにこいつはあの最悪な王政を建て直し、たった一年で国を良い方に作り替えたのだ。
乱れきった治安も腐りきった王宮も全て元通りにした。
だから国民から絶大な支持を得ている。

「だから考えたんだ!ようは王だからまずいんだろう?だったら、王、さらに言えばオースティンじゃなければいいんだよ!」
「…。だから顔が良く似ている俺と入れ替わろうってか?」
「さっすがオルテ、良く分かってるう!」

やっぱり面倒ごとじゃねえか。
昔っからこいつと絡むとろくな事がねえ。
厄介事を持ち込み体質ランキング二位、三位争えるだろ。
因みにダントツ一位はグレイだったりする。

「でもバレません?俺すぐ分かりますよ?」
「ええ、嘘でしょ!?結構前に入れ替わったことあるけど全然バレなかったよ??」

うわ、グレイマジかよ…。
さすが俺の信者名乗るだけあるな。
俺とオースティンの見分け、あのマーフィー(俺の親友)ですらつかなかったんだぞ?

「オルティス様と他の人を見間違えるなんてオルティス様の信者失格ですからね!」
「あ、そう…。」

もう何も言うまい。オースティンも若干引いてるぞ…。
あんな顔のオースティン初めて見た気がするんだが。

「ねえ、お願い!一日だけでいいからさ~。学園にも行きたいし、街の探索もしたいんだよ~。」
「まあ、一日だけなら…。」
「ほんと!?じゃあさ、明日一日でもいい!?」

明日かよ!?急すぎるわ。
でも、こんな頼み込まれたんなら仕方ないか。


こうして俺とオースティンの入れ替わり作戦が決行されることとなった。


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