カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

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二章 失った者達と生人の秘密

24話 田所の実力

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「おーすげぇ。中々やるねぇ」

 いつのまにかこの場にいた田所さんがパチパチと拍手していた。

「いつからそこにいたの? 見てたなら手伝ってくれてもいいじゃん」
「ごめんごめん。今回は君の実力を見ることが目的だったからさ。それに本当に危なくなったら助けるつもりだったよ。この銃で」

 彼は銃をクルクルと無限に回してアピールする。僕は本当か? と若干の疑いを彼に向けるが口に出すことはない。
 それからレースで競い合う相手がいなくなってしまったので、視聴者のコメントを読んで返したりしながら進んでいく。
 二、三分バイクで走ったところで僕達は大きな扉に辿り着く。真紅に彩られた天井まである高く幅広い扉だ。

「ここがボス部屋かな?」
「そうだな。じゃ、ここからは自分が戦うわ」

 田所さんは首を回したり、手足を伸ばして準備体操を始める。

「僕の実力を見るんじゃないの?」
「もう十分見れたし、それにそろそろ先輩としての威厳も見せなきゃと思ってね」

 彼は軽く数回ジャンプした後に、誰もいない所に向かって銃から光り輝くエネルギー弾を発射してちゃんと動くかどうか確認する。
 
「それじゃあ行きますか。生人ちゃんは適当に裏に下がっててね~」

 あの田所さんの戦いが間近で見れるのか。過去の配信を見た感じ強いってのは分かったけど、あまりにも敵を倒すのが速すぎてほとんど何も見れなかったんだよな。
 配信画面じゃなくてこうやって直接見ることで何か得れるものがあるかな?

 僕はまるでヒーロー番組を見る無邪気な子供のようにワクワクしていた。
 田所さんはその扉に手をかけ、軋む音を辺りに響かせながら扉を開ける。その向こうの開けた部屋には巨大なバイク型のサタンが待ち受けていた。
 ただ現実にあるバイクを巨大化させたのではなく、四足歩行のように車輪が四つついており、ハンドルの部分は顔になっていて青い目が光っている。

「先手必勝で決めますか~」

 奴が動くよりも先に、田所さんは素早くカードを一枚セットする。

[スキルカード ブースト]

 彼の足の車輪の回転速度が増し、目にも留まらぬ速さで弧を描いて奴に突っ走っていく。

「フォンフォーン!」

 奴はエンジン音を鳴らし上げ、その場で大きく一回転してみせる。一見間抜けな行動にも見えるが、その巨体で行うそれは脅威的で、この鎧を着ていても当たったらかなりのダメージをもらってしまうだろう。

「ほいっと!」

 田所さんは奴の体が当たりそうになった瞬間に小さく跳び、体に飛び乗って威力を相殺して更にタイヤを回転させ奴の上まで登っていく。
 奴の頭部まで行く直前で彼はもう一度跳んでその最中に銃口を奴に突きつける。

[マシンガンモード]

 彼が銃の回転式の弾倉を回すなり銃から機械音声が鳴り出す。
 彼が引き金を引くのと同時に大量の光り輝く弾が一気に放出される。彼が持っている銃はリボルバーに見えるが、その性能は正にマシンガンと言っても差し支えなかった。

「ババババッ!」
 
 奴は大量の光弾をもらい悲鳴に近い音を鳴り立ててのたうち回る。

「暴れんなよ……暴れんなって!」

 強い地震が来た時のように揺れる奴の体の上で、田所さんは立っていることができなくなり最終的には奴の前方へ飛ばされる。

[スナイパーモード]

 彼は投げ飛ばされたが、奴の顔の前に丁度飛ばされたことをきっかけにここを勝負の決め所とする。
 もう一度弾倉を回してスナイパーモードとかいうモードにする。
 
 地面に頭を向け逆さまになった状態でも尚彼は集中力を落とさない。その姿にいつものおちゃらけた様子は一切ない。その姿はただの一人の真っ直ぐに戦うヒーローだ。
 
 一発だが先程よりも大きく重たい音が彼の銃から鳴る。その一閃は奴の瞳と思われる部分を貫く。
 砕かれた片目は痛々しく、僕が感じたのと同様に奴も痛みを感じているようで、悲鳴をより大きくしていく。

[ハンドガンモード]

 何事もなく着地した田所さんは流れるように、自然にもう一度弾倉を回し今度は奴の四つの足に向かって弾を撃つ。それらは的確に奴のタイヤに穴を開け、破裂音が僕の耳を劈く。

「生人ちゃん? ちょっと今から衝撃に備えてね!」

 田所さんはデッキケースから一枚カードを取り出しこちらに振り返らず、痛さから雑に暴れ回る奴から目を離さずにこちらに注意してくる。
 僕はすぐに今から派手な必殺カードを使用するのだろうと察して、もう少しだけ離れて衝撃に備える。

[必殺 バイクリフレクション]

 彼の両足のタイヤが外れて浮遊する。その二つは分裂を始め数秒後には十個以上になる。
 それらはサタンの周りを取り囲み、徐ろに高速で回転し出す。

「くらえっ!」

 田所さんはタイヤに向かって大量の光弾を撃つ。それらは高速で回転しているタイヤによって反射され奴の体を抉り取っていく。
 反射された弾が別のタイヤに、それがまた違うタイヤに。無限かのように続く連撃に奴がボロボロとなったところで、タイヤが向きを変え全ての弾を田所さんに向けって反射する。

「はぁっ!!」

 彼は目の前で集まり合体し巨大になった光の弾を奴に向かって蹴り返す。巨大な音と振動と共にその弾は奴に当たった直後に破裂し強い光を放つ。
 僕はあまりの眩しさに手で目を覆って光から目を守る。

 これ視聴者のみんな大丈夫かな? 直接じゃないにしても目を悪くしそうで心配だな……

[ダンジョンのボスが倒されました。一分後に地上へ転送します]

 光が弱まり目が見えるようになった頃には奴の姿は消えていて、床に数枚のカードが落ちているだけだった。

「まぁこんなもんかな。少しは見直してくれた?」

 拾ったカードを団扇のように動かしながら田所さんが得意げにする。

「すごい強さだったよ! 僕はまだまだだって思い知らされたよ!」

 僕は特に何も考えずに率直な感想を述べる。実際僕では奴をノーダメージで倒すことはできなかっただろう。

「いや、生人ちゃんも結構才能あると思うよ。自分は十年以上この仕事やってるから慣れてて当たり前だから」

 十年以上ってなると、災厄の日よりも以前からDOにいることになるのか。じゃあこの人もあの日の地獄を仕事で見たってことなのかな。

 僕はあの日の景色を、大量のサタンが人を襲い殺戮の限りを尽くす姿を思い返す。

「そろそろ一分だな」

 僕の思考を遮るように田所さんが呟き、また光が僕達を包んだ。僕は思い出したくもない記憶を再び仕舞い込み、そのまま光に包まれ地上へと転送される。
 前みたいに転送されずにエックスが現れるなどということもなく、僕達は異常なく元の場所まで、DOの待機室まで戻って来れる。

「ナイスレースだったぜ生人ちゃん」

 田所さんがスッと僕の身長に合わせて手を出してくる。僕はそれに応じて手を上げ彼とハイタッチする。

「そういえば生人ちゃんサタンに何度か攻撃くらってたけど、大丈夫?」

 デッキケースから今回入手したアイテムカードを出そうとしたところ、田所さんが忘れていたことを思い出したかのように聞いてくる。
 僕は先程の攻略でサタンに噛みつかれ、それと槍が掠ってしまっていた。
 確かにいくら鎧があるとはいえ多少の怪我くらいはしてしまったんじゃないかと心配してしまうのは当然だ。

「んー……見た感じ大丈夫だよ!」

 僕は服の中を覗き噛みつかれた箇所などを見るが、目立った外傷どころか擦り傷一つない。

「本当? 後ろから見てたけど小さい傷跡くらいついてそうだけど」
「僕小さい頃から傷の治りが早いし体も丈夫だよ! 実際覚えている限りだと怪我とかは……少なくとも十年くらいはしたことないし」

 僕の追加の発言によって田所さんの疑いの目は一層強まった気がする。とはいってもそれは僕への心配からくるもので不快ではないのでよいが。

「今回はそれでいいけど、本当に怪我した時はしっかり言えよ? 無理してこれ以上死なれたらこっちも耐えられないからさ」
「これ以上……?」

 僕は即座に返してしまった返答がすぐに失言だと気がつく。
 知っていたはずなのに。十年前災厄の日にDOで初にして唯一の死者が出ていることを。そして何より田所さんがその時期からもう既にDOに勤めていることを。

 彼の顔からスッと表情が消える。そのいつも見せない顔に妙に緊張感を感じ、僕はこれ以上何も言えずに黙ってしまう。

「DOの大ファンの生人ちゃんなら知ってても当然か。十年前のあの日、自分は同僚で親友だった男と一緒にあの事件の対応をしてたわけよ」

 災厄の日の対応。数多のサタンの殲滅と、無数のダンジョンの制圧。考えるだけでも吐き気がしてくるほどキツい仕事だ。

「それで……あいつは、不真面目な自分なんかとは違って正義感が人一倍強かったあいつは、より多くの人を助けるために別行動をしようって言い出したんだ」

 正義感が強く、自分の身の危険よりも他の人を助けることを優先してしまう。その精神はどこか僕が目指しているヒーロー像に似ている。

「それを認めてしまったのが間違いだった。全てのダンジョンを制圧し終わった後に地上のサタン共を全て倒して……そしたらあいつと連絡が一切取れなくなっていた。
 嫌な予感がしたんだ。それで必死に探し回って……そして見つけちまったんだ。あいつの亡骸を」

 彼は少し溜めてから、重たいものを吐き出すように吐露する。

「サタンが暴れたのか、ボロボロになった小さな工場で倒れてたんだ」
「そうなん……ですか……」

 僕は自分でこの話を振ってしまったことに後悔し、返す言葉が見つからなかった。慰めの言葉すら何を言ったら良いのか分からなかった。

「って、悪いなこんな暗い話しちゃって。ま、生人ちゃんは気をつけてくれよってことだよ。命は一つしかないんだし、命を捨てる程の理由なんてこの世にあるはずもないんだから」

 田所さんは言い終わると行く場所があると言い立ち去って行くのだった。
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