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第2章
2-21 溶けない確執を背負って
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「ほんとにありがとね、雪月君。私一人じゃ空を助けられなかったかもしれない」
空が気絶した後、桜は空を背中に抱え、今まで無視をし続けていた雪月の方を見やる。そして、満面の笑みを雪月に向けた。
先程の光景に唖然としていた雪月だったが、桜の言葉で我に返り、言葉を紡ぐ。
「あ……? あぁ、そうか。役に立ったのならいい。俺はお前の『道具』だからな」
「道具って……。神様が言った事そのまま鵜呑みにしてるの? 雪月君は道具じゃないよ?」
雪月の言葉に、桜は呆れたようにその言葉を否定する。しかし、雪月は桜の返しに少しだけ眉を顰めた後、目を伏せ、ため息を吐いた。
「……そりゃどうも。月並みな言葉だな。だがな、お前が何と言おうと、神の言葉は絶対だ。俺はそう言う存在なんだよ」
「ふぅん……? そっか。じゃあ先に謝っとくね。道具として扱えなくてごめんなさいっ! 私、雪月君を友達だって思っちゃった! だから、道具として扱うとか絶対無理!」
「ッ!? は……」
雪月の返しに、桜は全く動じることなく満面の笑みで謝罪する。そんな桜の様子に、雪月は絶句したように口をあんぐりと開け、桜を見やった。
そんな雪月の反応に、桜は首を傾げ、本気で不思議そうに目を丸くして雪月を見やる。
「え、ひどい。私そんなに冷徹人間に見られてたの!? そこまで驚かなくても────」
「いやおかしいだろッ!? 俺は管理者なんだぞ!? つまり、翼を助けたいおまえにとっての明確な『敵』! 道具として見れないとしても、友達だって……? 平和ボケもいい加減にしろッ!」
桜の常識外れた発言に、雪月は堪忍袋の緒が切れたように怒声を浴びせる。そして、雪月の突然の怒声に、桜はムッとしたように唇を尖らせた。
「そんな事言われたって、そう思っちゃったんだから仕方なくない!? ってか、別に雪月君を敵だなんて思ってないし! ふぃくさー? ってのもよくわかんないし、なんで翼がああなったか知らないけど! 君が無理やり翼にあんなことさせてるわけじゃないってのは君を見てたらわかるよ?」
「なっ……。なん……で、お前に、そんなことが……」
「えっ、流石に分かるよ!? すっごく翼の事気にかけてたじゃん。雪月君って案外感情を隠せないタイプだよね?」
桜のまさかの発言に、雪月は口を金魚の様にパクパクさせ、言葉を失う。
隠せていると、バレるはずがないと高を括っていた感情だった。それがこうも簡単に暴かれてしまい、雪月は思考が回らなくなる。
一向に口を開こうとしない雪月にしびれを切らした桜は、無遠慮に雪月との距離を縮めた。そして眉を顰め、不機嫌を隠そうともしない表情を浮かべ、桜は口を開く。
「もう! そう言うところが分かりやすいんだよ! いつもは無表情決め込んでるけど、すぐ崩すんだから……。あのね? 私だって雪月君をいじめたいわけじゃないんだよ? でも、雪月君が傷ついてるのに傷ついてないフリするのは無視できない。私は、雪月君が心配なの」
「……お人よしめ。何故俺に構う? 人の見た目をしているからか? 対話ができるからか? 俺は結局、神に言われたら簡単に人を殺すし、お前を裏切るぞ?」
桜の真摯な言葉に、雪月は自嘲気味に言葉を返す。そんな雪月の態度に、桜は深くため息を吐き、銀世界に広がる雪の様に真っ白な彼の瞳を真っ直ぐとらえる。
「はぁぁぁぁ。このやり取り何回かした気がするよ? でも、わからないなら何百回でも言ってあげるよ。私は! 西連寺桜は! 雪月君が何者であろうと友達だって思ってるし、救いたいって思ってる! 今は口だけになってるけど、絶対君を神から解放する。雪月君にはもっと笑ってほしいし、私を友達だって、ちゃんと思ってほしいの!」
「……ッ。理解不能だ……。もういい。俺には俺の事情がある。……俺の事より、他に考えることがいっぱいあるんじゃないか? この場から逃走した戸倉柊夜のこととか、大好きな東雲翼のことでも考えたらどうだ? せっかく会えたって言うのに、気づきもしないなんて、案外白状だな?」
「うぇっ!? あっ! ほんとだ! いつの間に!? って、私翼に会ってたの!? い、何時!? 情報量多すぎだよーーーッ!」
拗ねたように桜の手を軽く払い、雪月は彼女を睨む。そして、桜の想像していなかった衝撃の事実を突きつけてきたのだ。
当然、桜は目を丸くし雪月に詰寄る。そんな桜の様子に、雪月は少しだけ得意げな表情をして、桜を見やった。
「やはり気づいていなかったか? まぁ、そんなものだ。あいつは今、その放っている気すら、人間には耐えられないものだからな。……恐ろしかっただろ? あの、甲冑の男は」
「……え? あの趣味の悪そうな甲冑? の人が……翼?」
桜が目を丸くして雪月の言葉に驚いていると、先程まで嘲るような顔をしていた雪月の顔が一転、その表情を曇らせる。
「えっ……。しゅ、趣味が悪い……のか? そう、か。そう見えるのか……」
「うぇ、だって全身重たそうに着込んじゃってるし……。絶対もっと身軽な方が戦いやすくない?」
「いやそんなことは無い! 確かに本来甲冑とは重量があり、身軽に動けないものだ。だが、俺たちから言わせてもらえば甲冑の重さくらい羽の重さと変わりはしない。甲冑の魅力は肉体のみならず真実すら包み隠せそうな存在感とフォルム、そして輝きがある! 言わば圧倒的強者にこそ許された装備とも言える! ……と、お、思ってるんじゃないか? いや、俺には人間のことなど全くわからんがっ」
桜の『趣味が悪い』という言葉を、雪月は力強く甲冑について熱弁し、否定する。しかし、次の瞬間には目を泳がせて全く説得力のない言葉を紡いだ。あそこまで熱弁しておいて自分の感想ではない、との言い分は流石に桜も信じられなかった。
……そういえば、雪月君も最初会った時、似たような物していたな……。あの時はヘンテコな仮面だな。くらいにしか思ってなかったけど、あれって甲冑って言うのか……。あれ、もしかして雪月君気に入っていたのかな……? と、桜は心の中で思い、雪月に対して申し訳ない気持ちが湧いてきた。
なんであれ、人の趣味をバカにしてしまったのには違いない。そう思い、桜は眉を下げて、雪月に対して頭を下げた。
「ごめん! 雪月君の趣味をバカにして……! 大丈夫。確かに甲冑は動きにくそうだけど、防御面は凄そうだし! 強そうな雰囲気も出てると思うから!」
「へ? あ、あぁ……そう、だな? いや、別に俺の趣味じゃないぞ!?」
「えぇー! 絶対嘘だぁー! めっちゃ熱弁してたじゃん! 翼が言ってたなんて雰囲気じゃないくらいやばめに!」
「……うっ……う、うるさい。それはお前の気のせいだ! そんなことより、話が逸れてるぞ! 結局お前は翼を恐れたのか?」
自分の不利を悟った雪月は、顔をリンゴの様に赤面させ、無理やり話題を最初に戻した。その事に桜は納得いかず、深くため息を吐く。しかし、このまま雪月にそんな誤解されたままというのも嫌だったので、仕方なく質問に答えることにした。
「うーむ、あの甲冑の翼が怖かったか、でしょ? 正直、よくわかんない」
「……はぁ? わかんない、だと?」
桜のはっきりしない答えに、雪月は目を細め、桜を責めるように見つめる。そんな雪月の表情に、桜は慌てて両手を振り、今しがた自分が口にした言葉を否定した。
「あ、ごめん! えっと、違くて……えーっと、なんて言うか……足を投げてくれたことは感謝してる。今思えばあれが翼だって言われて、納得できるような、なんかちょっと違うって思うような感じ、かな? 翼っぽいけど、なんか別のものが混じってる感じなのかなぁ? うーむ。出会った瞬間は色々ありすぎて曖昧な事しか言えないけど……。あいつが翼だって言うなら、もう一度会いたいって思う。えーっと、伝わる……かな?」
そして、拙いながらも言葉を紡ぎ、精一杯今の気持ちを雪月に伝えた。正直、こんな拙い言葉で伝わってくれるとは桜は思っていない。今ほど自分の知識不足を恨んだことはないだろうな。と、桜は内心後悔していた。
「……そうか。ならば俺から言うことは何もない。……今まで通り、好きにするといいさ。所詮、俺はお前の道具にしか過ぎんのだからな」
だが、雪月の返事は素っ気ないもので、桜は困惑した。てっきりいつものように呆れ顔でため息をつかれるかと思っていたのだ。だがその予想は外れ、雪月は何度目かの自虐をして、話を無理やり終わらせた。
「なっ! そっちから質問してきたくせに、そんな素っ気ない返事あるー!? 確かに私の説明も悪かったけど! 後、雪月君は道具じゃないからーーーっ!」
「あー悪かった悪かった。お前が馬鹿なのはよーくわかったから。ってか俺の事より郡空のことはいいのか? 早く運んでやった方がいいんじゃないか?」
そんな雪月の適当な態度に腹を立てた桜だったが、空のことを持ち出されると罰が悪そうに唇を噤んだ。現在の時刻は、高校生といえど、そろそろ帰らないと、まずい時間帯。なので、桜は釈然としない気持ちながらも、不満を飲み込むことにした。
「ぐぅ……。確かに。でも私、空の住んでる施設知らないんだけど、雪月君知ってる?」
「あーー。その事なんだが……。ひとまずお前の家に向かう。説明は着いてからする」
そう言って雪月は踵を返し、桜の返事を待たずに歩みを進めた。
「うぇ!? ま、待ってよー!」
そして、桜はそんな雪月の背中を急いで追いかけていったのだった。
空が気絶した後、桜は空を背中に抱え、今まで無視をし続けていた雪月の方を見やる。そして、満面の笑みを雪月に向けた。
先程の光景に唖然としていた雪月だったが、桜の言葉で我に返り、言葉を紡ぐ。
「あ……? あぁ、そうか。役に立ったのならいい。俺はお前の『道具』だからな」
「道具って……。神様が言った事そのまま鵜呑みにしてるの? 雪月君は道具じゃないよ?」
雪月の言葉に、桜は呆れたようにその言葉を否定する。しかし、雪月は桜の返しに少しだけ眉を顰めた後、目を伏せ、ため息を吐いた。
「……そりゃどうも。月並みな言葉だな。だがな、お前が何と言おうと、神の言葉は絶対だ。俺はそう言う存在なんだよ」
「ふぅん……? そっか。じゃあ先に謝っとくね。道具として扱えなくてごめんなさいっ! 私、雪月君を友達だって思っちゃった! だから、道具として扱うとか絶対無理!」
「ッ!? は……」
雪月の返しに、桜は全く動じることなく満面の笑みで謝罪する。そんな桜の様子に、雪月は絶句したように口をあんぐりと開け、桜を見やった。
そんな雪月の反応に、桜は首を傾げ、本気で不思議そうに目を丸くして雪月を見やる。
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「そんな事言われたって、そう思っちゃったんだから仕方なくない!? ってか、別に雪月君を敵だなんて思ってないし! ふぃくさー? ってのもよくわかんないし、なんで翼がああなったか知らないけど! 君が無理やり翼にあんなことさせてるわけじゃないってのは君を見てたらわかるよ?」
「なっ……。なん……で、お前に、そんなことが……」
「えっ、流石に分かるよ!? すっごく翼の事気にかけてたじゃん。雪月君って案外感情を隠せないタイプだよね?」
桜のまさかの発言に、雪月は口を金魚の様にパクパクさせ、言葉を失う。
隠せていると、バレるはずがないと高を括っていた感情だった。それがこうも簡単に暴かれてしまい、雪月は思考が回らなくなる。
一向に口を開こうとしない雪月にしびれを切らした桜は、無遠慮に雪月との距離を縮めた。そして眉を顰め、不機嫌を隠そうともしない表情を浮かべ、桜は口を開く。
「もう! そう言うところが分かりやすいんだよ! いつもは無表情決め込んでるけど、すぐ崩すんだから……。あのね? 私だって雪月君をいじめたいわけじゃないんだよ? でも、雪月君が傷ついてるのに傷ついてないフリするのは無視できない。私は、雪月君が心配なの」
「……お人よしめ。何故俺に構う? 人の見た目をしているからか? 対話ができるからか? 俺は結局、神に言われたら簡単に人を殺すし、お前を裏切るぞ?」
桜の真摯な言葉に、雪月は自嘲気味に言葉を返す。そんな雪月の態度に、桜は深くため息を吐き、銀世界に広がる雪の様に真っ白な彼の瞳を真っ直ぐとらえる。
「はぁぁぁぁ。このやり取り何回かした気がするよ? でも、わからないなら何百回でも言ってあげるよ。私は! 西連寺桜は! 雪月君が何者であろうと友達だって思ってるし、救いたいって思ってる! 今は口だけになってるけど、絶対君を神から解放する。雪月君にはもっと笑ってほしいし、私を友達だって、ちゃんと思ってほしいの!」
「……ッ。理解不能だ……。もういい。俺には俺の事情がある。……俺の事より、他に考えることがいっぱいあるんじゃないか? この場から逃走した戸倉柊夜のこととか、大好きな東雲翼のことでも考えたらどうだ? せっかく会えたって言うのに、気づきもしないなんて、案外白状だな?」
「うぇっ!? あっ! ほんとだ! いつの間に!? って、私翼に会ってたの!? い、何時!? 情報量多すぎだよーーーッ!」
拗ねたように桜の手を軽く払い、雪月は彼女を睨む。そして、桜の想像していなかった衝撃の事実を突きつけてきたのだ。
当然、桜は目を丸くし雪月に詰寄る。そんな桜の様子に、雪月は少しだけ得意げな表情をして、桜を見やった。
「やはり気づいていなかったか? まぁ、そんなものだ。あいつは今、その放っている気すら、人間には耐えられないものだからな。……恐ろしかっただろ? あの、甲冑の男は」
「……え? あの趣味の悪そうな甲冑? の人が……翼?」
桜が目を丸くして雪月の言葉に驚いていると、先程まで嘲るような顔をしていた雪月の顔が一転、その表情を曇らせる。
「えっ……。しゅ、趣味が悪い……のか? そう、か。そう見えるのか……」
「うぇ、だって全身重たそうに着込んじゃってるし……。絶対もっと身軽な方が戦いやすくない?」
「いやそんなことは無い! 確かに本来甲冑とは重量があり、身軽に動けないものだ。だが、俺たちから言わせてもらえば甲冑の重さくらい羽の重さと変わりはしない。甲冑の魅力は肉体のみならず真実すら包み隠せそうな存在感とフォルム、そして輝きがある! 言わば圧倒的強者にこそ許された装備とも言える! ……と、お、思ってるんじゃないか? いや、俺には人間のことなど全くわからんがっ」
桜の『趣味が悪い』という言葉を、雪月は力強く甲冑について熱弁し、否定する。しかし、次の瞬間には目を泳がせて全く説得力のない言葉を紡いだ。あそこまで熱弁しておいて自分の感想ではない、との言い分は流石に桜も信じられなかった。
……そういえば、雪月君も最初会った時、似たような物していたな……。あの時はヘンテコな仮面だな。くらいにしか思ってなかったけど、あれって甲冑って言うのか……。あれ、もしかして雪月君気に入っていたのかな……? と、桜は心の中で思い、雪月に対して申し訳ない気持ちが湧いてきた。
なんであれ、人の趣味をバカにしてしまったのには違いない。そう思い、桜は眉を下げて、雪月に対して頭を下げた。
「ごめん! 雪月君の趣味をバカにして……! 大丈夫。確かに甲冑は動きにくそうだけど、防御面は凄そうだし! 強そうな雰囲気も出てると思うから!」
「へ? あ、あぁ……そう、だな? いや、別に俺の趣味じゃないぞ!?」
「えぇー! 絶対嘘だぁー! めっちゃ熱弁してたじゃん! 翼が言ってたなんて雰囲気じゃないくらいやばめに!」
「……うっ……う、うるさい。それはお前の気のせいだ! そんなことより、話が逸れてるぞ! 結局お前は翼を恐れたのか?」
自分の不利を悟った雪月は、顔をリンゴの様に赤面させ、無理やり話題を最初に戻した。その事に桜は納得いかず、深くため息を吐く。しかし、このまま雪月にそんな誤解されたままというのも嫌だったので、仕方なく質問に答えることにした。
「うーむ、あの甲冑の翼が怖かったか、でしょ? 正直、よくわかんない」
「……はぁ? わかんない、だと?」
桜のはっきりしない答えに、雪月は目を細め、桜を責めるように見つめる。そんな雪月の表情に、桜は慌てて両手を振り、今しがた自分が口にした言葉を否定した。
「あ、ごめん! えっと、違くて……えーっと、なんて言うか……足を投げてくれたことは感謝してる。今思えばあれが翼だって言われて、納得できるような、なんかちょっと違うって思うような感じ、かな? 翼っぽいけど、なんか別のものが混じってる感じなのかなぁ? うーむ。出会った瞬間は色々ありすぎて曖昧な事しか言えないけど……。あいつが翼だって言うなら、もう一度会いたいって思う。えーっと、伝わる……かな?」
そして、拙いながらも言葉を紡ぎ、精一杯今の気持ちを雪月に伝えた。正直、こんな拙い言葉で伝わってくれるとは桜は思っていない。今ほど自分の知識不足を恨んだことはないだろうな。と、桜は内心後悔していた。
「……そうか。ならば俺から言うことは何もない。……今まで通り、好きにするといいさ。所詮、俺はお前の道具にしか過ぎんのだからな」
だが、雪月の返事は素っ気ないもので、桜は困惑した。てっきりいつものように呆れ顔でため息をつかれるかと思っていたのだ。だがその予想は外れ、雪月は何度目かの自虐をして、話を無理やり終わらせた。
「なっ! そっちから質問してきたくせに、そんな素っ気ない返事あるー!? 確かに私の説明も悪かったけど! 後、雪月君は道具じゃないからーーーっ!」
「あー悪かった悪かった。お前が馬鹿なのはよーくわかったから。ってか俺の事より郡空のことはいいのか? 早く運んでやった方がいいんじゃないか?」
そんな雪月の適当な態度に腹を立てた桜だったが、空のことを持ち出されると罰が悪そうに唇を噤んだ。現在の時刻は、高校生といえど、そろそろ帰らないと、まずい時間帯。なので、桜は釈然としない気持ちながらも、不満を飲み込むことにした。
「ぐぅ……。確かに。でも私、空の住んでる施設知らないんだけど、雪月君知ってる?」
「あーー。その事なんだが……。ひとまずお前の家に向かう。説明は着いてからする」
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