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1章
1話
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苦節28年、日本のブラック企業の残業地獄で身体も心も疲れ果てていた僕は不注意で交通事故に遭い、僕は自分の生涯に幕を閉じました。
しかしなんの因果か、目覚めると精霊なんてものに転生してしまいました。
はじめはそれはもう喜びました。これで人間の鬱陶しいいざこざに巻き込まれず、ストレスフリーな人生を送れるぞ! ビバファンタジー! という風に喜びました。
そして現在、新たな生を迎えて1年が経った僕は絶賛、他の精霊にパシられ中です。
ーーーーーーーーーー
「おいっ、グレイ! 遅いぞ! ちゃんと魔林檎買ってきたんだろうな!」
精霊として第2の生を得た僕の名前は、生まれた時から灰色の髪と灰色の外套を着ていたことから【グレイ】という名を名乗っている。
今回、パシらされた魔林檎というのは、魔力が大量に詰まった林檎のような果実である。精霊の体は魔力で構成されているため、存在を維持するために魔力が必要なのである。魔力が大量に詰まった魔林檎は精霊にとって垂涎ものなのである。だから、精霊にとって高級品なのである。
「う、うん。買ってきたよ」
僕はなけなしのお金で買ってきた魔林檎を赤髪の炎の中級精霊、【シャーマ】に渡す。
「てっ、お前これ風属性の魔林檎じゃねぇか! アリシア様は闇属性の魔力しか食べないんだぞ!」
「ご、ごめん。でも闇属性の魔林檎は稀少で四大属性に比べたら、値段が倍以上で……」
四大属性とは火・水・土・風からなる世界で最も主要な魔力の属性である。そして、その他に四大属性より希少な闇・光属性などの属性がある。
「アリシア様、こいつどうしてくれやしょうか?」
そう言ってシャーマは黒い艶やかな濡羽色の髪を肩まで伸ばしている美少女、闇属性の上級精霊【アリシア】に話しかけた。
「ふっ、ふんっ! そっ、そうね……。じゃ、じゃあ……あなたがわっ私の……げっ、下僕になれば許してあげるわ!」
「そっ、そんな……そんなの無理だよ!」
くっ、くそ~~~~! なんで異世界に来てまでこんな目に遭わなきゃいけないんだ……!
はぁ……。同期の精霊のアリシアも昔は素直な子だったのに……。人間と契約してからは変わってしまった。
「そういう訳だ! こうなった以上あの約束もなしだ!」
「そ、そんな! 魔林檎を買ってくれば、僕と契約させてくれる人間を紹介してくれるって約束だったじゃないか! そのために毎日、精霊街でどぶさらいをして稼いだお金を全部つぎ込んだのに!」
そうなのだ。僕は今回、人間との精霊契約を条件にパシられたのだ。
僕は精霊の中でも最低レベルの下級精霊である。精霊というのは下級・中級・上級・帝級に分別される。さらにそこからSSS級~I級まで分かれる。帝級がSSS~S級、上級がA~C級、中級がD~F級、下級がG~I級に当たる。僕はその中の最低ランク、【I級】という訳である。
しかし、そんな僕でも精霊として成長する手段がある。それが人間との精霊契約なのだ。
「はっ! お前みたいなクズ精霊を紹介したとなっちゃ俺が契約者に見限られちまうぜ」
そう言ってシャーマを含む、アリシアの取り巻き達は僕をバカにしたように笑い、去っていく。
僕は絶望し、その場に力なく座る。
ははっ…………。せっかく異世界に転生したってのにこれだ。僕はつくづく搾取される側だ。こんな人生を続けるぐらいならば……。もはや最後の手段に賭けるしかないのか……。僕は自棄になり、ある場所へと足を運ぶ。
精霊が成長する手段は人間との精霊契約といったが実はそれだけではない。同じ精霊を倒すことによって存在の格をあげるという方法があるのだ。しかし当然、同じ精霊同士で殺し合うのは精霊の世界でも御法度である。
ただし、一つだけ精霊同士の殺しが許可されている例外がある。それが【狂精霊】である。何らかの理由で狂い、人間、精霊問わず襲いかかるようになった魔物化した精霊である。そして、精霊界で狂精霊が出た場合、上級精霊達が捕らえ、ある場所へと追放するのだ。
それが今、僕が目の前に立っている場所である。その名も【狂精の墓場】である。精霊街から遠く離れた場所に位置し、一見すると、そこはただの洞窟である。しかし、そこには洞窟の穴には虹色の結界が張っており、狂精霊を閉じ込めるための仕掛けが施されている。中は吸い込まれそうな闇が続き、様子は見れない。
僕は意を決して、【狂精の墓場】へと足を運んだ。
しかしなんの因果か、目覚めると精霊なんてものに転生してしまいました。
はじめはそれはもう喜びました。これで人間の鬱陶しいいざこざに巻き込まれず、ストレスフリーな人生を送れるぞ! ビバファンタジー! という風に喜びました。
そして現在、新たな生を迎えて1年が経った僕は絶賛、他の精霊にパシられ中です。
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「おいっ、グレイ! 遅いぞ! ちゃんと魔林檎買ってきたんだろうな!」
精霊として第2の生を得た僕の名前は、生まれた時から灰色の髪と灰色の外套を着ていたことから【グレイ】という名を名乗っている。
今回、パシらされた魔林檎というのは、魔力が大量に詰まった林檎のような果実である。精霊の体は魔力で構成されているため、存在を維持するために魔力が必要なのである。魔力が大量に詰まった魔林檎は精霊にとって垂涎ものなのである。だから、精霊にとって高級品なのである。
「う、うん。買ってきたよ」
僕はなけなしのお金で買ってきた魔林檎を赤髪の炎の中級精霊、【シャーマ】に渡す。
「てっ、お前これ風属性の魔林檎じゃねぇか! アリシア様は闇属性の魔力しか食べないんだぞ!」
「ご、ごめん。でも闇属性の魔林檎は稀少で四大属性に比べたら、値段が倍以上で……」
四大属性とは火・水・土・風からなる世界で最も主要な魔力の属性である。そして、その他に四大属性より希少な闇・光属性などの属性がある。
「アリシア様、こいつどうしてくれやしょうか?」
そう言ってシャーマは黒い艶やかな濡羽色の髪を肩まで伸ばしている美少女、闇属性の上級精霊【アリシア】に話しかけた。
「ふっ、ふんっ! そっ、そうね……。じゃ、じゃあ……あなたがわっ私の……げっ、下僕になれば許してあげるわ!」
「そっ、そんな……そんなの無理だよ!」
くっ、くそ~~~~! なんで異世界に来てまでこんな目に遭わなきゃいけないんだ……!
はぁ……。同期の精霊のアリシアも昔は素直な子だったのに……。人間と契約してからは変わってしまった。
「そういう訳だ! こうなった以上あの約束もなしだ!」
「そ、そんな! 魔林檎を買ってくれば、僕と契約させてくれる人間を紹介してくれるって約束だったじゃないか! そのために毎日、精霊街でどぶさらいをして稼いだお金を全部つぎ込んだのに!」
そうなのだ。僕は今回、人間との精霊契約を条件にパシられたのだ。
僕は精霊の中でも最低レベルの下級精霊である。精霊というのは下級・中級・上級・帝級に分別される。さらにそこからSSS級~I級まで分かれる。帝級がSSS~S級、上級がA~C級、中級がD~F級、下級がG~I級に当たる。僕はその中の最低ランク、【I級】という訳である。
しかし、そんな僕でも精霊として成長する手段がある。それが人間との精霊契約なのだ。
「はっ! お前みたいなクズ精霊を紹介したとなっちゃ俺が契約者に見限られちまうぜ」
そう言ってシャーマを含む、アリシアの取り巻き達は僕をバカにしたように笑い、去っていく。
僕は絶望し、その場に力なく座る。
ははっ…………。せっかく異世界に転生したってのにこれだ。僕はつくづく搾取される側だ。こんな人生を続けるぐらいならば……。もはや最後の手段に賭けるしかないのか……。僕は自棄になり、ある場所へと足を運ぶ。
精霊が成長する手段は人間との精霊契約といったが実はそれだけではない。同じ精霊を倒すことによって存在の格をあげるという方法があるのだ。しかし当然、同じ精霊同士で殺し合うのは精霊の世界でも御法度である。
ただし、一つだけ精霊同士の殺しが許可されている例外がある。それが【狂精霊】である。何らかの理由で狂い、人間、精霊問わず襲いかかるようになった魔物化した精霊である。そして、精霊界で狂精霊が出た場合、上級精霊達が捕らえ、ある場所へと追放するのだ。
それが今、僕が目の前に立っている場所である。その名も【狂精の墓場】である。精霊街から遠く離れた場所に位置し、一見すると、そこはただの洞窟である。しかし、そこには洞窟の穴には虹色の結界が張っており、狂精霊を閉じ込めるための仕掛けが施されている。中は吸い込まれそうな闇が続き、様子は見れない。
僕は意を決して、【狂精の墓場】へと足を運んだ。
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