現人神の花嫁

静木

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幸運※

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「都さん、私、逃げ損ねてしまいました」
「そうみたいだね」



 こつんと額がぶつかった。もう一度口づけをし、都は微笑んだ。



「君の匂いはとても甘いね」



 アヤの首筋にに近づいて、すん、と息を吸い込む。その度に息が荒くなり、都の様子がおかしくなっていく。



「食べてしまいたくなるような香りだ」
「金平糖と勘違いしているんですよ、きっと」



 首筋に優しく歯を立てられ、身動ぎする。傷がつかないように自制しているのだろう。思い切り噛みつきたい衝動を抑えているのがありありと伝わってくる。甘噛みをして、舌先で舐めて。繰り返し繰り返しアヤの肌を楽しんでいる。



「あの、痛くはありませんが……くすぐったいです」
「私もまだ我慢しているからね」



 でも、と都は言葉を続けた。



「いつもより発作が大きいみたいだ」



 あっという間に欲に飲まれていく都を見て今まで我慢に我慢を重ねていたのだと思い知った。



「ごめんね。あとが残らないようにするから」



 そう言って都が取り出した紐でアヤの手首を身体の前で結わえる。抵抗する間もなく、腕の自由は奪われた。



「足も縛ったら本当に逃げられないね」



 そんなことはしないと、どこか安心しきっていた無防備さを咎められた気がした。足首にもするりと容易く紐が巻き付けられていく。
 薬のせいだろうか。アヤは考えることすら放棄していた。気づいた時には自由は取り上げられて全ては手遅れ。身じろぎすることしか出来ない。



「動けないのは怖いかい」
「……少し逃げたくなりました」
「おや、今さらそんなことを言っても遅いよ」



 ねえ、と昼間の爽やかさからは考えられない熱を孕んだ声が下腹に響く。
 怪しい動きをしていた手が寝巻の隙間から入り込み、太ももを撫で上げる。



「あっ……」
「横を向いても無駄だよ」



 肌を撫でていた手がするりと動く。
 まだ敏感な場所に触れていないにも関わらず、湿り気を帯びている秘所。分かっているとばかりに都の指先が触れた。



「や、やあっ、ひあっ、都さんっ、そんなっ……!?」
「いきなりでも大丈夫みたいだね、ほら」
「ああっ!?」



 何度かぬかるみを往復していた指先がくぷりと奥へと入れ込まれる。脚を閉じてどうにか侵入を防ごうとしても肝心な場所を守るものがない。身体を横向きにしたのが悪かったと思えども腰のあたりに添えられた手に抵抗を阻まれる。



「う、あっ、……っひ……っ!?」
「うん、濡れてきてるね」



 あの日から何度も何度も都の手で達しているのだ。慣らされた身体は素直に反応してしまう。



「ひっ、そ、そこ、ダメですっ」
「この辺りだね。君にも私の運の良さをもっと知ってもらおうかな」
「えっ、なっ、何を言ってるんですか」
「私はね、別に経験が豊富なわけじゃない。ただ、君を思いっきり気持ち良くしてあげたいな、と思って触ったらどうなるかってこと」
「ひぐっ……、あ、ああっ……!?な、にこれっ!?」
「うん、この上の部分も敏感なんだね。反応がすごい」



 こり、と指先をある一点に置き、段々と圧をかけていく。じわりと広がっていく熱と溜まり続ける痺れの源泉に恐怖が背を駆け上る。



「ひっ……ダメです、都さんっ、こ、これ以上は……むりですっ……やっ!?」
「やはり、ここが一番悦いか。普段は君を怖がらせたくないと願ってしまうからね。きっと少し外れてたのだろうね」



 でも、もう私も覚えたから、という優しさに包まれた嗜虐心が恐ろしく思わす腰が引ける。
 しかし、今の都がそれを許すはずがなく、ぐり、と圧がさらに増した。



「ひぐっ……うああっ!?」
「じゃあ、たくさん気持ち良くなろうか」
「や、やだっ、それ、いやっ、いやぁぁあっ!?」
「もっとして欲しいだろう。君が物足りないのではかわいそうだからね。遠慮なく言ってくれ」
「ちがっ、ちがいますっ、もういっぱい、いっぱいだからっ……ひっ!?」
「両手だとここも一緒に弄りやすいね。ぷっくりと腫れてるのはいつも通りだけど、押し潰してみようか」
「む、むりです。これ以上うごかさないでくださっ……あああっ!?……いやっ……やぁぁっ!?」
「ああ、達したみたいだね」



 都の指が触れた瞬間、再びアヤの身体が何度も大きく痙攣する。
やだやだと首を振り、都に訴えるがその手は止まらない。ぐりぐりと円を描くように内壁の上を擦り続け、親指で腫れて大きくなった秘芽をゆったりと往復している。
 それだけでアヤは経験したことのない快楽に頭まで浸かり、はくはくと空気を求める。呼吸をしようとしても都の指に操られているかのように意思に反して声が出てしまっていた。



「ひっ、なんで、なんでぇっ……!?」
「いつもはここでおしまいにするけれど、今夜はもっともっと何度でも気持ち良くなっていいんだよ」
「や、やめっ、やめてくださいっ、都さん、都さっ……んっ、ひっ、んぁぁっ……!?」
「ひくひくして痙攣が止まらない。私に良いようにされているアヤがこんなにもかわいいなんて想像以上だよ。このまま挿れてもいいけれど……」



 ふふっ、と笑う都の目は濁り切っている。欲にまみれ、子孫を残そうとする本能が優先されてしまっていた。



「ひぁっ……んんっ……、ま、また……っ、え?」
「アヤ、勝手に達したら駄目だよ」



 頭の中がぐちゃぐちゃにかき混ぜられているかのような酷くおかしくなる感覚だった。もう少しで達することが出来たのに、どうして、という思いでいっぱいになって止まらなくなる。



「勝手に達したらどうしようか。目隠しも足そうか」
「い、いやですっ、何も見えないのは怖いですから」
「それなら頑張ってね」



 愉しそうに笑う都は慈しむように下腹を撫でた。



「ひっ、な、なにをする気ですか」
「指を増やすだけ」
「増やす……」
「そうだよ。初めてした時も指は二本だまでだったからね。苦しい思いをさせてすまなかったと思っている」



 一度引き抜かれた指が増やされ、狭い内壁を擦りながら奥へと進んでいく。



「あっ、ああっ、んっ……」
「まだ二本だけだよ」
「で、でも……っ」



 どうにか背を丸めてやり過ごそうとしても上手くいかない。隘路に押し入れられる二本の指をきつく締めあげてしまう。



「ううっ……」
「こらこら、しっかり気持ち良くなって。もっと身体の力を抜いてくれないと奥まで撫でてあげられないよ」



 先を連想させる言葉に勝手に反応してしまう身体が憎らしい。ぐぐっ、とより強く内壁を圧迫され、静かに引き抜かれる。身体を浚う波は穏やかに引いていく。じっくりと温めた身体をゆっくり鎮め、息が落ち着いた頃に再びかき乱す。追い詰められてアヤは訳が分からなくなるほどに声を上げていた。
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