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1章
8話
しおりを挟む(狂精霊の騎士……行くぞ!)
僕は再度、地面を思い切り蹴り出し、狂精霊へと肉迫する。僕は騎士との距離を一瞬で詰めると、様々な攻撃を繰り出す。
斬り上げ、斬り下ろし、一文字斬り、逆袈裟斬り。
様々な攻撃を繰り出すも、騎士はそれをことごとく弾き、逆に僕へと攻撃を繰り出す。僕はそれを【女面鳥王の眼】を最大限に使って弾く。
(この騎士……力こそ僕が上回っているけど、明らかに技量は向こうが上だ! 本当に理性を失っているのか?)
僕は騎士と一旦距離を取り、騎士の様子を見る。
(そういえば騎士のステータスを見ていなかったな……。よし、ステータス閲覧!)
僕は騎士を凝視し、そのステータスを見る。
名前 : 繧ォ繝エ繧。繝ェ繧ィ
種族 : 精霊
Lv:106
(レベル106!? なんだこのレベルは!?)
ちなみに今の僕のレベルは、
名前:グレイ
種族:せ◾︎レi
Lv:34
【無属性魔法 : Lv MAX】、【隷王の書 : Lv 1】、【女面鳥王の眼 : Lv 1】
となっており、3倍しても騎士へと届かない。僕は再度、今の状況のヤバさを認識し、額から汗が垂れる。
(……レベル106とか冗談じゃない。やっぱり【狂精の墓場】は普通じゃない……)
僕はレベル106という表示を見て、思わず後退りそうになり、立ち止まる。
(……そうだ。さっきまでは斬り合えていたんだ。何より僕はまだ本当の全力では戦っていない……!)
僕は折れそうになった心を立て直し、気合いを入れて大剣を構える。
(……怪物に殺されかけて強くなったのは何も新しいスキルや肉体だけじゃない! 【無属性魔法】だって成長したんだ!)
僕は自分に【身体強化】をかける。しかし、それは今までと違い、明らかに体全体に爆発しそうな程の力が湧くことが分かる。
(目覚めたばかりの時にやり合っていたら、負けてたかもな。でも……今の自分の力を把握した僕なら負けない!)
僕は【女面鳥王の眼】を発動し、体に満ちる力に身を任せ、騎士へと一瞬で距離を詰める。僕は距離を詰めた勢いのまま、大剣を構えて騎士へとぶつかる。
ガキンッ!僕と騎士の剣は交差する。騎士は僕のタックルに弾かれ、後ろへ飛ぶ。騎士は後ろに向かう勢いを殺せず、体をよろめかせる。
(体勢が崩れた!)
僕はチャンスと思いすかさず騎士へと追撃を加えるべく、距離を詰める。僕は大剣を上段に構え、騎士に向かって思い切り斬り下ろす。
キーンッ!しかし、騎士はよろめき、低くなった姿勢を利用して超低空から上から迫る僕の大剣を斬り上げる。
大剣を斬り上げられ、胸がガラ空きになった僕にすかさず騎士が刺突を放つ。僕は身を捩り、なんとか回避に成功する。
僕は一旦距離を取り、呼吸を整える。
「ふぅ……」
(……すごい! ちょっと体勢を崩した位じゃチャンスにもならない。でも、全体的な身体能力ではこっちが上回っているのは事実。完全に体勢を崩すまで何度でも斬り結んでやる!)
そこから先は何度も同じ光景が広がる。僕が騎士に斬りかかり、騎士がそれを弾き、隙ができた僕を騎士が攻撃する。
騎士と僕との戦いは膠着状態に陥っていた。いや、どちらかと言えば僕の方が不利である。剣を交える度に騎士は少しずつ洗練され、僕の剣を綺麗に受け流すようになった。
このまま続ければ、負けるのはおそらく僕だろう。
(どうする!? このままじゃジリ貧だ。一か八かアレを使うか? しかしあれは避けられれば僕も危ない諸刃の剣……!)
僕があれこれと考えながら剣を交えていると、騎士は僕の迷いを見てとったかのように剣を弾き、僕へと渾身の刺突を繰り出す。
ザシュッ!騎士の剣は遂に僕を捉え、僕の目の下から血が吹き出す。
(そうだ! この騎士相手に迷ってる暇なんてない!)
僕は騎士へ悟られないように、繰り返される流れと同じように動く。
(行くぞ!)
僕はさっきと同じように動くと騎士に突っ込み……急加速する! 僕の体は爆煙に包まれ、騎士へと肉迫し、その左腕を斬り落とす。
スパンッ! 僕の急加速に対応出来なかった騎士は鎧ごと左腕を宙に刎ねられ、ガシャンッという音と共に腕を落とす。
僕は心の中でガッツポーズを取る。
(よしっ! これで騎士は片腕を使えない! 博打だったが成功して良かった)
騎士は左腕を落とされ、周囲に血を振りまきながら、怨嗟の声を撒く。
「ヴォォォーーーーーー!」
僕が急加速した秘密は2つある。
一つ目は【身体強化】である。局所に魔力を込めることによる【身体強化】によって一時的な効果倍増を実現したのである。これは僕が弱っちかった時から試していたことで、強くなった今になって出来る様になった少し皮肉な技である。
そして二つ目が【魔力暴発】である。【魔力暴発】とは、魔法の構築を途中で失敗することによって魔力が爆発する現象である。通常なら魔法の使い手ごと爆発し、使い手が瀕死になるというものである。
しかし、僕は強力な肉体を手に入れた事により、【魔力暴発】に耐えられる様になった。だから僕は【魔力暴発】によって起きる爆発の慣性だけを利用し、一時的に速度を上げることに成功したのである。
以上の2つの技術を使い、僕は騎士の左腕を落としたのである。
しかし、この技は避けられればコッチが大きな隙を晒す諸刃の剣である。事実、今僕は勢いを殺しきれず壁に激突し、ふらふらの足で立っている。
僕は体のふらつきが取れた事を確認し、騎士の右側に回り込み、隻腕の騎士の不利を活かす。騎士は明らかに僕の膂力が手に余り、大剣を受け流せなくなっている。
(……形勢逆転だ!)
右側に回り、斬る! 右側に回り、斬る! 右側に回り、斬る! 僕は何度も繰り返し同じ動作をする。僕が繰り返すたびに騎士の体に傷がついていく。
騎士の体からは鎧の隙間から血が流れ出し、地面に落ちている血の量から見ても騎士が満身創痍なのは間違いなかった。
(次で決める!)
僕は騎士の様子を見て取り、次の一撃で決める事を決断する。
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