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二章 天才探偵
33話 分かり合えない
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「夜道君は私の援護に続いて奴に攻撃してくれ!」
シャーロットはルーペを振り上げ光線を出し魔物の退路を塞ぐ。空中に乱雑に飛ばされるそれに飛ぶスペースを潰され、奴はお得意の空中戦を封じられる。
両手足の鋭利な爪を光らせこちらを殺そうと嘴からカチカチと威嚇の音を出す。
「今度は逃がさない……絶対に倒す!!」
俺は二本の剣で奴の爪を弾き着実に追い詰めていく。爪と鋼鉄では後者に軍配が上がり奴の爪は傷つき鋭利だった先は削れ丸みを帯びていく。
やがて剣は爪や羽を通り越し肉を斬り、赤い鮮血が宙を舞う。
これは中々の深手だったようで奴は自分の死を自覚し狼狽えて逃げ出そうとする。
「させないよ! いくよ夜道君!」
俺達はタイミングを合わせてボタンを三回押しそれぞれの武器にエネルギーをチャージする。
奴の顔に恐怖の色が出て焦り木に激突する。
「うわっ!!」
その衝撃で木が揺れて男の子が巣から投げ出されてしまう。
建物三階程の高さだ。打ちどころが悪ければ即死だ。
「ちっ……!!」
俺は剣を放り捨てて駿君を受け止めに向かう。しかしシャーロットはそんなことどうでも良いかのように、明らかに気づいているのにお構いなしにルーペから先程とは比較にならない威力の光線を発射する。
それは奴の体ど真ん中を捉え消し炭にする。そして駿君がいた木にも当たりこちらにも衝撃が伝わり、俺はこの子を受け止めたはいいものも風圧により転がされ駿君に擦り傷を作ってしまう。
「大丈夫!?」
「う、うん……」
駿君は生傷こそあるものの、俺が一度受け止めたため衝撃は殺せており命に別状はない。
「ふぅ……なんとか両方の依頼を完了できたね。やはりこのシャーロットに解決できない依頼は……」
「おい!!」
またいつもの自画自賛が始まりそうだったが、俺は怒鳴り彼女の独り言を堰き止める。
「もしかしてあんた……駿君が落ちているの分かってて助けようともせず撃ったのか!?」
「そうだけど何か?」
駿君が死ぬ可能性があったことは観察眼が優れている彼女なら必ず視野に入れていたはずだ。それを無視して魔物にトドメを刺しにいった。
それは場合と運によっては見殺しにするのも同然だ。だからこそ彼女の飄々とした態度が許せなかった。人を見殺しにすることだけは。
「あんた自分が何したのか分かってるのか!? 駿君が死んでたかもしれないんだぞ!?」
「それよりもあの魔物を取り逃す方が重大だったというわけだ。魔物退治の依頼の方が報酬や責任が重大だしそっちを優先するのは当然だろう?」
「あんたそれ……本気で言ってるのか?」
とてもじゃないが理解できない。人命より優先すべきことなんてあるはずがない。
人の命を軽視するその考えに協調なんてできようがない。
「あ、あの……」
駿君が立ち上がり気まずそうにこちらの様子を窺う。口元には木の実らしきものが付いており、どう手に入れたのかは不明だがそれで空腹をやり過ごしていたのだろう。
「ごめんまずは家に帰りたいよね。道はこっちだから……」
俺はこの場では矛を収めて駿君を背負って山を下るのだった。
☆☆☆
「……というわけだ。ちゃんと魔物退治の依頼は達成したから契約通り振り込みを頼むよ」
あれから駿君を親元に帰してから事務所に戻り、掃除をしながらシャーロットの敷島さんへの報告を耳に入れる。
サブネルソンの調査結果によるとあの魔物は地球の鳥と習性が非常によく似ており、駿君を連れ去り自分の子供のように木の実などを運んで世話していたようだ。
そして警官を獲物と見做し木に吊るしていたらしい。
「じゃあまた魔物を倒したら連絡するよ」
シャーロットが通話を終えスマホを机に置く。
「それで……夜道君はこれからどうするつもりなのかな? この事務所のやり方に随分と不満があるようだったけど?」
指をタンタンとリズムを刻ませて机を叩く。苛立ちが見て取れ、遠回しにこのバイトをやめるよう促しているとも受け取れる。
「夜道さん。あなたのような考え方も理解できないわけではありません。しかしこれがシャーロット探偵事務所の方針ですので」
ベラドンナは彼女とは反対に優しくだが、無理しないようにと善意からなのだがそれでも辞職を勧めてくる。
実際肌や感性に合わない仕事は辞めるのが正解だ。
「いや……俺はこの仕事を続けるよ」
だが俺の答えは論理に基づいたものではなかった。
「ほう……どうして? あっ、お金かい?」
「いや違うよ。確かにここの論理は理解できないしこのまま続けても納得することはないと思う。
でも、理解しようともせずに離れるのはもっと嫌なんだ。だから……続ける。続けて少しでも二人のことを知れるようになるよ」
気に入らないからといってここを辞めて投げ出すのはそれこそ無責任だ。
だからここに残り二人がまた人を見殺しにしようとしたら止めるし、二人のことをもっとよく理解したい。
それが俺の出した答えだった。
シャーロットはルーペを振り上げ光線を出し魔物の退路を塞ぐ。空中に乱雑に飛ばされるそれに飛ぶスペースを潰され、奴はお得意の空中戦を封じられる。
両手足の鋭利な爪を光らせこちらを殺そうと嘴からカチカチと威嚇の音を出す。
「今度は逃がさない……絶対に倒す!!」
俺は二本の剣で奴の爪を弾き着実に追い詰めていく。爪と鋼鉄では後者に軍配が上がり奴の爪は傷つき鋭利だった先は削れ丸みを帯びていく。
やがて剣は爪や羽を通り越し肉を斬り、赤い鮮血が宙を舞う。
これは中々の深手だったようで奴は自分の死を自覚し狼狽えて逃げ出そうとする。
「させないよ! いくよ夜道君!」
俺達はタイミングを合わせてボタンを三回押しそれぞれの武器にエネルギーをチャージする。
奴の顔に恐怖の色が出て焦り木に激突する。
「うわっ!!」
その衝撃で木が揺れて男の子が巣から投げ出されてしまう。
建物三階程の高さだ。打ちどころが悪ければ即死だ。
「ちっ……!!」
俺は剣を放り捨てて駿君を受け止めに向かう。しかしシャーロットはそんなことどうでも良いかのように、明らかに気づいているのにお構いなしにルーペから先程とは比較にならない威力の光線を発射する。
それは奴の体ど真ん中を捉え消し炭にする。そして駿君がいた木にも当たりこちらにも衝撃が伝わり、俺はこの子を受け止めたはいいものも風圧により転がされ駿君に擦り傷を作ってしまう。
「大丈夫!?」
「う、うん……」
駿君は生傷こそあるものの、俺が一度受け止めたため衝撃は殺せており命に別状はない。
「ふぅ……なんとか両方の依頼を完了できたね。やはりこのシャーロットに解決できない依頼は……」
「おい!!」
またいつもの自画自賛が始まりそうだったが、俺は怒鳴り彼女の独り言を堰き止める。
「もしかしてあんた……駿君が落ちているの分かってて助けようともせず撃ったのか!?」
「そうだけど何か?」
駿君が死ぬ可能性があったことは観察眼が優れている彼女なら必ず視野に入れていたはずだ。それを無視して魔物にトドメを刺しにいった。
それは場合と運によっては見殺しにするのも同然だ。だからこそ彼女の飄々とした態度が許せなかった。人を見殺しにすることだけは。
「あんた自分が何したのか分かってるのか!? 駿君が死んでたかもしれないんだぞ!?」
「それよりもあの魔物を取り逃す方が重大だったというわけだ。魔物退治の依頼の方が報酬や責任が重大だしそっちを優先するのは当然だろう?」
「あんたそれ……本気で言ってるのか?」
とてもじゃないが理解できない。人命より優先すべきことなんてあるはずがない。
人の命を軽視するその考えに協調なんてできようがない。
「あ、あの……」
駿君が立ち上がり気まずそうにこちらの様子を窺う。口元には木の実らしきものが付いており、どう手に入れたのかは不明だがそれで空腹をやり過ごしていたのだろう。
「ごめんまずは家に帰りたいよね。道はこっちだから……」
俺はこの場では矛を収めて駿君を背負って山を下るのだった。
☆☆☆
「……というわけだ。ちゃんと魔物退治の依頼は達成したから契約通り振り込みを頼むよ」
あれから駿君を親元に帰してから事務所に戻り、掃除をしながらシャーロットの敷島さんへの報告を耳に入れる。
サブネルソンの調査結果によるとあの魔物は地球の鳥と習性が非常によく似ており、駿君を連れ去り自分の子供のように木の実などを運んで世話していたようだ。
そして警官を獲物と見做し木に吊るしていたらしい。
「じゃあまた魔物を倒したら連絡するよ」
シャーロットが通話を終えスマホを机に置く。
「それで……夜道君はこれからどうするつもりなのかな? この事務所のやり方に随分と不満があるようだったけど?」
指をタンタンとリズムを刻ませて机を叩く。苛立ちが見て取れ、遠回しにこのバイトをやめるよう促しているとも受け取れる。
「夜道さん。あなたのような考え方も理解できないわけではありません。しかしこれがシャーロット探偵事務所の方針ですので」
ベラドンナは彼女とは反対に優しくだが、無理しないようにと善意からなのだがそれでも辞職を勧めてくる。
実際肌や感性に合わない仕事は辞めるのが正解だ。
「いや……俺はこの仕事を続けるよ」
だが俺の答えは論理に基づいたものではなかった。
「ほう……どうして? あっ、お金かい?」
「いや違うよ。確かにここの論理は理解できないしこのまま続けても納得することはないと思う。
でも、理解しようともせずに離れるのはもっと嫌なんだ。だから……続ける。続けて少しでも二人のことを知れるようになるよ」
気に入らないからといってここを辞めて投げ出すのはそれこそ無責任だ。
だからここに残り二人がまた人を見殺しにしようとしたら止めるし、二人のことをもっとよく理解したい。
それが俺の出した答えだった。
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