カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

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一章 ヒーローで配信者!?

1話 ヒーロー参上!

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「配信が中々伸びないですね……」

 静寂に包まれた自室でわたくし、峰山寧々は誰が聞いているわけでもないのに小さく声を漏らす。少し前からやり始めたダンジョン配信。それがあまり人気が出ないことに頭を悩ませているところだ。
 
 でも、ここで悩んだところで何かが変わるわけでもないですよね。
 
 わたくしは少し重たくなったような気がする腰を上げソファーから立ち上がり、ダンジョン配信の準備をする。準備といっても鞄から筆箱くらいの大きさのベルトのバックルを取り出すだけなのだが。
 そのバックルに付いているボタンを押せばウィンドウが空中に表示される。そこには現在この日本上にあるダンジョンがリストアップされている。

「今回挑むダンジョンは……」

 わたくしはその中から今回挑むダンジョンを選ぶ。選んだら次はバックルを自分の下腹に押し当てる。するとベルトの帯が出現して自動でわたくしの腰に巻き付く。
 それと同時にベルトの右の部分にデッキケースが出現したのを確認して、そこから一枚のカードを取り出す。そこには【スーツカード エンジェル】と書かれている。

 ダンジョンに潜るために、未知の怪物のサタンと戦うために必須となるスーツカード。これを使うことで特殊な鎧を全身に纏うことができる。

「変身」

 そう呟きながらその手に握られたカードを、バックルの右上部分にあるカードを挿入する部分にセットする。

[エンジェル レベル1 ready……]

 バックル部分から開発者が意味もなく趣味で設定した機械音声が流れる。その音声が流れ終わると、わたくしは足元から鎧に覆われていき、一秒も経たない内に全身が鎧に覆われる。

 わたくしは鏡の前に立って、しっかり変身できているか自分の姿を確認する。
 白を基調とした、少し薄い黄色が混ざった色もある天使のような造形の鎧はしっかり装着されている。
 顔までもが鎧に覆われているが、この鎧の特殊な能力により視界ははっきりしているし、呼吸がしにくいということもない。

「変身確認よし……さて、行きましょうか」

 わたくしはウィンドウに表示されたダンジョンの名前を二回タップする。辺りの景色が一気に変わり、わたくしはいつのまにか陰鬱な洞窟の中に移動している。
 
 この一瞬で全く違う場所に移動する転送技術。確かに便利なのだが、転送されるこの感覚は何度体験しても違和感を覚える。
 辺りには照明やイルミネーションとして使える発光石があり、それと数体のサタンが既にわたくしの周りにいた。奴らはわたくしの存在に気づくと敵意を剥き出しにしてこちらを囲んでくる。
 
 早速ですか……配信ももう始まってることですし、峰山の名前に泥をつけないようしっかり戦いませんと……
 

☆☆☆


 ダンジョンに潜り始めてから一時間程経過して、わたくしはウィンドウ画面を開き自分の配信画面を見る。相変わらずコメント数は少なく、肯定的なコメントは更に少なかった。

『やっぱり何か作業感があって見てて楽しくない』
『分かるわ~展開の起伏がなくてつまらないよな~』
『声は可愛いのにもったいないよな』 

 今も配信が続いている関係上流石に実際にはしなかったが、心の中で軽く舌打ちをする。
 
 わたくしだって何か変わらなきゃいけないのは分かっています。真面目で誠実なだけじゃ人の目は、興味は集まらないって。誰かを惹きつけるような輝きは持てないって。
 
 悔しさに体を少し震わせながらも、文句を言う相手が自分しかいないという現状に自分の不甲斐なさを感じ、また怒りが湧いてくる。
 しかしその感覚も長くは続かない。またサタンが現れたのだ。今度は中々大きい、身長が三メートル程ありそうな牛と人間が混ざったような怪物だ。
 迷いや怒りを抱いていたが、流石に命の取り合いなので気を引き締めて奴と対峙する。しかしその緊張は突然聞こえてきた男の子の声に掻き消されることとなる。
 
「ヒーロー参上!! くらえっ!!」

 ものすごい勢いで人がわたくしの真上を飛び越え、勢いそのまま蹴りを奴の顔面に当てた。その一撃は凄まじい威力で、奴はよろけてその場に膝をつく。

「トドメのぉ……一発だぁ!!」
 
 感情の籠った抑揚のある声を出しながら、彼は空中で向きを変えて、洞窟の天井を手で掴みそのまま自分の体を押し出して奴に突っ込んで行く。
 奴も無抵抗で終わるわけがなく、巨大な拳を突き出した。

「遅いっ!」

 しかし彼はその拳を両足で掴んで受け流し、その勢いを利用して奴の顔面に向かって素早い拳を繰り出す。
 奴はその場にバタリと倒れ、彼は顔面を殴った際の反動でわたくしの方に飛んできて目の前で静かに、まるでアクションスターのように華麗に着地する。

「やぁ! 大丈夫だった?」

 彼は紫のスーツに白色の長い線が無数に入っているデザインの鎧を着ていた。彼がこちらに近づいたことで分かったのだが、声や身長などから顔は見えないが恐らく小中学生くらいなのだろうと推測できる。
 
 なのにあの無駄がありながらも見ている人を飽きさせないための魅せる動き。そして自然と耳を傾けたくなるような、頼りたくなるような抑揚のある声。
 その人を惹きつける才能にわたくしは少し嫉妬してしまった。

「あの、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」

 その小さな嫉妬心を心の奥底に仕舞い込み、軽く会釈してから一つ尋ねようとする。

「ん? 何?」
「どうしてそんなに人を惹きつけるような……興味が惹かれるような動きなどができるのでしょうか?」

 ただ自分の興味を、欲求を満たすためだけの好奇心からきた単純な質問だったが、答えるには数秒必要だと思った。自分の行動を顧みて、分析して、そこから考えて言葉を発するのだから十秒くらいは返答に時間が掛かると思っていた。
 しかし彼は一秒もかからずに即答する。まるでその答えがさも当然かのように。

「ヒーローだからかな!」
「え、ヒーロー?」

 即座に返答されたこと、そして理解が及ばない返答内容に困惑してわたくしは間を置かずに聞き返してしまう。

「僕はみんなの夢と希望を背負った、憧れのヒーローを目指しているんだ」

 彼はわたくし同様顔は一切見えなかったが、何故か目を輝かせているように、そして明るい表情をしているのが頭に浮かんだ。
 そのヒーローという言葉はよく分からなかったが、わたくしは彼から何か輝いているものを、わたくしに足りない何かを感じ取ったのだった。


☆☆☆

「おい生人起きろーお前入学式から遅刻するつもりか?」

 僕は暗闇の中、突如として聞こえてきた父親の声に気づき目を開く。

「おはよう我が息子よ。ちょっーと時計見てみ?」

 僕の義理の父である寄元遊生は壁にかけてある時計を指差す。なんとその時刻は家を出るはずの時間の五分前だった。

「えぇーー!? もうこんな時間!? 何で起こしてくれなかったの!?」
「何度も呼びかけたぞ? 全く。ヒーローになりたいなら時間くらい守れるようにならないとな」

 父さんはそう言いながら部屋から出て行く。
 
 早く準備しないと遅刻しちゃう! 入学式で遅刻なんてしたら数ヶ月は笑い者になっちゃうよ!
 
 僕は飛び起きて、とりあえず歯を磨きながら制服に着替える。

「相変わらず忙しいね生人君は」

 歯磨きをしている最中、一人の女性が声をかけてきた。白衣を着た整った顔立ちの綺麗な女性だ。僕の近所に住んでいる、ダンジョンに関する研究をしている安寺美咲さんだ。
 僕は口を濯いで歯ブラシを仕舞ってから口を開く。

「いやー寝坊してしちゃって。あはは……」
「まぁでもギリギリ間に合いそうだね。遊生さんがもう車の中で待ってるから、朝食は食べながら行こう」

 僕は机の上に置かれたパンを一枚手に取り、美咲さんと一緒に家を出て車の中に入る。

「時間はギリギリってところか。明日からは一人暮らしなんだし、しっかり自分で起きるんだぞ?」
「分かってるよ。昨日はダンジョン配信してたせいで寝るのが遅くなっちゃっただけだから。今度から気をつける」
 
 僕はパンを口に頬張りながら反省の弁を述べ、父さんは車を出し学校へと向かう。
 
 それにしても今日から高校生。そしてやっと念願の……
 
 僕は鞄からベルトのバックルのような物を取り出しそれを見つめる。それはランストと呼ばれるダンジョンに潜る際必要となる鎧を纏うための道具だ。

「私が開発したそれは気に入ってくれたかな?」

 僕の隣に座っていた美咲さんが、僕が手に持っているランストを見つめながら話しかけてくる。
 
「使い勝手が良くていつも助かってるよ!」
「それは嬉しい限りだよ。君みたいに正義の為に使ってくれる人がいると思うと、それを発明して良かったって思えるよ」

 ランストは美咲さんが開発した装置で、使う為には適性が必要となる為使える人はごく少数だが、使い勝手や機能はとても良いのだ。
 
「それより今日から君は念願のダンジョンオブザーバーに入るんだったね。おめでとう」

 美咲さんが微笑みと共に僕に祝いの言葉をくれる。
 
 ダンジョンオブザーバー……通称DO。他の一般のダンジョン配信者とは違い、人々を守る為に新しく出現したダンジョンの制圧や、それ以外に普段は既に制圧されたダンジョンにもう一度潜って資源の回収することなどを任されている。
 言うなればランストを使って国の平和を守る正義のヒーロー。僕が憧れるヒーロー像そのものなのだ。
 
 そんな組織に今日から入隊できる。そのことが僕の心を躍らせ昂らせてくれていた。

「そろそろ見えてきたぞ。あれが今日からお前が通う高校……桜坂高校だ」

 父さんが指差した方を窓を通じて見る。そこにはとても大きな施設があった。
 桜坂高校。数少ないダンジョンについて学べる学校。卒業生はみんなダンジョン関連の仕事に就いているらしい。
 そして何より立地がかなり特殊で、日本最大の遊園地くらいの大きさの敷地に研究所やDOの本部などがあり、その敷地の中に桜坂高校がある。

「もうちょいで着くから降りる準備しとけよ」
「はーい」

 僕は軽く返事を返して、ランストを鞄にしまって車から降りる準備をし始める。
 今日から始まる僕の高校生活。そしてDOとして働ける、本物のヒーローとして活躍できる。これらが僕のこれからの生活を明るく照らし、活力を与えてくれるのだった。
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