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エピローグ
第220話 広い世界
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ああ、早いものだ。あんなに楽しく、毎日輝いていた青春を終えて早3年と少し。僕は卒業後に結婚し、白夜の姓を継いだ。今は家族で互いの実家から少し離れた場所に住んでいる。
「パパ!パパ!」
「ごめん...もう少しだけ...」
「起きろー!」
「起きろー!」
「ブベェ❗️」
今日も僕は布団を引き剥がされ、腹の上で跳ねられて起きた。
「起きた!パパ起きた!」
「ママ!パパ起きたよー❗️」
「ありがとう、さぁみんな朝ご飯だから顔洗って」
「パパ!顔洗って」
「洗って!」
「うぅ~..うい」
僕達には双子の息子がいる。兄のロクスと弟のスプリ、この前3歳になったばかりのヤンチャ坊主だ。
「パパ!ウィーンやって!ウィーン!」
「僕も!僕にもやって!」
「はいはい、それっ!ウィーン!」
「「キャハハハ!」」
僕の義手は2人を軽々と持ち上げる事が出来る。流石、父さんの発明品だ。
「よーし、次は着替えてなさい」
「「はーい!」」
「ほらチビ達、今日はどれ着るの?」
ローズが子供部屋から出てきた。精霊石の影響かスフールの成長に合わせてローズも人間と同じ大きさになっていた。
「今日は恐竜の服が良い!」
「僕は骸骨!」
「はいはいコレね。ほらバンザイ!」
「「ばんざーい!」」
ローズは慣れた手つきで2人の着せ替えをする。ロクスら恐竜の絵が描いてある服をスプリは骸骨の絵が書かれている服に着替える。
「カッコいいでしょ!だって恐竜だよ!」
「僕の方がカッコいい!だって骸骨だもん!」
「はいはいどっちもカッコいい、カッコいい」
「「本当!」」
「本当、本当。ほら食べてきなさい」
「「はーい!」」
「おはようスー」
「おはようジャン、随分寝てたわね」
「うん、ちょっと昨日は冴えてたからね」
「それはそれは良い事...」
スフールはジャンの顔を見つめる。
「どうしたの?」
「何でもないよ」
「変なの」
「ふふ...ねぇジャン今日って旅行に行ける?」
「旅行?大丈夫だけど、急だね」
「急じゃないよ、今日は特別だから」
思い出した今日はとても大事な日だった。
「今日...ああ、結婚記念日か。ごめーんプレゼント買ってなかった」
「良いの良いの、たまには違う事でもしましょ」
「という訳でお二人は旅行でも行ってなさい、チビ達は私が面倒見ておくから」
「ローズ」
なるほど、2人は既に計画を立ててたみたいだ。僕がプレゼントを用意してないかった事はお見通しだった訳か...
「ママごはーん!」
「お腹ぺこぺこ!」
「あ!はいはいごめんごめん」
みんなで朝食を済ませ、僕とスーは旅行の準備をしていた。
「ジャンは何処に行きたい?」
「うーん、そうだなぁ...」
いざ、旅行と考えると何処に行こうか悩む。今まで行った事のない場所、それともよく行く場所...そうだ!
「スーの故郷なんてどう?」
「私の故郷?そういえば、こっちに越して来て以来行ってなかったわね」
「うん、前から少し気になってたんだよね。魔法も科学にも頼らずに発展した国なんて面白そうだよ」
「良いわね!そうしましょ!」
行き先を決め出発。
「さぁチビ達、パパとママに行ってらっしゃいするよ」
「やだ~!捨てないでー!」
「え!捨てるの!?やだよー!」
勘違いをした2人は泣きながらジャンとスフールの足にしがみつく。
「捨てない捨てない」
「ちょっとお出かけしてくるだけだから」
「そうそう、ほら2人は私がたっぷり面倒見るから」
「「本当?」」
「「「本当」」」
「「なら分かった!」」
すぐに2人はローズの足にしがみつく。
「お土産は何が良い?」
「お菓子!」
「おもちゃ!」
「私はなんでも良いから」
「了解」
ジャンとスフールは魔法の絨毯に乗り、空を飛び始める。
「それじゃあ行って来るから良い子にしてるのよー」
「ローズの言う事は聞くんだぞー」
「「ばいばーい!」」
絨毯は2人を乗せて、彼方へと消える。
「さてと2人は何処か行きたい所ある?」
「「うーん...!」」
「「ばぁばぁの家!」」
「それじゃあ行きましょうか」
「「うん」」
ローズは2人と手を繋いで白夜家へ向かった。
ジャンとスフールは優雅な空の旅を楽しんでいた。
「町も増えたなぁ」
「たった3年で変わるものね」
「魔法と科学が手を取り合って、お互いの町に電線が通って、魔力道が通って...色んな変化があったからね」
「ジャンのおかげね」
「違うよ、あの時はスーやみんなが助けてくれたからだよ」
「みんな、元気かなぁ」
「今度、久しぶりにみんなで飯でも食べに行くか?」
「賛成、今度みんなに連絡してみるわ」
2人は学生の頃を思い出しながら幾つもの町を超え、遂にスフールの故郷へと到着した。
妖占源
此処は魔法と科学の力に頼る事なく、妖術で発展した国。
「懐かしい..昔と全然変わってない!」
「凄いなぁ...魔力とは違う雰囲気がバチバチするよ。ねぇスー!あれは何?」
早速ジャンは屋台に興味を持つ。
「あそこは占いをしてくれるの。此処の占い、結構当たるから評判なの」
「へぇ、占いか..昔、母さんがハマってたっけ。やってこうよ!」
「うん、それじゃ行きましょ!」
スフールはジャンの手を引いて、屋台の占い師に声を掛ける。
「おお、これはこれは旅の者ですか!」
「ええ、旅行で来たの。私も出身は此処だったんだけど、久しぶりに帰って来たの」
「それはそれは、なるほどなるほど、そちらは旦那さんというわけですか」
「凄いよスー、この人何も言ってないのに!これが本場の占いってヤツなの!?」
「ジャン、まだ何もしてないわ」
「あ、そうなの」
ジャンは占いというのをあまり理解していないようだ。
「それでは何を占いますか?なんでも3ジェルで占いますよ」
「それじゃあこれからの家族についてお願いします!」
スフールがお金を払うと占い師は水晶玉を用意した。
「それでは家族の名前を教えてください」
「はい、私はスフール、姓は白夜」
「白夜!?というと貴方は海斗さんの娘さん?」
「え、ええ」
「んまぁ!なるほどなるほど...」
占い師は白夜という姓に反応する。
「ああ..僕はジャン」
「息子が、長男はロクス、次男がスプリ、あと私の精霊のローズ」
「なるほど、なるほど...むむむっ!はっ!」
水晶玉にはジャンの姿が映り出した。
「僕だ!凄いなこれ」
「見て、みんな集まったわ」
「本当だ。でも2人が成長してる。それに..スーがもう1人赤ん坊を抱えてる」
「これって」
「どうやら子宝に恵まれているようですね」
「おお!まぁここからはこれからの楽しみにしようかな」
「そうね」
「そうですか、それもまた...おや?」
占い師は水晶の光を止めようとしたが手を止めた。
「あ❗️続けてください!」
水晶には見覚えのある者が映っていた。
「ちょっとお待ちを..これは...お子様の精霊でしょうか?カーバンクルに..コウモリ種の変異種の精霊ですかね?」
水晶に映っていたのはパンプとアスモンだった。しかし、2人の背後には黒い影が広がっていた。
「こんな反応は初めてです。波乱な未来が見えましたが分かっていれば未来は変えられます。お二人の未来に幸あれ」
それから僕達は屋台を後にして観光を続けた。
「ねぇジャン、やっぱりさっきの水晶に映ってたのって...」
「間違えない、間違える訳ない..あれはパンプとアスモンだった」
「でも、あの黒いモヤはなんだったんだろう」
「分からない。また..僕らは何か大きな事に巻き込まれるのか..」
「ジャン、その時は子供達の事..頼むわ」
「...分かった」
悔しかった...これから起きるであろう事に僕は何も出来ないんだ。魔法が使えなくなってから初めて自分の無力さが嫌になった。
「ま、でも時間はあるわ。今は楽しみましょうか」
「そ、そうだね」
次に訪れたのは公園だった。なんでもスーが幼い頃、よく遊んでいたらしい。
「わぁ!本当に昔のまま、懐かしいなぁ。よくここの砂場で泥人形を作ってみんなと遊んでたの」
「泥人形?泥団子みたいな感じ?」
「見てて」
スフールが砂場の砂に呪力を込めると砂が人の形になって泥人形が完成する。
泥人形は2人に向かってピースサインを送る。
「凄っ!勝手に動くんだ」
「ええ、作るのが上手い人はもっと細かい動きができるの」
そのまま泥人形はベンチに座っているお婆さんの方へと歩いていく。
「おぉ..泥人形かぁ、懐かしいねぇ..昔は子供達がよく遊んでたんだよ」
お婆さんは泥人形を拾い上げて笑う。
「この公園、前は子供がいっぱい居たんだけどねぇ」
「あれ?もしかしてゲラ婆?」
スフールはお婆さんの顔を見て、幼少期の鮮明な記憶を思い出す。
「その呼び方は..もしや..スフールちゃんかい?」
「ええ!やっぱり!ゲラ婆ね!久しぶりね!懐かしい」
「大きくなった、大きくなった。引越したと聞いた時は少し寂しかったよ」
スフールとお婆さんは久しぶりの再会でハグをして喜ぶ。
「スー、知ってる人?」
「うん、私達とよく遊んでくれたお婆さん、ゲラ婆っていうの」
「あら!?もしかして」
「うん、私の旦那よ。ジャンっていうのは」
「おお!幸そうで良かったわ」
「うん、ありがとう。今日は2人で結婚記念日の旅行に来たの」
「そう、じゃあ楽しむのよ」
スフールはお婆さんに頭を撫でられ、まんざらでもなさそうだ。
そして、僕らは最後に大きな旅館に訪れた。
「温泉かぁ、みんなで行った時の事を思い出すなぁ」
「混浴だって、背中流すわよ」
「じゃあ僕も」
大きな温泉、2人で背中を流し合い普段では味わえない湯を堪能した。見た事のないご馳走、僕は楽しんでいた。
寝室
「ねぇスー、今日はありがとう」
「お礼なら私の方も言いたいわ」
「世界ってとっても広いって事を知れたよ」
「私も...昔見えなかったものが見えた気がするの」
「今度はみんなで行こうな」
「ええ、子供達も喜んでくれるわ」
暗い部屋で2人は少し間をおいてから見つめ合う。
「さて、始めようか」
「ええ」
2人の夜はこれからだ。
「パパ!パパ!」
「ごめん...もう少しだけ...」
「起きろー!」
「起きろー!」
「ブベェ❗️」
今日も僕は布団を引き剥がされ、腹の上で跳ねられて起きた。
「起きた!パパ起きた!」
「ママ!パパ起きたよー❗️」
「ありがとう、さぁみんな朝ご飯だから顔洗って」
「パパ!顔洗って」
「洗って!」
「うぅ~..うい」
僕達には双子の息子がいる。兄のロクスと弟のスプリ、この前3歳になったばかりのヤンチャ坊主だ。
「パパ!ウィーンやって!ウィーン!」
「僕も!僕にもやって!」
「はいはい、それっ!ウィーン!」
「「キャハハハ!」」
僕の義手は2人を軽々と持ち上げる事が出来る。流石、父さんの発明品だ。
「よーし、次は着替えてなさい」
「「はーい!」」
「ほらチビ達、今日はどれ着るの?」
ローズが子供部屋から出てきた。精霊石の影響かスフールの成長に合わせてローズも人間と同じ大きさになっていた。
「今日は恐竜の服が良い!」
「僕は骸骨!」
「はいはいコレね。ほらバンザイ!」
「「ばんざーい!」」
ローズは慣れた手つきで2人の着せ替えをする。ロクスら恐竜の絵が描いてある服をスプリは骸骨の絵が書かれている服に着替える。
「カッコいいでしょ!だって恐竜だよ!」
「僕の方がカッコいい!だって骸骨だもん!」
「はいはいどっちもカッコいい、カッコいい」
「「本当!」」
「本当、本当。ほら食べてきなさい」
「「はーい!」」
「おはようスー」
「おはようジャン、随分寝てたわね」
「うん、ちょっと昨日は冴えてたからね」
「それはそれは良い事...」
スフールはジャンの顔を見つめる。
「どうしたの?」
「何でもないよ」
「変なの」
「ふふ...ねぇジャン今日って旅行に行ける?」
「旅行?大丈夫だけど、急だね」
「急じゃないよ、今日は特別だから」
思い出した今日はとても大事な日だった。
「今日...ああ、結婚記念日か。ごめーんプレゼント買ってなかった」
「良いの良いの、たまには違う事でもしましょ」
「という訳でお二人は旅行でも行ってなさい、チビ達は私が面倒見ておくから」
「ローズ」
なるほど、2人は既に計画を立ててたみたいだ。僕がプレゼントを用意してないかった事はお見通しだった訳か...
「ママごはーん!」
「お腹ぺこぺこ!」
「あ!はいはいごめんごめん」
みんなで朝食を済ませ、僕とスーは旅行の準備をしていた。
「ジャンは何処に行きたい?」
「うーん、そうだなぁ...」
いざ、旅行と考えると何処に行こうか悩む。今まで行った事のない場所、それともよく行く場所...そうだ!
「スーの故郷なんてどう?」
「私の故郷?そういえば、こっちに越して来て以来行ってなかったわね」
「うん、前から少し気になってたんだよね。魔法も科学にも頼らずに発展した国なんて面白そうだよ」
「良いわね!そうしましょ!」
行き先を決め出発。
「さぁチビ達、パパとママに行ってらっしゃいするよ」
「やだ~!捨てないでー!」
「え!捨てるの!?やだよー!」
勘違いをした2人は泣きながらジャンとスフールの足にしがみつく。
「捨てない捨てない」
「ちょっとお出かけしてくるだけだから」
「そうそう、ほら2人は私がたっぷり面倒見るから」
「「本当?」」
「「「本当」」」
「「なら分かった!」」
すぐに2人はローズの足にしがみつく。
「お土産は何が良い?」
「お菓子!」
「おもちゃ!」
「私はなんでも良いから」
「了解」
ジャンとスフールは魔法の絨毯に乗り、空を飛び始める。
「それじゃあ行って来るから良い子にしてるのよー」
「ローズの言う事は聞くんだぞー」
「「ばいばーい!」」
絨毯は2人を乗せて、彼方へと消える。
「さてと2人は何処か行きたい所ある?」
「「うーん...!」」
「「ばぁばぁの家!」」
「それじゃあ行きましょうか」
「「うん」」
ローズは2人と手を繋いで白夜家へ向かった。
ジャンとスフールは優雅な空の旅を楽しんでいた。
「町も増えたなぁ」
「たった3年で変わるものね」
「魔法と科学が手を取り合って、お互いの町に電線が通って、魔力道が通って...色んな変化があったからね」
「ジャンのおかげね」
「違うよ、あの時はスーやみんなが助けてくれたからだよ」
「みんな、元気かなぁ」
「今度、久しぶりにみんなで飯でも食べに行くか?」
「賛成、今度みんなに連絡してみるわ」
2人は学生の頃を思い出しながら幾つもの町を超え、遂にスフールの故郷へと到着した。
妖占源
此処は魔法と科学の力に頼る事なく、妖術で発展した国。
「懐かしい..昔と全然変わってない!」
「凄いなぁ...魔力とは違う雰囲気がバチバチするよ。ねぇスー!あれは何?」
早速ジャンは屋台に興味を持つ。
「あそこは占いをしてくれるの。此処の占い、結構当たるから評判なの」
「へぇ、占いか..昔、母さんがハマってたっけ。やってこうよ!」
「うん、それじゃ行きましょ!」
スフールはジャンの手を引いて、屋台の占い師に声を掛ける。
「おお、これはこれは旅の者ですか!」
「ええ、旅行で来たの。私も出身は此処だったんだけど、久しぶりに帰って来たの」
「それはそれは、なるほどなるほど、そちらは旦那さんというわけですか」
「凄いよスー、この人何も言ってないのに!これが本場の占いってヤツなの!?」
「ジャン、まだ何もしてないわ」
「あ、そうなの」
ジャンは占いというのをあまり理解していないようだ。
「それでは何を占いますか?なんでも3ジェルで占いますよ」
「それじゃあこれからの家族についてお願いします!」
スフールがお金を払うと占い師は水晶玉を用意した。
「それでは家族の名前を教えてください」
「はい、私はスフール、姓は白夜」
「白夜!?というと貴方は海斗さんの娘さん?」
「え、ええ」
「んまぁ!なるほどなるほど...」
占い師は白夜という姓に反応する。
「ああ..僕はジャン」
「息子が、長男はロクス、次男がスプリ、あと私の精霊のローズ」
「なるほど、なるほど...むむむっ!はっ!」
水晶玉にはジャンの姿が映り出した。
「僕だ!凄いなこれ」
「見て、みんな集まったわ」
「本当だ。でも2人が成長してる。それに..スーがもう1人赤ん坊を抱えてる」
「これって」
「どうやら子宝に恵まれているようですね」
「おお!まぁここからはこれからの楽しみにしようかな」
「そうね」
「そうですか、それもまた...おや?」
占い師は水晶の光を止めようとしたが手を止めた。
「あ❗️続けてください!」
水晶には見覚えのある者が映っていた。
「ちょっとお待ちを..これは...お子様の精霊でしょうか?カーバンクルに..コウモリ種の変異種の精霊ですかね?」
水晶に映っていたのはパンプとアスモンだった。しかし、2人の背後には黒い影が広がっていた。
「こんな反応は初めてです。波乱な未来が見えましたが分かっていれば未来は変えられます。お二人の未来に幸あれ」
それから僕達は屋台を後にして観光を続けた。
「ねぇジャン、やっぱりさっきの水晶に映ってたのって...」
「間違えない、間違える訳ない..あれはパンプとアスモンだった」
「でも、あの黒いモヤはなんだったんだろう」
「分からない。また..僕らは何か大きな事に巻き込まれるのか..」
「ジャン、その時は子供達の事..頼むわ」
「...分かった」
悔しかった...これから起きるであろう事に僕は何も出来ないんだ。魔法が使えなくなってから初めて自分の無力さが嫌になった。
「ま、でも時間はあるわ。今は楽しみましょうか」
「そ、そうだね」
次に訪れたのは公園だった。なんでもスーが幼い頃、よく遊んでいたらしい。
「わぁ!本当に昔のまま、懐かしいなぁ。よくここの砂場で泥人形を作ってみんなと遊んでたの」
「泥人形?泥団子みたいな感じ?」
「見てて」
スフールが砂場の砂に呪力を込めると砂が人の形になって泥人形が完成する。
泥人形は2人に向かってピースサインを送る。
「凄っ!勝手に動くんだ」
「ええ、作るのが上手い人はもっと細かい動きができるの」
そのまま泥人形はベンチに座っているお婆さんの方へと歩いていく。
「おぉ..泥人形かぁ、懐かしいねぇ..昔は子供達がよく遊んでたんだよ」
お婆さんは泥人形を拾い上げて笑う。
「この公園、前は子供がいっぱい居たんだけどねぇ」
「あれ?もしかしてゲラ婆?」
スフールはお婆さんの顔を見て、幼少期の鮮明な記憶を思い出す。
「その呼び方は..もしや..スフールちゃんかい?」
「ええ!やっぱり!ゲラ婆ね!久しぶりね!懐かしい」
「大きくなった、大きくなった。引越したと聞いた時は少し寂しかったよ」
スフールとお婆さんは久しぶりの再会でハグをして喜ぶ。
「スー、知ってる人?」
「うん、私達とよく遊んでくれたお婆さん、ゲラ婆っていうの」
「あら!?もしかして」
「うん、私の旦那よ。ジャンっていうのは」
「おお!幸そうで良かったわ」
「うん、ありがとう。今日は2人で結婚記念日の旅行に来たの」
「そう、じゃあ楽しむのよ」
スフールはお婆さんに頭を撫でられ、まんざらでもなさそうだ。
そして、僕らは最後に大きな旅館に訪れた。
「温泉かぁ、みんなで行った時の事を思い出すなぁ」
「混浴だって、背中流すわよ」
「じゃあ僕も」
大きな温泉、2人で背中を流し合い普段では味わえない湯を堪能した。見た事のないご馳走、僕は楽しんでいた。
寝室
「ねぇスー、今日はありがとう」
「お礼なら私の方も言いたいわ」
「世界ってとっても広いって事を知れたよ」
「私も...昔見えなかったものが見えた気がするの」
「今度はみんなで行こうな」
「ええ、子供達も喜んでくれるわ」
暗い部屋で2人は少し間をおいてから見つめ合う。
「さて、始めようか」
「ええ」
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