STAY GOLD(黄金旅程)/その他の短編

河内ひつじ

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いちご白書を一度

その2 いちご白書を一度 2

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今日は土曜日だったので、僕は午後から自転車に乗って町のアーケード商店街に一人で買い物に出掛けた。

本屋に立ち寄って店を出た時に店の前で部活帰りだった同じクラスの市原朋子とばったり顔を合わせた。

僕と市原朋子はクラスでは同じ班で席も隣合っていたけれど、僕は先月の中学3年始業時に転校して来たばかりだったので、この町で学校以外の場所でクラスの女の子と出会ったりするのは初めてだった。

僕と彼女は書店の前で少し立ち話をした。

先月引っ越して来たばかりの僕の家は町の中心部からそれほど離れていない住宅地の中にあったけれど彼女の家は町から南の方へ少し外れた場所にあると彼女は言った。

彼女の家がある辺りからさらにもう少し南に行った所に見えている半島の山には瀬戸内海の景色が良く見渡せる展望台があると聞いた事はあるけれど僕はまだその展望台には行ってみた事がなかった。

「海や島が良う見えて景色がええ所じゃけえな。いっぺん行ってみたらエエわ」

市原朋子が言った。

「それやったら明日の日曜日にでも一緒にその展望台に行ってみん?もし迷惑やなかったらやけど」

僕は思い切って言ってみた。

僕は中学3年生で今年の7月には15歳の誕生日を迎える事になっていたけれど女の子をデートに誘ってみたりするのは生まれて初めての事だった。

「ウチと一緒に?川本クンと2人で?」

市原朋子が驚いた表情で聞き返した。

彼女は少しの間考え込む表情だったけれど、すぐに表情を曇らせた。

「明日はちょっと家で手伝いとかがあるけえ駄目じゃわ」

彼女は言った。

「そうなんか」

僕は少し気落ちするとともにいきなり急にそんな事を言い出さない方が良かったかも知れないと少し後悔した。

「じゃけど今日じゃったらもう特にする事も無いけえ、何じゃったら今から一緒に展望台に行ってみる?」

少し経ってから市原が言った。

「今から?」

今度は僕が少し驚いて聞き返した。

「うん。じゃけど自転車じゃあ、あそこまでよう登って行かれんけえ電車で展望台に一番近い駅まで行ってそこから登って行くしか無いわ。ウチはその前にいっぺん家に戻って着替えて来んといけんけど」

市原は言った。

そういう訳で市原朋子は服を着替える為に一度家に戻り、僕は彼女の家から近いこの駅で彼女が来るのを待っている事になった。
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