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第2話 最悪の出会い
〇
翌朝、窓の外は雲ひとつない青空だった。けれど、わたしの心は重く沈んでいた。昨夜の出来事が、まるで夢のように遠くて、思い出すたびに胸がざわつく。あの夜、アレクシス殿下は確かにわたしの名前を呼び、まっすぐに目を見て言葉をくれた。それは一生の宝物のように思える一方で、「きっとあれは一夜限りの同情にすぎない」と、もうひとりの自分が冷たく囁いてくる。
侍女のメアリが髪を梳きながら、「今夜の茶会には出席なさるのですか」と聞いた。答えに詰まるわたしを、鏡の中の自分が見つめ返す。うっすらとした隈が残っていて、頬も少しこけて見えた。昨夜は眠れなかったのだ。殿下の言葉が頭の中をぐるぐると回って、心は高鳴ったり沈んだりを繰り返していた。
「出席します。……逃げるわけにはいかないわ」
自分に言い聞かせるようにそう告げると、メアリは小さく微笑んだ。
「きっと、いいことが起こりますよ。運命は、努力した人に微笑むものですから」
そんな言葉を信じたことは、今までなかった。けれど、昨夜の出来事が、わたしの中に小さな“信じてみたい”という気持ちを芽生えさせていた。
◇
夕暮れの王都は、舞踏会の夜とはまた違う華やかさに包まれていた。石畳の道を馬車が行き交い、街灯が一つ、また一つと灯る。わたしの馬車もゆっくりとその道を進み、やがて目的地である侯爵家の屋敷に辿り着いた。今夜は侯爵夫人主催の茶会。参加者は限られているが、社交界での影響力は大きい。わたしのような“端の令嬢”にとっては、居心地のいい場ではない。
けれど、足を止めてはいけない。昨夜、殿下の言葉を受け取った以上、ここで逃げればあの言葉まで嘘になってしまう。
大理石の階段を上がると、会場はすでに香水の匂いと笑い声で満ちていた。壁にかかった大きな肖像画の下で、セリーヌが扇を手に談笑しているのが見える。彼女はこちらに気づくと、わざとらしいほど大げさな笑顔を浮かべた。
「まあ、レティシアではありませんか。今夜も来られたのね。勇気があると言うべきかしら、それとも……無神経と言うべきかしら?」
「ごきげんよう、セリーヌ様。お変わりないようで何よりですわ」
あえて淡々と答えると、取り巻きたちは一斉に笑い声を上げた。小鳥のさえずりのようなその笑いが、わたしの神経を逆撫でする。けれど、もう怯えてはいけない。昨夜、自分の“誇り”を守ると決めたのだ。
「ねえ、皆さま。ご存じ? この方、昨日の舞踏会で“殿下に助けていただいた”らしいのよ。まるで捨てられた子猫みたいに、かわいそうだったそうですわ」
セリーヌの声が広間に響き、ざわめきが走る。笑いを堪える者、冷ややかな目を向ける者。視線の刃が一斉にわたしを刺す。胸の奥がじりじりと焼けるように熱くなったが、それでも顔を上げて言葉を返した。
「ええ、殿下はとてもお優しい方ですから。誰にでも親切にしてくださいますの」
わたしの返答に、セリーヌの口元がぴくりと動いた。思い通りの反応が得られなかった苛立ちが、表情の端に滲む。
「……そう。でも、優しさに甘えてばかりではいけませんわね。自分の立場をわきまえないと、恥をかくのはご本人ですもの」
「その通りですわ。ですから、わたくしも“わきまえる”よう努力いたします。人を踏み台にして自分を高く見せるような真似は、決していたしません」
わずかな沈黙。取り巻きのひとりが小さく息を呑む音が聞こえた。セリーヌの笑顔は崩れなかったが、瞳の奥には明らかな怒りが宿っていた。
「まあ、口が達者になったのね」
「おかげさまで」
皮肉と皮肉がぶつかり合う中、ふと、広間の入り口に人々の視線が集まった。次の瞬間、ざわめきが波のように広がる。振り向けば、そこに――またしても、アレクシス殿下の姿があった。
殿下の登場はいつも唐突で、そして空気を一瞬で変える。先ほどまで笑っていた令嬢たちが息を呑み、貴族の男たちは一斉に姿勢を正す。わたしの胸もまた、強く鼓動を打った。
「皆さま、楽しんでおられますか?」
殿下は穏やかな笑みを浮かべ、ゆっくりと歩を進めた。その視線が一瞬、わたしを捉える。ほんの一瞬なのに、すべてが静止したような錯覚に陥る。
そして――そのまま、彼はわたしの方へ歩いてきた。
「レティシア嬢。昨日はゆっくりお話できませんでしたね」
「で、殿下……!」
周囲がざわつく。まさか王太子が、真っ先に“彼女”のもとへ向かうなど、誰が想像しただろう。セリーヌの顔色が、みるみるうちに青ざめていくのがわかった。
「少し、お時間をいただけますか?」
「は、はい。もちろんです……!」
殿下は差し出した手を、当然のようにわたしの手に添える。その瞬間、空気がひやりと凍った。セリーヌを含むすべての視線がわたしに集中し、誰もが信じられないといった表情でこちらを見ている。
「ま、待ってください殿下! その方は……!」
セリーヌの声が震えていた。怒りでも嫉妬でもない、もっと深い場所から湧き上がる恐怖のような震えだ。殿下は振り返り、ゆっくりと口を開く。
「この方が、どうかしましたか?」
静かな声。しかしその一言が、広間の空気を一変させた。誰もが息を潜め、セリーヌでさえ次の言葉を失っている。
――その瞬間、わたしは悟った。
昨夜の出来事は、ただの夢ではなかったのだ。
そして、ここからすべてが変わり始める。
△
広間の中心で、すべての視線が一点に集まっていた。王太子アレクシス殿下がわたしの手を取ったまま、周囲を見回す。その眼差しは穏やかだが、確固たる威厳を帯びていて、誰ひとりとして軽口を挟める空気ではなかった。わたしは手のひらがじんわりと熱を帯びるのを感じながら、何とか冷静を装って呼吸を整える。
「殿下……どうして、私のところへ?」
思わず口から零れた問いに、殿下はほんの少しだけ眉を上げた。
「どうして? それは、あなたともっと話がしたかったからですよ」
――簡潔で、まっすぐな答えだった。
信じられないほど自然に、そして迷いのない声音でそう言われて、わたしは言葉を失う。周囲がざわつき、取り巻きたちの扇が一斉に止まった音が聞こえた。信じられない、という囁きが波紋のように広がっていく。
「そんな……光栄すぎます。ですが、私などとお話ししても、つまらないでしょうに」
「“私など”と言うのはやめましょう。あなたはあなたです。価値は他人が決めるものではありませんよ」
静かに、けれど力強く告げられた言葉が、心の奥に響いた。昨日から何度も打ち砕かれた自尊心のかけらが、少しずつ形を取り戻していくような感覚があった。
セリーヌが、その沈黙に耐えかねたように口を開く。
「殿下……その方は、子爵家のご令嬢とはいえ、社交界ではほとんどお付き合いのない方ですのよ。お話し相手として相応しいとは――」
「セリーヌ嬢」
殿下の声が、刃のように鋭く空気を裂いた。たった一言、名前を呼ばれただけで、彼女は息を呑んで口を噤む。まるで王命に背くことが許されないような、圧倒的な威圧感がそこにはあった。
「“相応しい”かどうかを決めるのは、あなたではありません。私がそう望んでいる、それだけで十分です」
その言葉は、雷鳴のように広間に響き渡った。今まで彼に媚び、取り入ろうとしていた令嬢たちの顔から血の気が引いていくのがわかる。誰もが、殿下の興味が“子爵令嬢”という存在へと向いた現実を突きつけられ、言葉を失っていた。
セリーヌは笑顔を取り繕おうとしたが、その唇はわずかに震えていた。
「……ご、ご無礼をお許しくださいませ。もちろん、殿下のご判断が最も尊いものでございますわ」
「理解していただければ結構です」
淡々と告げた殿下は、もう一度わたしに向き直った。瞳の奥には、誰に対しても向けたことのない柔らかな光が宿っているように見える。
「レティシア嬢、少し歩きませんか? この茶会は少々……退屈でしょう」
心臓が跳ねた。誘われているのだ。王太子から、自分と時間を共にしてほしいと。
わたしは一瞬ためらい、次の瞬間には小さく頷いていた。
「よろこんで」
殿下が手を差し伸べ、わたしがそれを取ると、二人で静かに歩き出した。ざわめきは背後に残り、廊下を抜けて庭園へと出る。夜風が頬を撫で、遠くで鐘の音が響く。ほんの数分前まで、笑われ、踏みにじられるだけだったわたしが、今は王国で最も高貴な人の隣を歩いている――その事実が、現実だとは信じがたい。
「驚いていますか?」
「……ええ、とても」
「私もですよ。人を見て、ここまで惹かれたのは初めてです」
何気なく告げられた言葉に、思わず立ち止まりそうになる。彼は歩みを緩めず、わたしの方を見ずに続けた。
「昨日の舞踏会で、あなたが笑われながらも背筋を伸ばしていた姿が、ずっと脳裏から離れませんでした。あの場にいた誰よりも、あなたは堂々としていた」
「そんな……私は、ただ、恥をかかないように必死で……」
「それが美しいのです。誇りを失わずにいるということは、簡単なことではありません。多くの者は嘲りに屈し、群れに迎合する。それが“常識”だと自分を納得させて」
殿下の声は静かで、まるで誰かの過去を悔いるような響きを帯びていた。彼自身も、何かを失い、何かに抗ってきたのだろうか。ふと、そんな想像が胸をよぎる。
「レティシア嬢、私は……あなたともっと話がしたい。今夜だけで終わらせたくないのです」
言葉が喉に詰まった。信じられないほど真剣な眼差しが、わたしの心をまっすぐ射抜く。社交辞令でも、憐れみでもない――それは、彼自身の意志だった。
「……私も、殿下とお話しできて嬉しいです」
絞り出すように言葉を返すと、彼は安心したように笑った。
その笑顔は、昨日よりも近く、あたたかく、そして危険なほど心を揺さぶった。
「では、また近いうちにお会いしましょう。次は……きっと、もっと長く」
庭園の奥から侍従が殿下を呼ぶ声が聞こえる。彼は名残惜しそうに手を離し、振り返ってわたしに微笑んだ。
「レティシア嬢。あなたの瞳には、強さと優しさがある。その光を、どうか消さないでください」
そう言い残して去っていく背中を、わたしはただ見つめることしかできなかった。夜風が頬を撫で、胸の奥がじんわりと熱くなる。
――これが、最悪の出会いのはずだった。
けれど、どうしようもなく、心は彼に向かって動き出していた。
もう、後戻りできないところまで。
◇
その夜、屋敷に戻ったわたしは、玄関をくぐってからずっと胸がざわついていた。馬車の中でも、食堂で出された夕食を前にしても、殿下の声が耳の奥でこだまして消えない。まるで心の奥に、彼の言葉が刻まれてしまったかのようだった。「あなたともっと話がしたい」「その光を消さないで」――あのひとことひとことが、何度も蘇っては鼓動を早める。
夜着に着替え、ベッドの端に腰を下ろすと、窓から差し込む月の光が白く床を照らしていた。静かな夜だった。遠くの鐘の音さえ聞こえず、屋敷の中はすべてが眠っている。わたしだけが、ひとり眠れずにいた。
「……殿下が、わたしなんかに……」
声に出してみても、現実感はなかった。昨夜まで“社交界の笑い者”でしかなかった自分に、王国の未来を背負う人が興味を持つなんて、ありえないことだ。もしかしたら、ただの同情なのかもしれない。たまたま目に留まったから、少し話しかけてくれただけなのかもしれない。
――でも、それなら、なぜわざわざ私の手を取ってくれたのだろう。
――なぜ、あんな真剣な眼差しで、「また会いましょう」と言ってくれたのだろう。
思考が堂々巡りを始め、胸の奥が落ち着かなくなる。わたしは枕を抱きしめたまま、子どもの頃の自分を思い出していた。幼い頃から社交界では肩身が狭く、招待状もほとんど届かなかった。父が借金に苦しみ、母は病弱で、わたしはずっと「貧乏子爵家の娘」と呼ばれてきた。どれだけ努力しても、それだけで周囲は壁を作り、笑いながら見下ろしてきたのだ。
――そんな私のことを、「誇り高い」と言ってくれた人が、初めて現れた。
胸の奥で、長いあいだ閉ざされていた小さな扉がきしむ音がした。あれほど世界が冷たくて、暗くて、孤独だと信じていたのに、もしかしたら少しだけ温かさがあるのかもしれない。そんな希望が、静かに芽を出していく。
「……もし、またお会いできるのなら……」
口の中でつぶやいた言葉が、思いのほか甘く響いた。願ってはいけない、と心のどこかで分かっている。身分が違いすぎる。彼は王になる人で、わたしはただの子爵家の娘だ。交わるはずのない世界――それでも、ほんの一瞬だけ夢を見てもいいのだろうか。
月が雲に隠れ、部屋が静かな闇に沈んでいく。まぶたを閉じると、殿下の笑顔が浮かんだ。優しくて、少しだけ寂しそうな笑顔。あの表情を思い出すたびに、胸の奥がくすぐったくなって、眠れない夜がさらに長くなる。
◇
翌朝、いつも通り朝食の席に座っても、心はどこか上の空だった。父は領地の収支の話をしていたが、内容がまるで頭に入ってこない。パンをちぎっては口に運び、スープを飲んでは溜息をつく。メアリが不思議そうな顔でわたしを見ていた。
「昨夜、何か良いことでもあったのですか?」
「え? どうして?」
「レティシア様、今朝からずっと笑っていますよ」
「……えっ、うそ」
思わず口元を手で押さえる。意識していなかったけれど、どうやら自然と頬が緩んでいたらしい。恥ずかしくなって俯くと、メアリは意味ありげな笑みを浮かべた。
「まあ、いいことですわ。ずっと笑顔を忘れておられましたもの。ようやく“本当の顔”に戻られましたね」
“本当の顔”――その言葉が妙に心に残った。たしかに、社交界で嘲られ続けるうちに、笑顔なんて作れなくなっていたのかもしれない。けれど今、ほんの少しだけ、そんな自分が変わりつつあるのを感じている。
それはきっと、あの人の言葉がくれた勇気のせいだ。
たった一度の出会いで、わたしの世界は少しずつ色を取り戻し始めていた。
◇
その日の昼下がり、屋敷に一通の手紙が届いた。差出人の名を見て、息が止まる。王宮の紋章――そしてその下に記されているのは、「アレクシス・ヴァルデン」の署名だった。
「……殿下、から……?」
封を開ける手が震える。中には短い文が綴られていた。
“次の舞踏会で、またあなたと話ができることを楽しみにしています。
どうか、その美しい瞳を伏せず、堂々と立っていてください。”
読み終えた瞬間、胸が熱くなって、涙が溢れそうになる。こんな手紙をもらったのは、生まれて初めてだった。わたしという人間を「見てくれている」と、はっきりと感じられる言葉。
手紙を胸に抱きしめながら、わたしは小さく笑った。
「……また、お会いできるんだわ」
それは希望という名の灯火だった。
もう、どれだけ笑われても、どれだけ蔑まれても、きっとわたしは顔を上げていられる。
あの人が、わたしの名前を呼んでくれたあの瞬間を、信じていられるから。
――そして、その灯火は、この先、思いもよらない未来へとわたしを導いていくことになるのだった。
〇
翌朝、窓の外は雲ひとつない青空だった。けれど、わたしの心は重く沈んでいた。昨夜の出来事が、まるで夢のように遠くて、思い出すたびに胸がざわつく。あの夜、アレクシス殿下は確かにわたしの名前を呼び、まっすぐに目を見て言葉をくれた。それは一生の宝物のように思える一方で、「きっとあれは一夜限りの同情にすぎない」と、もうひとりの自分が冷たく囁いてくる。
侍女のメアリが髪を梳きながら、「今夜の茶会には出席なさるのですか」と聞いた。答えに詰まるわたしを、鏡の中の自分が見つめ返す。うっすらとした隈が残っていて、頬も少しこけて見えた。昨夜は眠れなかったのだ。殿下の言葉が頭の中をぐるぐると回って、心は高鳴ったり沈んだりを繰り返していた。
「出席します。……逃げるわけにはいかないわ」
自分に言い聞かせるようにそう告げると、メアリは小さく微笑んだ。
「きっと、いいことが起こりますよ。運命は、努力した人に微笑むものですから」
そんな言葉を信じたことは、今までなかった。けれど、昨夜の出来事が、わたしの中に小さな“信じてみたい”という気持ちを芽生えさせていた。
◇
夕暮れの王都は、舞踏会の夜とはまた違う華やかさに包まれていた。石畳の道を馬車が行き交い、街灯が一つ、また一つと灯る。わたしの馬車もゆっくりとその道を進み、やがて目的地である侯爵家の屋敷に辿り着いた。今夜は侯爵夫人主催の茶会。参加者は限られているが、社交界での影響力は大きい。わたしのような“端の令嬢”にとっては、居心地のいい場ではない。
けれど、足を止めてはいけない。昨夜、殿下の言葉を受け取った以上、ここで逃げればあの言葉まで嘘になってしまう。
大理石の階段を上がると、会場はすでに香水の匂いと笑い声で満ちていた。壁にかかった大きな肖像画の下で、セリーヌが扇を手に談笑しているのが見える。彼女はこちらに気づくと、わざとらしいほど大げさな笑顔を浮かべた。
「まあ、レティシアではありませんか。今夜も来られたのね。勇気があると言うべきかしら、それとも……無神経と言うべきかしら?」
「ごきげんよう、セリーヌ様。お変わりないようで何よりですわ」
あえて淡々と答えると、取り巻きたちは一斉に笑い声を上げた。小鳥のさえずりのようなその笑いが、わたしの神経を逆撫でする。けれど、もう怯えてはいけない。昨夜、自分の“誇り”を守ると決めたのだ。
「ねえ、皆さま。ご存じ? この方、昨日の舞踏会で“殿下に助けていただいた”らしいのよ。まるで捨てられた子猫みたいに、かわいそうだったそうですわ」
セリーヌの声が広間に響き、ざわめきが走る。笑いを堪える者、冷ややかな目を向ける者。視線の刃が一斉にわたしを刺す。胸の奥がじりじりと焼けるように熱くなったが、それでも顔を上げて言葉を返した。
「ええ、殿下はとてもお優しい方ですから。誰にでも親切にしてくださいますの」
わたしの返答に、セリーヌの口元がぴくりと動いた。思い通りの反応が得られなかった苛立ちが、表情の端に滲む。
「……そう。でも、優しさに甘えてばかりではいけませんわね。自分の立場をわきまえないと、恥をかくのはご本人ですもの」
「その通りですわ。ですから、わたくしも“わきまえる”よう努力いたします。人を踏み台にして自分を高く見せるような真似は、決していたしません」
わずかな沈黙。取り巻きのひとりが小さく息を呑む音が聞こえた。セリーヌの笑顔は崩れなかったが、瞳の奥には明らかな怒りが宿っていた。
「まあ、口が達者になったのね」
「おかげさまで」
皮肉と皮肉がぶつかり合う中、ふと、広間の入り口に人々の視線が集まった。次の瞬間、ざわめきが波のように広がる。振り向けば、そこに――またしても、アレクシス殿下の姿があった。
殿下の登場はいつも唐突で、そして空気を一瞬で変える。先ほどまで笑っていた令嬢たちが息を呑み、貴族の男たちは一斉に姿勢を正す。わたしの胸もまた、強く鼓動を打った。
「皆さま、楽しんでおられますか?」
殿下は穏やかな笑みを浮かべ、ゆっくりと歩を進めた。その視線が一瞬、わたしを捉える。ほんの一瞬なのに、すべてが静止したような錯覚に陥る。
そして――そのまま、彼はわたしの方へ歩いてきた。
「レティシア嬢。昨日はゆっくりお話できませんでしたね」
「で、殿下……!」
周囲がざわつく。まさか王太子が、真っ先に“彼女”のもとへ向かうなど、誰が想像しただろう。セリーヌの顔色が、みるみるうちに青ざめていくのがわかった。
「少し、お時間をいただけますか?」
「は、はい。もちろんです……!」
殿下は差し出した手を、当然のようにわたしの手に添える。その瞬間、空気がひやりと凍った。セリーヌを含むすべての視線がわたしに集中し、誰もが信じられないといった表情でこちらを見ている。
「ま、待ってください殿下! その方は……!」
セリーヌの声が震えていた。怒りでも嫉妬でもない、もっと深い場所から湧き上がる恐怖のような震えだ。殿下は振り返り、ゆっくりと口を開く。
「この方が、どうかしましたか?」
静かな声。しかしその一言が、広間の空気を一変させた。誰もが息を潜め、セリーヌでさえ次の言葉を失っている。
――その瞬間、わたしは悟った。
昨夜の出来事は、ただの夢ではなかったのだ。
そして、ここからすべてが変わり始める。
△
広間の中心で、すべての視線が一点に集まっていた。王太子アレクシス殿下がわたしの手を取ったまま、周囲を見回す。その眼差しは穏やかだが、確固たる威厳を帯びていて、誰ひとりとして軽口を挟める空気ではなかった。わたしは手のひらがじんわりと熱を帯びるのを感じながら、何とか冷静を装って呼吸を整える。
「殿下……どうして、私のところへ?」
思わず口から零れた問いに、殿下はほんの少しだけ眉を上げた。
「どうして? それは、あなたともっと話がしたかったからですよ」
――簡潔で、まっすぐな答えだった。
信じられないほど自然に、そして迷いのない声音でそう言われて、わたしは言葉を失う。周囲がざわつき、取り巻きたちの扇が一斉に止まった音が聞こえた。信じられない、という囁きが波紋のように広がっていく。
「そんな……光栄すぎます。ですが、私などとお話ししても、つまらないでしょうに」
「“私など”と言うのはやめましょう。あなたはあなたです。価値は他人が決めるものではありませんよ」
静かに、けれど力強く告げられた言葉が、心の奥に響いた。昨日から何度も打ち砕かれた自尊心のかけらが、少しずつ形を取り戻していくような感覚があった。
セリーヌが、その沈黙に耐えかねたように口を開く。
「殿下……その方は、子爵家のご令嬢とはいえ、社交界ではほとんどお付き合いのない方ですのよ。お話し相手として相応しいとは――」
「セリーヌ嬢」
殿下の声が、刃のように鋭く空気を裂いた。たった一言、名前を呼ばれただけで、彼女は息を呑んで口を噤む。まるで王命に背くことが許されないような、圧倒的な威圧感がそこにはあった。
「“相応しい”かどうかを決めるのは、あなたではありません。私がそう望んでいる、それだけで十分です」
その言葉は、雷鳴のように広間に響き渡った。今まで彼に媚び、取り入ろうとしていた令嬢たちの顔から血の気が引いていくのがわかる。誰もが、殿下の興味が“子爵令嬢”という存在へと向いた現実を突きつけられ、言葉を失っていた。
セリーヌは笑顔を取り繕おうとしたが、その唇はわずかに震えていた。
「……ご、ご無礼をお許しくださいませ。もちろん、殿下のご判断が最も尊いものでございますわ」
「理解していただければ結構です」
淡々と告げた殿下は、もう一度わたしに向き直った。瞳の奥には、誰に対しても向けたことのない柔らかな光が宿っているように見える。
「レティシア嬢、少し歩きませんか? この茶会は少々……退屈でしょう」
心臓が跳ねた。誘われているのだ。王太子から、自分と時間を共にしてほしいと。
わたしは一瞬ためらい、次の瞬間には小さく頷いていた。
「よろこんで」
殿下が手を差し伸べ、わたしがそれを取ると、二人で静かに歩き出した。ざわめきは背後に残り、廊下を抜けて庭園へと出る。夜風が頬を撫で、遠くで鐘の音が響く。ほんの数分前まで、笑われ、踏みにじられるだけだったわたしが、今は王国で最も高貴な人の隣を歩いている――その事実が、現実だとは信じがたい。
「驚いていますか?」
「……ええ、とても」
「私もですよ。人を見て、ここまで惹かれたのは初めてです」
何気なく告げられた言葉に、思わず立ち止まりそうになる。彼は歩みを緩めず、わたしの方を見ずに続けた。
「昨日の舞踏会で、あなたが笑われながらも背筋を伸ばしていた姿が、ずっと脳裏から離れませんでした。あの場にいた誰よりも、あなたは堂々としていた」
「そんな……私は、ただ、恥をかかないように必死で……」
「それが美しいのです。誇りを失わずにいるということは、簡単なことではありません。多くの者は嘲りに屈し、群れに迎合する。それが“常識”だと自分を納得させて」
殿下の声は静かで、まるで誰かの過去を悔いるような響きを帯びていた。彼自身も、何かを失い、何かに抗ってきたのだろうか。ふと、そんな想像が胸をよぎる。
「レティシア嬢、私は……あなたともっと話がしたい。今夜だけで終わらせたくないのです」
言葉が喉に詰まった。信じられないほど真剣な眼差しが、わたしの心をまっすぐ射抜く。社交辞令でも、憐れみでもない――それは、彼自身の意志だった。
「……私も、殿下とお話しできて嬉しいです」
絞り出すように言葉を返すと、彼は安心したように笑った。
その笑顔は、昨日よりも近く、あたたかく、そして危険なほど心を揺さぶった。
「では、また近いうちにお会いしましょう。次は……きっと、もっと長く」
庭園の奥から侍従が殿下を呼ぶ声が聞こえる。彼は名残惜しそうに手を離し、振り返ってわたしに微笑んだ。
「レティシア嬢。あなたの瞳には、強さと優しさがある。その光を、どうか消さないでください」
そう言い残して去っていく背中を、わたしはただ見つめることしかできなかった。夜風が頬を撫で、胸の奥がじんわりと熱くなる。
――これが、最悪の出会いのはずだった。
けれど、どうしようもなく、心は彼に向かって動き出していた。
もう、後戻りできないところまで。
◇
その夜、屋敷に戻ったわたしは、玄関をくぐってからずっと胸がざわついていた。馬車の中でも、食堂で出された夕食を前にしても、殿下の声が耳の奥でこだまして消えない。まるで心の奥に、彼の言葉が刻まれてしまったかのようだった。「あなたともっと話がしたい」「その光を消さないで」――あのひとことひとことが、何度も蘇っては鼓動を早める。
夜着に着替え、ベッドの端に腰を下ろすと、窓から差し込む月の光が白く床を照らしていた。静かな夜だった。遠くの鐘の音さえ聞こえず、屋敷の中はすべてが眠っている。わたしだけが、ひとり眠れずにいた。
「……殿下が、わたしなんかに……」
声に出してみても、現実感はなかった。昨夜まで“社交界の笑い者”でしかなかった自分に、王国の未来を背負う人が興味を持つなんて、ありえないことだ。もしかしたら、ただの同情なのかもしれない。たまたま目に留まったから、少し話しかけてくれただけなのかもしれない。
――でも、それなら、なぜわざわざ私の手を取ってくれたのだろう。
――なぜ、あんな真剣な眼差しで、「また会いましょう」と言ってくれたのだろう。
思考が堂々巡りを始め、胸の奥が落ち着かなくなる。わたしは枕を抱きしめたまま、子どもの頃の自分を思い出していた。幼い頃から社交界では肩身が狭く、招待状もほとんど届かなかった。父が借金に苦しみ、母は病弱で、わたしはずっと「貧乏子爵家の娘」と呼ばれてきた。どれだけ努力しても、それだけで周囲は壁を作り、笑いながら見下ろしてきたのだ。
――そんな私のことを、「誇り高い」と言ってくれた人が、初めて現れた。
胸の奥で、長いあいだ閉ざされていた小さな扉がきしむ音がした。あれほど世界が冷たくて、暗くて、孤独だと信じていたのに、もしかしたら少しだけ温かさがあるのかもしれない。そんな希望が、静かに芽を出していく。
「……もし、またお会いできるのなら……」
口の中でつぶやいた言葉が、思いのほか甘く響いた。願ってはいけない、と心のどこかで分かっている。身分が違いすぎる。彼は王になる人で、わたしはただの子爵家の娘だ。交わるはずのない世界――それでも、ほんの一瞬だけ夢を見てもいいのだろうか。
月が雲に隠れ、部屋が静かな闇に沈んでいく。まぶたを閉じると、殿下の笑顔が浮かんだ。優しくて、少しだけ寂しそうな笑顔。あの表情を思い出すたびに、胸の奥がくすぐったくなって、眠れない夜がさらに長くなる。
◇
翌朝、いつも通り朝食の席に座っても、心はどこか上の空だった。父は領地の収支の話をしていたが、内容がまるで頭に入ってこない。パンをちぎっては口に運び、スープを飲んでは溜息をつく。メアリが不思議そうな顔でわたしを見ていた。
「昨夜、何か良いことでもあったのですか?」
「え? どうして?」
「レティシア様、今朝からずっと笑っていますよ」
「……えっ、うそ」
思わず口元を手で押さえる。意識していなかったけれど、どうやら自然と頬が緩んでいたらしい。恥ずかしくなって俯くと、メアリは意味ありげな笑みを浮かべた。
「まあ、いいことですわ。ずっと笑顔を忘れておられましたもの。ようやく“本当の顔”に戻られましたね」
“本当の顔”――その言葉が妙に心に残った。たしかに、社交界で嘲られ続けるうちに、笑顔なんて作れなくなっていたのかもしれない。けれど今、ほんの少しだけ、そんな自分が変わりつつあるのを感じている。
それはきっと、あの人の言葉がくれた勇気のせいだ。
たった一度の出会いで、わたしの世界は少しずつ色を取り戻し始めていた。
◇
その日の昼下がり、屋敷に一通の手紙が届いた。差出人の名を見て、息が止まる。王宮の紋章――そしてその下に記されているのは、「アレクシス・ヴァルデン」の署名だった。
「……殿下、から……?」
封を開ける手が震える。中には短い文が綴られていた。
“次の舞踏会で、またあなたと話ができることを楽しみにしています。
どうか、その美しい瞳を伏せず、堂々と立っていてください。”
読み終えた瞬間、胸が熱くなって、涙が溢れそうになる。こんな手紙をもらったのは、生まれて初めてだった。わたしという人間を「見てくれている」と、はっきりと感じられる言葉。
手紙を胸に抱きしめながら、わたしは小さく笑った。
「……また、お会いできるんだわ」
それは希望という名の灯火だった。
もう、どれだけ笑われても、どれだけ蔑まれても、きっとわたしは顔を上げていられる。
あの人が、わたしの名前を呼んでくれたあの瞬間を、信じていられるから。
――そして、その灯火は、この先、思いもよらない未来へとわたしを導いていくことになるのだった。
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