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先生、好きです。
冬空の下 第1話
しおりを挟む冬休みが終わった1月下旬。
布団の中に潜って寝ていた私は、枕から伝わる振動音に目が覚めた。
_ヴゥーヴゥー
「んー、朝……」
振動音が数回鳴ったあと最近流行りの音楽が流れ始め、7時半になったことをアラームが告げる。
手を伸ばして携帯を掴むとアラームを止めて目を閉じた。
────。
──起きなきゃ。
数分後にそう思い立った私は布団の中から頭を出すと、暖房のおかげで暖まっていた部屋の温度にまた眠気に誘われた。
うぅ、もう一度寝たい。
「けど、学校……。先生……」
──徹先生……。
_ガバッ!
起きなきゃ!!
ようやく重たい身体を起こした私はベットの端に座って欠伸をしながら伸びをした。
我ながら重症だと思うが、毎朝好きな人を思い浮かべて起きるのは既にルーティーンとなっている。
きっとこの先も先生のことを思い出して起きるんだと思う。
そんな私──筒見 柚乃は、野咲山高校に通う3年生で。腰まで伸びた茶髪に、ブラウンの瞳をしている。
性格はマイペースだけど、好きなことや好きな人の前だと騒がしくて積極的になる。
あと周りからよく言われる言葉が──
「変わり者」
──だった。
自分でもたまにそう思うから否定出来ないんだよねぇ。おかげでほとんどの同級生からそう言われ続けてるし。
制服に着替えてから少しだけ着崩して、ラメ入りのコスメを使った化粧を施すと今どきな女子高校生に変身した。
最終的な身なりのチェックをした後、両親と一緒に朝食を食べてから家を出た。
学校までは電車で通っている。
私は最寄り駅へと向かった。
外は青空の見える快晴だったけど真冬の季節だけあって風が吹くと寒かった。
駅に着くとしばらくしてやって来たいつもの電車に乗って、空いてる席に座ると鞄から暗記カードを取り出した。
「──そしたら──でさぁ」
「おはよ! ねぇ、宿題やった!?」
「えー、やるわけないじゃん!」
笑い合って会話を楽しむ学生たちがいる中、私は黙々と暗記カードを捲って勉強をする。
こうまでして勉強をしているのは、私が受験生だからだ。1ヶ月後には大学受験が待っている。
とは言っても、レベルは高くないからあまり気負う必要はないんだけど……。
もともとの成績が悪い分、私は周りよりやり込まなきゃヤバいのだ。
それに、これはチャンスでもある。
絶対に合格して、頭が良いことをアピールするぞ!
そしてギャフンと言わせて、たくさん褒めてもらうのだ!
淡い青空を見上げながらそんなことを思っていると、電車は15分後には学校の最寄り駅についた。
改札口を抜けると私は直ぐに端へ寄って友達に「着いたよ」とラインを送る。
友達も電車通学で、1年生の頃から改札口に待ち合わせてから一緒に学校へ行くのが日常になっている。
「柚乃、お待たせ」
携帯をいじりながら待っていると、数分遅れて到着した友達が来て声を掛けてくれた。
規則正しい制服の着こなしに、染めたことのないキレイな髪をしたショートヘア。
名前は梅原 莉奈。
とにかく真面目で頭が良く、成績はいつも上位をキープしていて名門大学を目指して予備校にも通っている。
そして、私の一番心許せる友達でもある。
「おはよー。 コンビニ寄る?」
「今日は良い」
「じゃぁ学校行こっか!」
「うん」
莉奈と一緒に西口を目指して歩きだすと、寄り道をせずに野咲山高校へと向かった。
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