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一章 四人の配信者
22話 可愛い子には旅をさせろ
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「ねぇ兄さん。これからこういう荒事があるならアタシも戦うから……」
「それはダメだ。お前はこういう危ないことに関わらなくていい」
俺はここだけは譲らず厳しい態度を取る。今回こそ助けられて霧子も無事だが、次もそうなるとは限らない。
「大体あのパティシーは何なんだ? あんなの見たことないぞ?」
「あれは手伝いをしてる大学の教授が作った試作品で……」
霧子は半年ほど前からその才能を大学に認められて、授業時間外に大学の研究の手伝いなどを行っている。そこはサブネルソンと協力してダンジョンに関する研究をしているらしいのでそういうことなのだろう。
「とにかくあのパティシーはもう使うなよ。お前は勉強に専念して自分のやりたいことを……」
「それじゃダメなの!!」
病院というのに霧子はこの部屋にいる患者など気にせずに声を荒げる。
「アタシがやりたいことは……過ごしたい未来は……兄さんが居てこそなの」
俺は霧子を見上げ数年前の彼女と比べる。ついこの前まではもっと小さく、自分の後ろについて来るくらい気弱だったが今はそうではない。
たった数年で本当に成長した。両親に誇れるくらいに。
「それにあのパティシーを使って試作品のテストをするのも手伝いの内容の一部なの。だから……いいでしょ?」
「……そうだな。ただし、危険なことは絶対しないこと。安全第一にな」
いつまでも過保護でいるわけにはいかない。可愛い子には旅をさせなければいけない。今がその時なのだろう。
だが彼女への愛情や家族としてのこの大切な想いは揺らぐことはない。これからはお互いに支え合って生きていくだけだ。
☆☆☆
夜道のお見舞いに行った後霧子は中部技術大学に赴いていた。昼過ぎとなり午前の講義を終えて帰る学生達を避けてとある教授の研究室まで向かう。
「おや……予定より三分遅かったですね」
研究室に入るなり以前渡したデータから実験を行う永瀬教授から小言を言われる。しかし霧子は眉一つ動かさず例のパティシーを永瀬教授に差し出す。
「この前の一件……勝手に君が持ち出したことは問題ですが、おかげで実験データを取れたことはありがたい。今回は不問にしますが、今後こういうことはないように」
「はい……すみませんでした。兄を想うばかり周りが見えなく……」
「ワタシとしても優秀で未来ある君を失いたくはありません。それに……」
軽快な足音と共に扉が開け放たれる。
「うぃーす! あっ、永瀬教授!! 購買で期間限定のメロンパン買えたんすけど食べます?」
礼儀という概念が頭にないのかタメ口で、顔は良いのに服が派手で霧子にとってあまり近寄りたくないタイプの男だ。
「まぁ……友也君よりかはマシですし、とにかく以後気をつけるように」
「えっ、なになに急に? あっ、教授がいらないなら霧子ちゃんどう?」
友也は教授の遠回しの批判にめげずに笑顔で霧子にメロンパンを渡そうとする。
「いらないです」
しかし冷たくあしらわれてしまい肩を深く落とす。
「それより例のパティシーの量産が進みましたので、友也君にもテストを手伝ってもらいますよ」
「おっ、これが新型の試作品か……」
友也は振られたことなどもう忘れたかのように気持ちを切り替え、渡されたそれを誕生日プレゼントをもらった男の子のような瞳で見つめる。
「永瀬教授、例のお願いの件ですけど……」
「えぇ。分かっていますよ。お兄さんのパティシーの使用を取り止めさせたいんでしたよね? それならサブネルソンにいる元教え子に伝えておきました」
「えぇ……ありがとうございます」
二人から何を言われようが眉一つ動かなかった霧子の口元が少し緩むのであった。
「それはダメだ。お前はこういう危ないことに関わらなくていい」
俺はここだけは譲らず厳しい態度を取る。今回こそ助けられて霧子も無事だが、次もそうなるとは限らない。
「大体あのパティシーは何なんだ? あんなの見たことないぞ?」
「あれは手伝いをしてる大学の教授が作った試作品で……」
霧子は半年ほど前からその才能を大学に認められて、授業時間外に大学の研究の手伝いなどを行っている。そこはサブネルソンと協力してダンジョンに関する研究をしているらしいのでそういうことなのだろう。
「とにかくあのパティシーはもう使うなよ。お前は勉強に専念して自分のやりたいことを……」
「それじゃダメなの!!」
病院というのに霧子はこの部屋にいる患者など気にせずに声を荒げる。
「アタシがやりたいことは……過ごしたい未来は……兄さんが居てこそなの」
俺は霧子を見上げ数年前の彼女と比べる。ついこの前まではもっと小さく、自分の後ろについて来るくらい気弱だったが今はそうではない。
たった数年で本当に成長した。両親に誇れるくらいに。
「それにあのパティシーを使って試作品のテストをするのも手伝いの内容の一部なの。だから……いいでしょ?」
「……そうだな。ただし、危険なことは絶対しないこと。安全第一にな」
いつまでも過保護でいるわけにはいかない。可愛い子には旅をさせなければいけない。今がその時なのだろう。
だが彼女への愛情や家族としてのこの大切な想いは揺らぐことはない。これからはお互いに支え合って生きていくだけだ。
☆☆☆
夜道のお見舞いに行った後霧子は中部技術大学に赴いていた。昼過ぎとなり午前の講義を終えて帰る学生達を避けてとある教授の研究室まで向かう。
「おや……予定より三分遅かったですね」
研究室に入るなり以前渡したデータから実験を行う永瀬教授から小言を言われる。しかし霧子は眉一つ動かさず例のパティシーを永瀬教授に差し出す。
「この前の一件……勝手に君が持ち出したことは問題ですが、おかげで実験データを取れたことはありがたい。今回は不問にしますが、今後こういうことはないように」
「はい……すみませんでした。兄を想うばかり周りが見えなく……」
「ワタシとしても優秀で未来ある君を失いたくはありません。それに……」
軽快な足音と共に扉が開け放たれる。
「うぃーす! あっ、永瀬教授!! 購買で期間限定のメロンパン買えたんすけど食べます?」
礼儀という概念が頭にないのかタメ口で、顔は良いのに服が派手で霧子にとってあまり近寄りたくないタイプの男だ。
「まぁ……友也君よりかはマシですし、とにかく以後気をつけるように」
「えっ、なになに急に? あっ、教授がいらないなら霧子ちゃんどう?」
友也は教授の遠回しの批判にめげずに笑顔で霧子にメロンパンを渡そうとする。
「いらないです」
しかし冷たくあしらわれてしまい肩を深く落とす。
「それより例のパティシーの量産が進みましたので、友也君にもテストを手伝ってもらいますよ」
「おっ、これが新型の試作品か……」
友也は振られたことなどもう忘れたかのように気持ちを切り替え、渡されたそれを誕生日プレゼントをもらった男の子のような瞳で見つめる。
「永瀬教授、例のお願いの件ですけど……」
「えぇ。分かっていますよ。お兄さんのパティシーの使用を取り止めさせたいんでしたよね? それならサブネルソンにいる元教え子に伝えておきました」
「えぇ……ありがとうございます」
二人から何を言われようが眉一つ動かなかった霧子の口元が少し緩むのであった。
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