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プロローグ
しおりを挟む兵庫県、神戸市。
山と海に挟まれたこの町には、「オシャレな町」「センスが良い」というイメージがついているらしいけど、私にはあまりピンとこない。
「オシャレ度」「センスの良さ」で競うなら、明らかに大阪・梅田のほうが上だと思う。
こんなことをいったら、生粋の神戸っ子で大阪嫌いの母は怒りそうだけど、残念ながら事実だ。
流行と誰かの才能と人混みをぎゅぎゅっと詰め込んだビルがどんどんどん!と立ち並び、しかも年々増えていく大阪駅周辺のエリアは、オシャレでエネルギッシュで都会のパワーにあふれている。
大阪が日本第2の都市なら、神戸は全国に20市あるという政令指定都市の1つ。
もはや、比べるのも申し訳ない。
それでも……、
大都会でなくても、最先端なモノに溢れていなくても、駅前が少し寂れていても、
やっぱり神戸は素敵な町だ。
ライトアップされた旧居留地を歩いていると、そう思わずにはいられない。
神戸・旧居留地。
「居留地」というのは、外国人が住んで働く場所、という意味だそうで、神戸以外にも横浜や長崎にもあるらしい。
江戸時代の終わり、神戸港の開港にあわせてできたのが、ここ、神戸の旧居留地。
神戸のビジネスの中心地だった時代を経て、今はおしゃれな建物を生かしたカフェやレストラン・ショップが人気のエリアとなっている。
洋風レトロな歴史的建造物が立ち並ぶ、ただでさえ心がときめく場所なのに、今夜は秋から冬にかけてのイベントのため、街路樹がライトアップされている。
温かみのあるオレンジ色の無数の光が、枝の形に沿って煌めく。
幸せな、冬の夜のデートにぴったり。
ふと、横断歩道の先を見ると、小さな姉弟が両親と手をつないでなにやらはしゃいでいる、そんな家族連れの姿が目に入る。
目をそらせばいいのに、じっと見てしまう。
幸せそうでいいな。
あんな幸せが、もう少しで手に入ると思っていたのに……。
なんだかんだいって、
神戸の人は、神戸が好きだ。私も含めて。
それでも……。
そんな大好きな神戸を離れる覚悟はできていたのに。
うつむくと、つるつるの白い紙袋に書かれたロゴが、冷たい銀色に光っている。
少しでも気を抜けば、その場にしゃがみ込んでしまいそうで、必死で前を向いて歩く。
一度しゃがみ込めば、もう2度と立ち上がれなくなりそうだったから。
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