カードで戦うダンジョン配信者、社長令嬢と出会う。〜どんなダンジョンでもクリアする天才配信者の無双ストーリー〜

ニゲル

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七章 最高のクリスマスプレゼント

79話 聖夜の悲劇(田所視点)

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 美咲の体が球体に吸い込まれて消えたと思えば、球体が爆散し中から全身紫色の鎧を纏った美咲が出てくる。
 両腕には試験管のようなものもつけており、何より禍々しいオーラを纏っている。奴の本性を具現化しているかのように。

「上等だ……研究ばっかで体を動かしてねぇ馬鹿に現実を見せてやるよ」

[ホルスター レベル1 ready……アーマーカード スパイダーバイク レベル20 start up……]

 自分も奴に応じて変身し、持ってきた銃を構える。
 レベル差こそあれど、奴はキュリアのように戦闘慣れしているわけでもない。キツイ戦いにはなるだろうが勝機はあるはずだ。

「ふふっ。一人でやるのかい? DOの仲間を呼ばずに? 良い度胸だ」
「当たり前だ。将来有望なあいつらに、大事な後輩に……人殺しは頼めねぇからなぁ!!」

[ショットガンモード]

 得意の早撃ちで奴の脳天に散弾をお見舞いする。脳の中身をぶち撒けても構わない気で撃ったが、異常なまでのスピードで弾を避けられこちらの懐に入ってくる。

「自信が仇となったな……死ね」

 奴の拳が自分の腹に突き刺さる……ことはなかった。
 ダメージは免れなかったが、それでも計算通り奴は自分の蜘蛛の巣に引っ掛かってくれた。
 予め空いた方の手に蜘蛛の巣を張り巡らせておいて、その手で防御してダメージを最小限に抑えた。

「キュリアだったら引っ掛からなかっただろうよ。じゃあな素人」

 逆にこちらの銃を奴の腹に押し当て吹き飛ばす。それだけではない。奴は飛ばされた先にも隠されていた巨大な蜘蛛の巣に捕らえられる。

「なっ、これは!?」

 驚く間もなく、奴が暴れ出すと天井から大量の蜘蛛の巣が落ちてきて更に奴は雁字搦めになってしまう。

「ばーか。お前が暴れることなんて想定済みだよ。完全に嵌ってくれて気持ちが良いよ」

 自分は動けない奴に対して必殺カードを抜きトドメを刺そうとする。

「ま、待てっ!! 私を倒すと後悔することになるぞ!!」

 奴は動けないなりに命乞いをするが、そんなもの聞く気はない。奴も人を殺しているのだ。それを聞いてやる義理などない。

[必殺 リフレクトストライク]

 大量のタイヤが出現し、それを囲うように蜘蛛の巣も出現する。
 一発光弾を放ちそれはタイヤにぶつかり続け加速し続ける。

「さぁせいぜい天国に行けるよう祈っときな!」

 自分は蜘蛛の巣に突っ込み、トランポリンのように跳ね続け加速する。
 その過程で何回も光弾を蹴り威力を増加させる。

「待て……やめろぉぉぉ!!」

 最後に光弾と共に最高速で突っ込んでいき蹴りを奴の腹に突き刺す。
 爆発と共に煙に包まれ奴はそれを避けることもガードすることもできずに直にくらう。

[スキルカード 無敵!!]

 煙に包まれる直前に謎の音声が奴のベルトから流れる。
 至近距離にいたので見えたが、その瞬間奴の体が虹色に発光し始めた。

「だから言ったろう? 後悔するって」

 今度は防御などできずに先程よりも重い衝撃が自分の腹を襲う。
 奴の拳が自分の腹に命中し、その凄まじい威力で弾き飛ばされ工場の壁に激突する。

「ガハッ……」

 あまりの痛みに悶絶し動けなくなってしまう。奴は先程の衝撃で蜘蛛の巣から解放されてしまっており、こちらに歩いてきて自分に追い討ちの一発をくらわす。
 それによってもう一度壁に叩きつけられ、今度は突き破り雨の降っている外に放り出されてしまう。

「ク……ソ……!!」

 体が言うことを聞かない。痛みで痙攣してしまい逃げることすらままならない。

「さよなら。短い間味方関係でいたが、まぁまぁ楽しかったよ」

[必殺 デスパイアエンド]

 奴は飛び上がり両腕の試験管から氷柱を伸ばしそれを自分に突き刺してくる。
 そのまま氷柱が縮む勢いを利用して、倒れている自分に速さと重さと殺意が乗った蹴りをくらわす。
 衝撃によって自分は空中で何回転もして着地し、そして変身が解かれてしまう。

「変身は解けたがまだ生きているか……しぶといな」

 今度こそ本当のトドメを刺すべく奴が、死が歩み寄ってくる。

「自分は……自分は……死ぬわけには……!!」

 立ちあがろうとしてもそれすらできず、自分は膝を突いてしまう。
 頭の中に蘇るのはあの日の、十年前の記憶。この工場で血を流し無惨な姿で横たわっていた親友の姿だ。

 自分は親友に誓い、十年もその約束を果たすべく戦い続けてきた。親友を殺した誰かを同じ目に遭わせてやると。
 だから自分は決して諦めない。この状況でも光を見出そうとする。

「仲間なら来ない。周りにサタンを置いておいたからそっちの対処で忙しいだろう」
「へへっ……だからあの子達には期待してないって、こんなことの片棒……担がせるわけには……いかないからなぁ!!」

 奴が手が届く距離まで来たところで、先程吹き飛ばされた銃が落ちてくる。
 自分はそれをキャッチして、もう躱わせない位置にいる奴の頭目掛けてゼロ距離で引き金を引く。
 
「馬鹿が……」

 だが奴は傷つくどころか衝撃を受ける様子もない。
 ボトッ……と何か重たい物が地面に落ちる。

 それは自分の腕だ。
 自分の右腕が切り離され、変身していないと視認することさえできない速度で残酷にも自分の最後の光は潰える。

「ぐ……あぁぁぁぁぁ!!」

 残った左腕で奴の顔面に殴りかかる。当たりはしたものの、ダメージなどあるはずもない。
 右腕から血が流れ、そう遠くないうちに自分の命が消え去るに違いない。

「そういえば今日はクリスマスイブだったな」

 美咲が突然自分の右腕の傷口を凍らせ、乱暴にだが止血をしてくれる。

「なんだ……やっぱり仲直りしましょうかってか?」
「違うよ。せっかくの手向だ。君に粋な死をプレゼントしてあげようと思ってね」
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