暴走族のお姫様、総長のお兄ちゃんに溺愛されてます♡

五菜みやみ

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第一章 5月

こっ恥ずかしい

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 ──数カ月前の話し。


 新しい家族になる真依と、母親の紀子さんがこの家に引っ越してきてから4カ月くらいが経った頃。

 俺は部屋の模様替えをしていた。──と言うのも、真依がこの部屋に入り浸る頻度が増えて来ているからだ。


 出てる洋服箪笥は一つ。

 これはクローゼットに入る幅だから中に入れておこう。


「下着の出しっぱなしは良くねぇからな……」


 幼い真依は気にしてないが、思春期を迎えてる俺には無理。

 それと冬の布団はクローゼットの上に積んで……。

 本棚は一つに減らして、コミックも入る分だけにしておこう。

 そしたら、もう一つの棚はぬいぐるみを飾っとけば良いな。


「んー……」


 あとカーペットだな。

 親父に相談して新しいの買ってもらおうかな。

 真依が寝転がるから肌触りの良いやつにしたい。

 ついでにこの折りたたみベットも新調してくれねぇかな。

 出来ればセミダブルが良い。真依が夜、添い寝に来ても良いように。

 そんでベットの下の雑誌は全部捨てなきゃな。


 色々と考えながら整理していると、学習机の片付けにも手を出した。

 すると引き出しにデジタルカメラがあることに気づく。


「……いつのだ?」


 思い出せねぇ。

 いや多分、小中学校の修学旅行の時だよな?


 電源ボタンを長押しすると画面は暗いままでつく気配がなかった。


 電源つかねぇし。

 あー、充電器どこやったかな。

 確か一階のリビングにコードが入った引き出しがあったよな。探してみるか。

 中のデータを削除すれば使えるはずだし、そしたら天翔の奴等で思い出を撮っておくのも悪くないな。


 部屋の片付けがある程度終わっていることを確認すると一階のリビングへ向かった。

 リビングに入ると点いていたテレビは消えていて、真依と弟の瑠輝の姿もいなかった。

 いるのはキッチンで洗いものをしている紀子さんだけだ。
 
 ゴールデンウィークが始まって3日目にしては、やけに静かだなと思いながら紀子さんに聞いた。


「真依と瑠輝は?」

「今は3時だからお昼寝中よ」

「あぁ、もうそんな時間か」

「ふふ、秋良くんすごい熱中してたわね。片付けは終わりそう?」

「あと少しで終わる」


 始めたのが午後1時だから、かれこれ2時間以上はしていたのか。

 俺も少し休憩しよう。


「秋良くん何飲む? あと煎餅があるんだけどいる?」

「いる。麦茶お願い」

「はーい」


 ソファに座って休んでいると、紀子さんが煎餅と麦茶を持って来てくれる。


「ありがと」

「いいえ」


 運び終わった紀子さんはキッチンへ戻ると、洗いものが途中だったのか、水が流れる音が聴こえて来た。


「そう言えば、GW中に親父って帰って来れんの?」


 昨日は天翔で遊んで来たけど、連休は遊び尽くさないともったいない感じするよな……。

 親父がいれば家族旅行が出来るけど、連絡がないなら仕事で無理か。


「仕事が忙しいから連休中は帰れないかもって。
変わりに5月末で休み取れるようにするから、そこで出掛けようって言ってたわね」

「ふぅーん。なら久しぶりのデェトでもしてくれば?」

「えっ……!?」


_ゴトンッ


 よっぽど驚いたのか、何かがシンクに落ちた音が聞こえた。

 振り向くと、顔を赤く染めてこっちを見ていた紀子さんと目が合う。


 ──な、なんつーか……。こっちまで顔が赤くなりそうだわ。

 いや。俺はただ二人の時間をあげようかと思っただけで、深い意味なんてなかったんだよ。

 それに、ちょっと前の件もあるからそのお返しと言うか。償いと言うか。

 ホントにそれだけのつもりで……。

 あぁ、なんなんだこれ。すげぇこっ恥ずかしいな。


「そのー、さ……。家事とか、真依と瑠輝の世話で大変だったろ?
だから休憩っつーか、久しぶりに遊んで来ればって思っただけで……」


 ダメだ。俺のキャラじゃねぇ。

 失敗した。さり気なく聞き流して春良に頼むんだったな。


「あ、ありがとう。秋良くん……。けど、いいのよ?
折角お父さんとみんなで出掛けられる機会なんだから」

「別にそこまで親父と出掛けてぇってワケでもねーけどな。
──まぁいいや。GWってあと7日か。どう過ごそっかな」


 多少強引に話しを変えると紀子さんは何を思ったのか、イタズラを考えついたみたいにある提案をしてきた。


「それならお父さん置いてどこか行っちゃおっか?」


 首を傾げて聞いてくる紀子さんの言葉に、俺は少し意外な一面を見た気がして驚いた。

 ──が、直ぐに違うことで頭をいっぱいにする。


 親父をおいてか……。


「──それ、賛成」


 面白そうだよな。

 つい笑みを浮かべて賛同すると、紀子さんも「ふふっ」と声を上げて笑う。

 それから俺と紀子さんは作戦会議をするみたいに今後の予定を話し合うと、大方何をするのかが決まり、俺の方で協力者に頼んでみることになった。

 話しがまとまって麦茶を飲み終えると、コードの入った引き出しを引っ張り出した。

 ダイニングテーブルに置いて、デジタルカメラの充電器を探す。


「どうかしたの?」


「コイツの充電器探してる」


 そう言ってカメラを見せると、紀子さんは首を傾げた。


「カメラの充電器? そこの引き出しはコードばかりだけど、ありそう?」

「なさ……そう、だな。この引き出し以外に充電器入ってるやつってあったっけ?」

「どうかしら。見たことないけど、物置きとかにありそうね」

「あぁ、そうだな。……やっぱりここにはねぇか」


 物置きの方も探してみるか。

 どっかにありそうなんだけどなぁ。


 引っ張り出して来た引き出しには、結局 目当てのものはなく、中から出したものを片付けていると部屋の扉が開いた。

 視線を向けると真依と瑠輝が目を擦りながら立っている。


 ──お。起きたな。つか、完全に寝起きだな。でっかい欠伸こぼれてっし。

 髪もボサボサで、爆発してやがる。


「あら、起きたのね」


 紀子さんが二人の頭を撫でると、真依は「眠い」と言って、瑠輝は「うぅー」と唸りながら手を伸ばしていた。

 紀子さんが瑠輝を抱き上げると、そのまま腕の中で眠りにつく。


 二人とも眠いのに起きて来たかよ。

 あぁまぁ、隣りに誰もいないきゃ起きて来るか。


 真依はソファに座ると、ゴロンと寝転んだ。


「こら真依。ソファで寝ないの。座りなさい」

「うぅぅー」


 紀子さんの怒った声に、真依はうとうとしながらも起き上がると、しばらくしてやっと目が覚めてきたのか俺の存在に気づいた。


「──! お兄ちゃんだぁ!!」


 満面の笑顔で近寄ってくる真依。

 足に抱きついて来たその顔を覗き込むと、眠気はなくなったのか 完全に目が開いていた。


 フハッ! ホント。すげー嬉しそうに抱きついてくるなぁ。


「真依、おはよ。寝れたか?」

「うん!」


 真依の頭を撫でながら、まだクシャクシャに乱れた髪を手櫛で梳くと、隣りの椅子に座ろうとしていた。

 けれど椅子の方が高いからか、座る所によじ登ってから前を向くのがいつものことで、「よいしょ」と呟きながら頑張っている。


「……ふぅ。お兄ちゃんなにしてるの?」


 やり切ったようなため息をつくと、真依は俺を見て首を傾げた。


「充電器を探してたんだ」

「まいもさがす!」

「残念。もう終わった」

「ガーン……!!」


 真依がおおげさに頭を抱えると云うリアクションを見せる。

 そんな真依の反応が面白くって、俺はフフッと笑った。


「まだ見つかってはないから、一緒に探すか?」

「うん!」


 俺は引き出しをもとに戻すと、真依の身体を持ち上げて椅子から下ろした。


「それじゃぁ、まずはカメラがありそうな場所を探そうか」

「うん!」

「どこにありそうか分かるか?」

「えーと、ねー。カメラ……。──あっ!!」


 真依は思いついたに声を上げると、走り出してどこかに行こうとした。


「ちょっ、真依!?」


 急に走り出した真依に驚いたのもあって慌てて叫ぶ。


「こっちなんだよ!」

「え、真依分かるのか?」

「うん!」


 これ、マジなやつだよな?

 取り敢えず付いてってみるか。


「じゃぁ教えてくれるか?」

「うん!」


 真依は元気よく返事をすると、俺の手を握って引っ張って行く。

 向かったのは廊下を進み玄関を通り過ぎた部屋で、親父と紀子さんが使ってる寝室だった。

 真依と瑠輝はほとんど同じ部屋で寝てるから出入りは自由だが、俺は滅多に入ったことがなくて、入るの少し気が引けてしまう。


「あのね、おとうさんがね、えっと、たんす?
_に、入れてたんだよ!」


 入れてた?

 いったいいつ見たんだ?

 親父がカメラ持ってる姿なんて見たことねぇぞ。


 あ……、いや。小学校の頃に使ってた、な。

 確かデジタルカメラもだけど、ビデオカメラも使ってた気がする。


「ここだよ!」


 手を引かれて連れて来られたのは、クローゼットの前だった。


 なるほど、あのカメラは親父のだったのか。

 まさか親父の部屋にあったなんてな。


「ありがとな、真依」

「うん!」


 ──にしても、忘れてたことだんだん思い出してきたな。

 確かお母さんがお祝いごとが大好きで、パーティーとかも良くやってたんだったな。

 そんで運動会とか、お遊戯会とか、必ず親父と一緒に来て写真を撮ってたわ。

 親父のヤツ、あの頃から忙しかったはずなのにな。

 そうなると、親父がこれなくなったのはいつの頃からだ?

 記憶が正しければ、その後か、少し前からか、お母さんも来なくなったんだよな。

 その変わりに家でのパーティーをするのが増えたけど。


_ガタッ


 突然のクローゼットの扉が開く音に俺はハッとすると、真依が片方の扉を開けていた。


「そっちもあけるの!」

「あぁ。開けるな」


 俺は考えてたことを頭の隅に追いやると、扉を開けた。

 中には衣紋掛けにぶら下がってる洋服と、箪笥が三つに、収納ボックスがいくつか積まれている。


「お兄ちゃん!これっ!」


 ぴょんっぴょんっと跳ねて、真依が指差したのは収納ボックスだった。

 白とベージュの二種類が三つずつ交互に重なっている。


「どれだ?」

「それっ!」

「どれだー??」

「それなのッ!!」


 ……プッ。あぁーヤバイ。可愛いな。

 すげーウサギみたいによく跳ねてる。




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