パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さくら

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第40話 全面戦争の幕開け

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 谷の戦場に静寂が訪れてから数日。勇者アルトとその仲間たちは撤退し、王都軍もいったん退いた。
 谷では死傷者の手当てが進み、子どもたちの泣き声と、それを励ます歌声が交錯していた。

「カイルさん……本当に、勇者に勝ったんですね」リナが言った。
「ああ」俺は頷いた。「だが、それは同時に――王都の怒りを買ったということだ」

 グレンが笑い飛ばす。
「へっ、勇者を倒したって話は最高だ! だが確かに……これで退く相手じゃねえな」

 セリウスは冷静に言葉を重ねる。
「王都は必ず全面戦争を仕掛けてくるでしょう。勇者譚を否定した者を放置するなど、彼らの体裁が許さない」



 その頃、王都。

「……勇者アルトが敗れただと!?」

 王の怒号が玉座の間に響き、廷臣たちが頭を垂れた。

「黒鉄の騎士ドランに続き、勇者パーティーまでもが……」
「すべて追放者ギルドの仕業にございます」

 王は拳を握り、震える声で叫んだ。
「許せぬ! 反逆者どもが王国の象徴を打ち破るなど! これはもはや戦ではない。王国の存在そのものを賭けた聖戦だ!」

 大軍の動員が決まった。各地から兵士が徴発され、物資がかき集められ、王都の街道を埋め尽くすほどの軍列が編成されていった。



 その報せが谷に届いたのは、夜。
 見張りの少年が駆け込み、叫んだ。

「カイルさん! 王都の大軍が……五万を超えるって!」

 広場が凍りついた。
 リナは両手を胸に当て、声を震わせる。
「五万……そんなの、どうやって……」

「絶望的な数ですね」セリウスが冷静に言った。
「ですが、戦術次第では勝機はあります」

 グレンは大剣を肩に担ぎ、獰猛に笑った。
「数が多かろうが関係ねえ! 斬ればいいんだ!」

「数を減らす策を考える。――段取りを間違えなければ、まだ戦える」俺は剣を握り、皆を見渡した。



 その夜。焚き火を囲み、追放者連合の旗の下で俺は声を張り上げた。

「王都はついに全面戦争を仕掛けてきた。相手は五万。だが、俺たちには仲間がいる。鍛冶師、薬師、歌い手、農夫、そして追放された勇者も」

 仲間たちが頷き、声を上げる。

「俺たちは追放者だ! だがここに居場所がある!」
「守るんだ、この国を!」
「子どもたちの未来を!」

 歓声が炎に重なり、谷全体に響いた。



 王都軍五万、追放者連合数百。
 あまりにも絶望的な戦い。
 それでも、誰も退かなかった。

 ――こうして、追放者と王国の全面戦争が幕を開けた。
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