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これがギャップ萌えか
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12月25日、僕は比較的都会の街から北海道に旅行に来ていた。クリスマスに何もしないと何だか負けな気がして、どっか旅行に行きたくて北海道に来た。北海道といっても人が多そうな札幌じゃなくて、人が少なそうな釧路の方を選んだ。しかし、意外にも栄えていて、イチャつくカップルを横目に陰鬱な気持ちになっていた。旅行自体も氷点下近くの気温の中、何もないバス停で2時間待ったり、次の日の電車が全て運休になったりと散々であった。電車で旅行をする予定であったが、仕方なくレンタカーを借り、車の旅をすることにした。これが良かった。車の旅を思ったより楽しく、鹿を見れたり、狐を見れたり、とにかく楽しかった。そして、最終日。レンタカー屋に返すために給油しに行った。「やっぱ北海道は燃費がいいなー」と思いながら給油をしていると、隣で、(いや隣と言っても北海道は広かったので実際は100メートルくらい離れていた。)ウロチョロしている女がいた。そいつは白の背の高いピカピカのSUVの周りでウロウロしていた。恐らく初心者なのだろう。給油の仕方が分からず困っている感じだった。同乗者は居なそうだった。これが凄い良かった。初心者の女が1人で車に乗って給油しに来る、そんな状況が愛おしかった。都会だと、やれ彼氏だとかと一緒に走り、仲の良さそうに給油する。趣味性の強い乗り方をするし、誰かと乗る。しかし、恐らく彼女は違う。趣味のために乗るのではなく、車がないと不便だから乗る。これが衝撃的だった。北海道旅行をしていて、最寄りのコンビニが20キロ先みたいのがザラにあった。比較的都会で生まれ育った私には非常に衝撃であったし、こんな生活だと車がないと不便だよなと思った。だから恐らく彼女は車を趣味ではなく、生活必需品として乗る。これが良い。車を運転する女子大生ってなんかいい。上手く言葉にできないけど、なんか現実感がなくていい。旅行とかではなく、自転車のように車に乗る。良さげなSUVに乗ってたから多分親はある程度裕福で優しいんだと思う。そしてそんな親に大きな愛情を受けて育った彼女自身も雪のように無垢で純真なのだと思う。しかし、彼女は車が必須なこの不便な街や、閉鎖的なムラ社会に段々と嫌気がさし、テレビの中の自由でキラキラした東京に憧れ始める。「大学は地元のところに実家から通って欲しい。」という親の願いを純粋な彼女は渋々ながら受け入れる。しかし、大学には東京から来てる人もいて、その人がなぜかキラキラ見える。東京への憧れが強くなる。そして、就職を機に東京に行く。初めての一人暮らし。家賃10万の家に住む。初めての一人暮らしだからそれが安いのか高いのか、判別をつかない。だけど、憧れの東京に来れた、それだけで何もかもが輝いて見えた。車が必要のないほど完成された交通網。歩いて行けるコンビニ。夜になっても煌々と輝く店々。その全てが地元よりよく見えた。手取りは16万と貯金は全くできないが、それでも毎日が楽しかった。毎日、新たな発見がある。憧れの東京。おしゃれな人々。そんな日々も3年が過ぎた。東京にも慣れ始めて、地元が恋しくなった。憧れの東京のはずだった。なのに家賃は10万なのに給料は変わらず16万。25歳、そろそろ結婚を考え始める時期なのに貯金もないし友達もいない。東京は人間関係が希薄すぎる。あんな不便でプライバシーもないような地元が恋しくなる。そして、地元に帰る。何もないし、車は必須だけれどやっぱり地元がいいやと彼女は今日も給油する。ここまで見えた。そのくらい都会では見られないような純粋無垢な感じが良かったし、SUVに給油するっていうチグハグな感じも良かった。ギャップ萌え?凄い良かった。
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